①推拿って普通のマッサージとどう違うんですか?
②「指圧」の元は推拿の“按法”
③“慰安目的体重押し”は伝統継承崩れの「指圧風」
④日本では未だ熟練した推拿師は数少ない
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①推拿って普通のマッサージとどう違うんですか?
かつて
「すいなって普通のマッサージとどう違うんですか?」
とよく聴かれました。
「どの答え」を発するか?
その度いつも戸惑っていました。
推拿の起源と歴史の話からするか?
現代中国の医療と日本の現状を説明するか?
そもそも
「普通のマッサージ」
「普通の指圧」ってなに?
という疑問も大きくあります。
そして
そのあたりの説明をした時に
「はぁ・・・」くらいの反応しか得られませんでした。
そういう説明も必要だったんだろうけど
おそらく知りたいのはそういうことなのではなくて
「やり方がどのように違うのか?」
ということも多く含まれていたのだと思います。
一番の違いを簡単に言うと
「普通のマッサージ」は
日本で“慰安”目的や“代替医療”扱いで利用されている
『推拿』は
中国で大学病院の治療科として採用されている“医療”
であるということに尽きます。
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②「指圧」の元は推拿の“按法”です
リラクゼーションマッサージで
“指圧風の体重押し”のやり方をやってきた人たち
医療専門学校で指圧やあん摩マッサージを学んだ人たち
の中でさえ
指や身体を傷めたり
過重労働に耐えかねてることが多いのが現実です。
それは特に
親指の使い過ぎによるものです。
親指の使い過ぎは
親指を施術現場で高い頻度で使うので
施術者の成長段階としては
ある程度仕方のないものかも知れません。
親指を頻繁に使う
親指で押すやり方は
一般的に指圧と言います。
Wikipediaを引くと(以下引用↓)
「指圧」の命名者は浪越徳治郎
指圧を治療目的で反復継続の意思をもって行うには
国家資格であるあん摩マッサージ指圧師免許が必要
(とあって)
日本独特の手技療法である
(↑引用以上)
とあります。
しかし
歴史を紐解くと明らかに
「指圧」の発祥は『推拿』手技の一つで
『拇指按法』です。
これはぼくの私見も含まれますが
伝統的に受け継がれ伝わり遺された
『推拿』の真髄を追求していけばいくほど
患者の身体をリラックスさせることは勿論
術者の身体も余分な力が入っていては
必要な病巣に指を届けることはできない
と言うことがわかって身についていきます。
それが「天の道」に通じた
伝統手技療法です。
さらに私見ですが
創始者の浪越徳次郎氏が
存命当時に伝え遺していた「指圧」も
“天の道”に通じた“伝統手技”を継承していた
と思います。
これは遺されている氏の施術姿の画像や映像を
観させて戴いた感想です。
しかし
現状では
その指圧学校出身の
国家資格取得者である「指圧師」でも
伝統手技が求める継承をしておらず
体重押しをやっている人さえも見かけます。
“体重押しの指圧風”で
治療が行えるとはとうてい思えません。
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③“慰安目的体重押し”は伝統継承崩れの「指圧風」
リラクゼーションマッサージを受けたことがありますが
身体の大きくない女性が
背中をこれでもかっていうほど
ギュウギュウ押してくれます。
うつ伏せになってるので
施術されている姿は見れないのですが
背中越しにかなり懸命にやられているのを感じました。
「そんなに力まなくてもいいのになぁ・・・」
と感じますがもちろん言ってあげることはできません。
『体重押しには限界がある』
これは明確な事実です。
何故ならば
「体重押しでは“層”の浸透をコントロールできない」
と言うのが答えです。
推拿の起源は武術と同じなので
他に対して“按”で影響力を与えます。
闘えば『武術』
健康に用いれば『推拿』
にわかれていきました。
“按”の圧には力に幅、余裕があり
反して“体重押し”の圧には余力がありません。
「0層から10層に届けば刺激がありOK」
と言う考えなので
どうしても力任せになるし
力じまんや体の大きい人の方がやりやすいし
技術的にもマックス10まで行ったら
そこで向上はストップします。
何故なら
「刺激を与えられたらOK」
だからです。
この10は絶対値ではなくて
内容(深さの基準)は施術者の個々によって変わります。
身体が大きく力のある人の10はそれなりに大きく
身体が小さく非力な方の10はそれなりに小さい。
だから特に
女性には"指圧風体重押し"をお薦めしません。
按の圧は
皮膚表面の0層から1→2→3と
筋膜・保護膜ツボの層まで入って
響かせる(効かせる)。
その先の4~10までは必要に応じて
それ以上入っていくか
その層で維持するかを
指に感じる感覚と
患者の症状・必要性に於いて決めます。
0→3までは力を全く必要としない
その層に指が届くだけで良い。
この数字も絶対値ではなくて
施術部位や部位の状態によって異なる深さの数値です。
3の層で響くか
効くかというのも
仮の数値で部位によってや症状の状態によります。
そのことを踏まえて
3の層で響くなら
その層の深さを維持するのには力が必要です。
この力は
体重押しや筋力押しと異なり
意識とか気の力と言ったほうが正答に近いです。
この時に施術者の意識・内観するべき点は3点で
①.施術部位の接触面(指・手掌・腕など)の感覚
②.足の裏
③.臍下または臍周り(丹田)
4の層以上に深く入ろうとすれば入ろうとするほど
施術部位の作用点である①が奥に入るのに対して
施術者は②と③を逆方向に感じます。
つまり
丹田はより腹の中に入り
足の裏は地をさらに感じることになります。
これらの言語表現で
全てがお伝えできているとは思えませんが
非常に大切な内容をお伝えしました。
対面で様々な角度からお伝えすることで
理解の幅はさらに大きく広がると思います。
ぼくの調査では
国家資格取得者を養成する専門学校の講師は
卒業生の中で希望者が試験を受けて
資格を得て講師になるそうです。
そして
講師の中には伝統継承に重きをおいて
“容易く教え難いけど真髄を伝えよう”
とする比較的年輩の講師と
“容易く教えやすくて容易く真似られるやり方”
しか教えられない層の講師がいるようです。
なので
学生の中には
どちらの教えを受け取って良いのか迷い
中途半端な技術と知識で
学校生活を終えることになっているそうなのです。
伝統的な「指圧」が
継承の段階のどこかで
マッサージ量販店でも即通用するように
容易く刺激と慰安を与えられる“指圧風”に
ポピュラーなファストフードならぬ
ファストリラックスに堕ちてしまった
と感じます。
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④日本では未だ熟練した推拿師は数少ない
ぼくの経歴の中で関わった何人かの方が
“体重押し”の圧を捨て
180度転換して推拿の“按”を体得しています。
推拿の理解は
その時に10まで到達してわかった!
と思って活用できても
その10がまた1となり
その上の10があるというのわかるようになる。
つまり求めれば求めるほど
理解が深まり
技術や認識のレベルも向上します。
そして
この求めたものを与えてくれるのは
先に理解を始めた先人であり
その先には天の真理があります。
「これが推拿だ!」
というものはないと言ってもいいと思いますが
ぼくの理解しているもの
ぼくが伝えたいと思って良いと思っているものこそが
「推拿」の全てではないだろうともわかっています。
しかし
現状の日本の手技の安易な伝わり方
徒手療法の医療としての位置付けには
疑問を感じ続けています。
伝統手技に内在する内容は深く
熟練するには時間もかかるのが当然です。
なので
ぼくが関わり始めた20数年前に比べては
昨今のネット上に『推拿』の文字が増えましたが
伝統手技の真髄はどこまで伝わっているでしょうか?
ぼくも日々の精進を新たに誓い
伝統手技療法『推拿』の継承に尽力する所存です。
東京都中野区 推拿整体院
すいな健康院 天と地と人 信長正義