肺と親指の関係性についての話(2025年11月14日 16時38分) 杉山手技療法・西宮北口

東洋医学(中医学)でいう「肺」は、単なる呼吸器ではなく、全身の気・水・皮膚・情緒まで広く統括する“治節(ちせつ)の官”とされます。ここでは現代医学とは別の理論体系としての説明です(臨床判断ではなく、養生のヒントとしてお読みください)。

1) 肺の基本的な位置づけ
- 五行と季節・気候: 肺は金に属し、季節は秋、気候は燥(乾燥)。乾きに弱く、潤いで守るのが要点。
- 臓腑の関係: 肺と大腸は表裏の関係。肺の流れが滞ると便秘や下痢に影響しやすい。
- 竅(感覚器): 肺は鼻とつながり、嗅覚・声や発声の力にも関与(宗気)。鼻の乾燥や鼻水は肺の状態のサイン。
- 体表とのつながり: 「肺主皮毛」。皮膚・体毛・汗のコントロールを担い、外邪(風・寒・燥など)から身を守るバリア(衛気)を管理。
- 情志: 肺は「悲・憂」と響き合う。悲しみが長引くと肺気が弱まり、逆に肺が弱ると気分が沈みやすい。
- 経絡: 肺経は胸から上肢の親指へ走行。胸の詰まりや前腕のだるさ、親指側の違和感がヒントになることも。

2) 肺の主な機能(キーワードで理解)
- 主気・治節: 全身の「気」の配分・リズムを統制し、呼吸によって得た清気と飲食物の精微から「宗気」を胸に集め、声量や心肺の働きに関与。
- 宣発(せんぱつ): 肺気を外へ広げ、衛気や津液を皮毛に配る。これで汗のコントロールや体温調整、免疫的な防御が働く。
- 粛降(しゅくこう): 気と水を下へ降ろす力。これが弱いと咳が止まらない、息が上がる、むくむなどが起こる。
- 通調水道: 体内の水分循環をスムーズにし、腎・膀胱・大腸とも連携。肺が弱ると痰やむくみが出たり、逆に乾燥が進む。
- 開竅於鼻・在液為涕: 鼻は肺の窓。潤いが保たれていれば嗅覚が冴え、乾燥や過多の鼻水は失調のサイン。
- 嬌臟(きょうぞう): 肺はデリケート。風・寒・燥の影響を受けやすく、予防が肝心。

3) よくある失調パターン(目安)
- 肺気虚: 息切れ・声が小さい・汗が出やすい・風邪をひきやすい。気を押し広げる力が不足。
- 肺陰虚: 乾いた咳・痰が少ない・口や鼻の乾燥・午後のほてり。潤いと冷却の陰が不足。
- 風寒犯肺: 寒気のあとにクシャミ・透明な鼻水・悪寒・咳。温めて発散するケアが合うことが多い。
- 風熱犯肺: のど痛・発熱・黄色い粘い痰・口渇。熱をさまし潤す方向で整える。
- 燥邪傷肺: 乾いた空気で乾咳・鼻や肌の乾燥・便秘。十分な加湿と潤いの補給を。
- 痰湿阻肺: 胸のつかえ・多痰・重だるさ・むくみ。水の停滞を動かし、脾胃も整える。

4) 生活でできる肺の養生
- 呼吸と姿勢: 鼻呼吸を基本に、肋骨が横に広がる深い呼気を意識。猫背を避け、胸郭をひらくストレッチや軽い有酸素運動を。
- 皮毛を守る: 朝夕の冷え・乾燥対策(スカーフや加湿)。軽い発汗はOKだが、過度の発汗は肺気を消耗させるので控えめに。
- 食養生(潤い+少しの発散):
- 潤す食材: 梨、れんこん、だいこん、白きくらげ、百合根、長いも、豆腐、はちみつ、黒白ごま、杏仁、松の実、牛乳が合う体質も。
- 発散で巡らす辛味を少量: ねぎ、生姜、しそ、みょうが。陰虚やのぼせ体質は摂り過ぎ注意。
- 乾燥の季節は温かいスープ・お粥で水分と栄養をやさしく補給。
- 情志のケア: 胸を開くポーズ、歌う・朗読で宗気を養う、穏やかな泣きの発散も可。深夜までの作業は肺気を傷めやすいので早寝を。
- ツボ活用(目安): 列缺LU7(咳・首肩の開放)、太淵LU9(肺の元気と血脈)、尺沢LU5(熱・痰)、魚際LU10(喉の熱)、合谷LI4・迎香LI20(鼻づまり)、足三里ST36(全身の気)。強い症状は専門家へ。
- 季節の合わせ方: 秋は早寝早起きで静を守る。春夏のような過度な発散は控え、潤いを意識。

5) まとめ
肺は「気を配り、水を巡らせ、皮毛を守る」統括官。乾燥と冷えを避け、胸を開いて深く息を吐くこと、潤いのある食と静かな生活リズムが大きな助けになります。咳・息切れ・乾燥・皮膚トラブル・気分の落ち込みが重なるときは、肺のサインかもしれません。体質は人それぞれ。無理なく、少しずつ整えていきましょう。

#肺 #Lung #東洋医学 #TCM #金行Metal #秋Autumn #宣発 #粛降 #衛気WeiQi #皮毛Skin #開竅於鼻Nose #宗気ZongQi #潤いMoist #通調水道 #悲憂Grief #魄Po #大腸LargeIntestine #咳Cough #痰Phlegm #喘Asthma #乾燥Dryness #風寒WindCold #風熱WindHeat #養生YangSheng #白い食材WhiteFoods #梨Pear #百合LilyBulb #ツボAcupoints #列缺LU7 #太淵LU9