5.姿勢チェック機能の不在
オーストリアの夫の会社などでは、入社時に会社専属のドクターが新入社員のデスクを必ず訪問するそうです。デスクの背後に窓がないか(パソコン画面に陽の光が当たるのはNG)、社員の体に合わせた椅子の高さ、体と背もたれの角度、目の高さに合わせた適切なスクリーンの位置、目とスクリーンとの距離(自分の腕の長さ程度)など、細かな項目をチェックするのです。姿勢をはじめとする職場環境が、ロングスパンで健康と仕事の成果に多大な影響を及ぼすと熟知しての配慮でしょう。また学校でも、子供の通学かばんが重すぎないか、定期的なコントロール入るようです。
6.着物の影響
日本へ帰国のたびに、下腹を前に突き出して立つ年配男性や、頭を前に出して歩く年配女性が非常に多いことに気が付きます。「昔の日本人は世界一姿勢が美しかった」とは小学校の恩師の口癖ですが、いったいなぜこうなってしまったのでしょう。
着物で体幹を圧迫すると背骨の自然なS字カーブが損なわれ、頭部の重さを体全体に分散させる機能が低下してしまうと聞いたことがあります。それに加えて、きつい着付けで締め付けていた時代には凛然とした立ち居振る舞いもできたのでしょうが、ひとたび着物という矯正器具を失うと、元々の筋肉量の少なさとも相まって余計に姿勢が崩れてしまったのかも知れません。
こうしてみると、決して「外国人は肩が凝らない」わけではなく、日本人よりも肩こりになりにくい土壌が整っているのだと思います。そして日本社会では上記の理由から猫背がすっかり生活に溶け込んでいますが、この状態に違和感を覚えないところにも問題がありそうです。