- 頚椎は7つの頚椎と椎間板、関節、黄韧帯などから成り、神経根は椎体の間から四方へ出て上肢へ分布します。椎間板は髄核と線維輪からなり、加齢とともに水分量が減少し、硬さが増してクッション性が低下します。
- 転倒・繰り返しの微小外傷、遺伝的要因、喫煙などが影響して、椎間板の変性が進行すると、椎間板の位置異常や増殖性の骨性変化(骨棘形成)、関節の肥厚・狭窄(フォラミナル狭窄)を引き起こします。これらが神経根や脊髄を圧迫・炎症させ、痺れを生じさせます。
- 病態は主に2系統に分けられます。神経根圧迫(radiculopathy)は特定の頚椎レベルの神経根が圧迫され、腕の特定の部位に特徴的な痺れ・痛みを引き起こします。脊髄圧迫・慢性化した場合は脊髄機能の低下、すなわち頚髄症(myelopathy)へ進展する可能性があります。
2) 症状の特徴と臨床判断のポイント
- 神経根性の痺れは、痛みとともに、対応する筋群の弱さや腱反射の低下を伴うことがあります。例えばC5〜6領域なら上腕二頭筋の支配域での弱さ、C6〜7領域なら三頭筋・前腕筋へ影響することが多いです。
- 脊髄性の症状は両手の感覚異常、手指の巧緻性低下、歩行時のふらつき、深部腱反射の変化、鏡像的な痺れの分布などが見られます。Lhermitte徴候(頭部を前屈させた際の電気的放散痛様感覚)などが関連することもあります。
- 症状の広がりや併存する痛みの性質(放散痛、夜間増強、持続性の痛み)により、病態の優先度や治療方針が異なります。
3) 病態の主な機序
- 椎間板の脱水・萎縮と髄核突出:椎間板の保護機能が低下し、相対的なスペースが狭くなると、神経根を直接圧迫します。
- 椎間関節・骨の変性と骨棘形成:頚椎の後方や前方のスペースを狭くし、フォラミナル狭窄を生じさせ、神経根へ圧力を継続的に加えます。
- 黄韧帯の肥厚・後方径路の狭窄:後方からの圧迫が強くなると、脊髄や神経根を混在的に圧迫することがあります。
- 炎症性変化:変性組織から放出されるサイトカインが神経根周囲の炎症を促進し、痛覚・痺れを増強させることがあります。
- 神経根の機械的圧迫と血流低下:持続的な圧迫は神経の血流を低下させ、機能障害を長引かせる可能性があります。
4) 診断アプローチ
- 画像診断の要点は、神経根の圧迫の有無と狭窄の部位・程度を評価することです。MRIが最も有用で、椎間板変性・髄核突出・フォラミナル狭窄・黄韧帯肥厚・脊髄腫大を可視化します。必要に応じてCTは骨性 STRUCTUREの評価、X線は配列・姿勢の変化を確認します。
- 電気診断はEMG/NCSが役立ち、神経根性と末梢神経性の区別、神経伝導速度の遅延を評価します。筋力・反射の変化を身体診察と照合します。
- 症状の経過、年齢・併存疾患、画像の所見を総合して、保守的治療か手術的治療かを判断します。
5) 治療方針の考え方
- 保存療法の適用範囲:痛みと痺れが軽度〜中等度で、神経機能の喪失が進行していない場合。物理療法、適度な運動療法、頚部固定・頚板(コルセット)、NSAIDs・鎮痛薬・神経痛薬、神経根ブロック・エピドゥラルステロイドなどを組み合わせます。
- 手術の適応:長期間の保存療法で改善が乏しい、進行性の神経機能障害、強い痛みが日常生活を妨げる場合。代表的な術式には前方椎間板切除・固定(ACDF)や頚椎関節置換、後方除圧・椎間板摘出、経路を選択した神経根前方減圧術などがあります。部位と病態に応じて最適な方針を選択します。
- 回復の見通しは個人差が大きく、年齢・併存症・手術の適切性・術後リハビリの継続性に依存します。適切なリハビリを受ければ神経機能が改善するケースが多い一方、長期化することもあります。
6) 実践的なポイントと注意点
- 症状が両手・両半身に広がる、歩行障害や排泄機能の変化を伴う場合は緊急性を要する可能性があるため、医療機関での評価を優先してください。
- 痛みを伴わない痺れや、局所の痛みのみで神経症状が乏しい場合も、画像診断で病変の有無と機序を確認することが重要です。
- 病態は進行性であり得るため、早期の適切な評価と治療計画が回復を助けます。自己判断での長期間の安静や過度な運動は逆効果になることがあります。
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