石灰沈着性腱板炎について、石灰沈着は肩の腱板(とくに肩甲上筋腱)に沈着する病態であり、首そのものに石灰が形成されるケースは極めて稀です。それでも痛みが首周辺に放散したり、首を含む頸部の痛みとして認識されることがあるため、首の痛みを感じた場合には早期に専門医の診断を受けることが重要です。むやみに整体だけに頼ると、炎症を悪化させたり痛みの原因を見誤ることがあります。
- 発生率・疫学
- 肩の痛みを訴える人々の中で、石灰沈着性腱板炎は比較的頻度の高い原因のひとつです。報告は population によって異なりますが、一般人口における有病率は数%程度とされ、肩痛患者の間では一定の割合を占めます。年齢層としては中年層(おおむね40~60歳)が最も多く、女性にやや多いとの報告が散見されます。発症年齢が若くなるケースや高齢者での発症は稀ではありませんが、典型的には中年期にピークを迎えます。
- 発生原因・病態生理
- 解剖生理学的には、腱板の微小外傷・退行性変化が契機となると考えられています。二つの主要仮説があります。
1) 腱板組織の細胞が骨・軟骨様へと分化して石灰を産生するという「間葉系細胞のメタプラシー」仮説。これにより、ヒドロキサアパタイトなどのカルシウム沈着が形成されます。
2) 腱板の微小循環障害や過度の反復ストレスにより局所組織が壊死性・退行性変化を起こし、壊れた部位にカルシウムが沈着するという「変性・壊死性」仮説。
- 沈着部位としては主に肩関節の腱板、特に肩峰下筋・腱が中心です。沈着は病期によって「形成期」「吸収・炎症期(リソース期)」「後期の再生期」と区分され、痛みの強さ・運動制限・夜間痛の出現時期が異なります。
- リスク要因としては糖尿病、甲状腺疾患、慢性腎疾患、長期的な局所過負荷などが挙げられ、性差・年齢とともに発生率が変動します。
- 症状・臨床像
- 典型的には肩の局所痛を主訴とし、夜間痛が特徴的です。痛みは前方・外側に放散することがあり、動作時痛・安静時痛・睡眠時痛が混在します。可動域制限は疼痛の時期により変動し、挙上動作(特に水平外転・外旋)で痛みが増強します。
- 病期ごとに症状は異なり、形成期には痛みが比較的強くても関節の機械的なクリック感は少ないことが多く、吸収期には痛みが一旦軽減する反面、腱板の炎症は続くことがあります。長期間放置すると肩周囲の硬さ・機能低下が残ることがあります。
- 男女差・年齢差
- 中年層を中心に発生率が高く、40代前後からの発症が目立ちます。女性に若干多い報告もあり、ホルモン・DEXA領域の影響、活動量の差、生活習慣の違いなどが関与すると考えられます。ただし個々の患者で差は大きく、男性でも発生します。
- 診断の要点(解剖生理とともに)
- 画像診断が重要です。X線(単純写真)で顕著な石灰沈着を確認できることが多く、超音波検査では石灰の形状・性状・沈着部位を評価できます。 MRI は周囲組織・炎症性変化・腱断裂の有無を評価するのに有用です。臨床所見と画像を総合して診断します。
- 治療と治療期間
- 非手術的治療が第一選択です。主な方法と目安の期間は以下の通りです。
- 安静・腰痛対策・非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)・理学療法:痛みの軽減と機能回復を目指し、通常数週間〜数か月を要します。
- 超音波ガイド下の吸引・バーブタージ(針でカルシウムを穿刺・洗浄):効果は個人差がありますが、数回のセッションで痛みが改善することがあります。回数はケースバイケースで1〜3回程度が目安です。
- 局所ステロイド注射:炎症を抑える目的で使用され、痛みの改善が数日〜数週間で見られることがあります。長期の再発予防にはリハビリが重要です。
- 症状が長引く、または大きな沈着・腱板の断裂が併存する場合は手術療法を検討します。
- 手術的治療(関節鏡下での石灰除去・腱板修復・デブリードメントなど):術後はリハビリが必須で、通常数週間〜数か月の機能回復期間を要します。
- 治療期間の目安は個人差が大きいです。非手術的治療で改善が見られる場合は2〜3か月程度で評価します。症状が6か月以上持続する、あるいは大きな石灰沈着・腱断裂が疑われる場合には手術を検討します。
- 生活上のポイントと注意点
- 痛みが強いときは無理な動作を避け、肩を安静に保つことが大切です。過度なストレッチや自己流のマッサージは症状を悪化させることがあるため避けましょう。
- 適切なリハビリを通じて、痛みを抑えつつ関節可動域と筋力を回復させることが再発防止につながります。
- 首周囲の痛みを訴える場合は、肩だけでなく頸椎・上肢の神経根症状・筋膜性痛など他の要因も排除するため、整形外科での診断をおすすめします。石灰沈着の部位が頸部に及ぶケースは稀ですが、痛みの放散を含め適切な鑑別が必要です。むやみに整体に頼ると痛みが長引く場合があるため、まずは医療機関を受診してください。
- 結論と要点
- 石灰沈着性腱板炎は、中年女性を中心に肩の痛み・可動域制限をもたらす比較的頻度の高い炎症性・変性性病態です。発症機序は多因子で、石灰沈着は腱板の局所変性・代謝異常により形成され、炎症期には強い痛みが現れます。治療はまず非手術で痛みを抑え、機能回復を図ることが基本です。症状が長引く場合や大きな沈着・腱板断裂が疑われる場合には手術を含む治療を検討します。頸部痛を伴うケースでは、首のカルシウム沈着というよりは痛みの放散・関連痛として頸部にも影響が及ぶことがあるため、早期の専門医受診が推奨されます。
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