からだのとりせつ

それでも治ってほしい?

肌寒い季節が迫ってくる。
黒木さん(70歳)の手荒れに対する不安は大きくなる。
色々試みて、年々改善してきてはいる。
確実に、驚くほど。
もちろん、まだ完治ではない。
本格的な寒さではない今の状態は悪くない。
それでも、冬になると、という不安が黒木さんを神経過敏にさせる。

「いつか治ってほしい」
黒木さんはポツリとこぼした。

受け入れ難い考え方かもしれないが、
「治ってほしい、治りたい」
は、実はあまり効果的な考え方ではない。
だから、口にしない方がいい。
潜在的に
治らないのでは?
という感情が入っているからだ。
「〇〇が治りたい」ということは「〇〇の状態が嫌だ」ということだ。
つまり、〇〇の状態を意識せざるを得ない。
残念ながら、無意識は「否定形」を理解できない。
「食べてはいけない」人はいつも「食べること」を考えている。
でしょ?
逆に、何度も〇〇を想像することになる。
記憶が強化されていくわけだ。
〇〇の状態が「普通」になってしまう。
居心地がよい状態と脳が誤認してしまう。
それが「病」を治りにくくさせている。

「病」はある意味、「脳と身体の解離」である。
脳がなりたくない状態が身体に発生しているわけだから。
脳でコントロール不能になっている。
だから脳の命令に従ってくれると思わない方がいい 。
つまり「強く思っていればよくなる」というものではない。
では、どのように思えばよいのか?
病とは無縁の物事に対し、「~したい」と強く思うことだ。
それを実現するためには当然治っている。
それが理想だ。

「治ったら~したい」
そう考える人は多いのではないだろうか?
その思いはよく理解できる。
だけど、本当に効くのは
「治ろうが治るまいが~している」
という考え方だ。
それが「忘れた頃に治ってた」を
引き出してくれる。
肝心の「やりたいこと」は治りたいときに
降って湧いてくるわけではない。
普段から「やりたいことをやる」を
実践していないと簡単ではない。

尊敬できる患者さんがいる。
石田さんは52歳のときに脳卒中を発症した。
76歳の今も、右半身のマヒは残っている。
趣味の川釣りと絵画は続けている。
利き腕でない左手で。
麻雀もプロ級の腕前だ。
もともと経営者としても一流だった。
くよくよしない性格が奏功したのだろう。

好きでやっていることは止まらない。
障害を乗り越える。
頭の中のイメージが既にあるから強い。
そこに近づくだけだ。
いや、常に超えて行こうとしているのかもしれない。

ワクチンの開発など細菌学の基礎を築いたパスツールの言葉だ。
「チャンスは準備された心に訪れる」
行動は簡単ではないかもしれない。
しかし、「言葉」だけはしっかり準備しておきたいものだ。

今日はめまいの日やな
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執筆

1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。

ホームページ
https://imcjapan.org/