骨盤ズレてるって言い方、おかしくない?って話(2025年09月24日 16時34分) 杉山手技療法・西宮北口

結論から先に言うと、骨盤の“ズレ”という言い方は少し誤解を生みやすいです。西洋医学・解剖生理学の視点では、骨盤自体が独立して大きくズレているケースは稀で、むしろ全身の姿勢や運動連鎖の影響で骨盤の位置や傾きが変化して見えることが多いです。つまり「骨盤がズレている」よりも「身体全体が歪みの連鎖として動く結果、骨盤の位置に影響が出ている」と考えるのが自然です。以下、専門的な観点を分かりやすく整理します。

1) 骨盤は体の“基盤”として機能し、周囲の構造と強い連携で動く
- 解剖の要点: 骨盤は腸骨・坐骨・恥骨の3つの骨が恵み合い、仙腸関節(SI関節)を介して背骨と下肢をつなぐ環状構造です。前方へ傾く「前方傾斜」、後方へ傾く「後方傾斜」、左右へ傾く「側方傾斜」など、相対的な位置関係で姿勢が決まります。
- 連鎖の原理: 骨盤は腰椎・股関節・膝・足部と連動します。腰部の過度な前弯や後弯、股関節の可動性・筋力バランス、膝の捻れや足のアーチの状態が変わると、骨盤の角度や回旋が変化します。

2) “ズレ”と呼ばれる現象の背景にあるのは機能的・動的な要素
- 機能的ズレ: 筋力の左右差、腹背部の筋緊張バランス、臀部筋の働き、腸腰筋の長さと緊張などが原因で、一時的に骨盤の位置がズレたように見えることがあります。これは静的な骨の位置の問題より、筋肉のテンションや痛みの回避機能が関係します。
- 静的な“骨格のズレ”は稀: 骨格自体の大きな変形(例えば骨折後の大きなずれなど)を除き、日常生活で骨盤が大きく“ズレている”と診断されるケースは少なく、むしろ正確には「全身の姿勢バランスの崩れ」が骨盤の角度に影響していることが多いです。

3) よくある原因の“連鎖”と痛みの発生パターン
- 足元からの連鎖: 土台の足部アーチの崩れ、足首の回旋・過剰な内外反、膝の内側/外側の癖が、股関節の位置を変え、結果的に骨盤の傾きに影響します。
- 脊柱のカーブと連動: 腰椎の過度な前弯(腰の反り)や過緊張、胸郭の動き不足は、骨盤の角度を変えやすくします。腰痛や臀部痛があると、痛みを避けるための姿勢代償が生じ、さらに連鎖的に歪みが広がることがあります。
- 筋力バランスの崩れ: 腹筋・背筋の強さの不均衡、臀部・股関節周囲の筋力不足、腸腰筋の過緊張などが、骨盤の安定性を損ない、日常の動作で骨盤が“ずれる方向”へ偏りやすくします。
- 慢性荷重と生活習慣: 長時間の座位・片側での荷重・同じ動作の繰り返し(例: 片側での荷物の持ち方、通勤時の歩行癖)も、姿勢の偏りを生み、骨盤の相対的位置に影響します。

4) 痛みがある場合の基本的な見立てと対処の方向性
- 何を診るべきか: 痛みの部位(腰痛・臀部痛・膝痛・足関節痛など)だけでなく、歩行の癖、座位での姿勢、立位での荷重バランス、靴の摩耗状態などを総合的に評価します。
- 評価と治療の核: 専門家(整形外科医、理学療法士、運動器リハビリの専門家など)による機能評価を受け、筋力・柔軟性・安定性のバランスを整える運動療法を中心に治療方針を組み立てます。自己流のストレッチや矯正器具だけに頼るのは避け、個別の体の状態に合わせたプログラムが重要です。
- 自宅での取り組みの例: コアの安定性トレーニング、臀部・股関節周囲の筋力強化、腸腰筋の適切な長さと緊張の管理、柔軟性と動作の質を高める動きを組み合わせると効果的です。痛みが急激に悪化したり、しびれ・麻痺・脚の弱さを伴う場合はすぐ受診を。

5) 日常生活で意識したいポイント
- 姿勢の教育: 座位・立位・歩行の基本姿勢を見直し、左右差を減らす意識を持つ。長時間同じ体勢を避け、こまめに体を動かす。
- 動作の見直し: 片足荷重を長時間続けない、荷物の持ち方を左右均等にする、階段の昇降などで体の回旋軸を意識する。
- 運動の質を高める: コアの安定性・腹背の協調性・臀部筋の協働を高めるトレーニングを週数回取り入れる。筋力と柔軟性の両方をバランスよく整えることが肝心です。

6) 結論
骨盤の“ズレ”は、単独の骨の動きだけで説明するよりも、全身の姿勢・筋力バランス・関節の連携の結果として現れる現象です。西洋医学の視点では、骨盤は体の中央部の安定性を左右する重要な構造であり、周囲の要素が揃って初めて正常な位置関係を保てます。痛みがある場合は専門家の評価を受け、具体的な体の状態に合わせた運動療法を取り入れるのが最も効果的です。あなたの生活習慣や動作パターンを見直すことで、姿勢の改善と痛みの軽減につながる可能性が高いです。

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補足事項
- 本文は約2100文字程度を想定して作成しています。必要に応じて字数を調整してください。
- 引用や出典は用いていません。最新の医学研究や個別の診断については、信頼できる医療機関の情報をご確認ください。