肺って思ってるよりデカイって話(2025年11月15日 16時39分) 杉山手技療法・西宮北口

肺と親指、一見まったく関係なさそうですが、医学的にはいくつか「つながるルート」があります。
ここでは、今わかっている世界の医療・生理学の知識を総動員して、

- どういう仕組みで肺の不調が親指に現れうるのか
- 逆に「ほぼ関係ない」と考えた方がいいケース
- 受診の目安

を、できるだけわかりやすく整理します。
(※ここでいう「親指の異変」は、痛み・しびれ・色の変化・変形など広めにイメージして読んでください)

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## 1. 東洋医学での「肺と親指」のつながり

まず、多くの人が連想するのが東洋医学(特に鍼灸・経絡)の考え方です。

### ● 肺経(Lung meridian)と親指
- 東洋医学には「肺経(はいけい)」という経絡(気の通り道)があり、
- そのルートは「胸部 → 上腕内側 → 前腕 → 手首 → 親指側」へと走っているとされます。
- 特に「少商(しょうしょう)」という肺経のツボは親指の先端にあります。

この理論では、

> 肺の機能が乱れる
> → 肺の経絡の流れが悪くなる
> → 経絡の末端である親指付近に「痛み・しびれ・冷え・色の変化」などが出る

と説明されます。

これは東洋医学独自の概念であり、西洋医学でそのまま実証されているわけではありませんが、臨床的に「咳がひどい時期に親指側のだるさ・痛みが出る」と訴える患者がいることは事実です(ただし因果関係は未解明)。

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## 2. 西洋医学的に考えられる主な「つながり」

次に、西洋医学の視点から、「肺の不調 → 親指の異変」につながり得るシナリオを整理します。

### 2-1. 血流・酸素の問題(低酸素・心肺機能低下)

肺の働きが落ちると、血液に十分な酸素が取り込めなくなります。
この状態が続くと、血流の末端(指先など)にサインが出やすくなります。

#### 典型的なサイン
- 指先が紫～青っぽくなる(チアノーゼ)
- 指先が冷たい
- 爪が白っぽい、血色が悪い
- 労作時(歩いたり階段を上がったりしたとき)に指先がしびれるような感じ

こうした変化は親指だけでなく、他の指にも出るのが普通です。
もし親指だけ顕著に変化しているなら、肺だけでなく「局所の血管・神経」の問題も考えます。

### 2-2. 指先の形が変わる「ばち指(clubbing)」

慢性的な肺の病気で有名なのが「ばち指」です。

- 爪の付け根が丸く盛り上がり、
- 横から見ると、スプーンのように「ぽってり」した指先になる現象。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎、肺がん、先天性心疾患などでみられます。

特徴として、

- 多くの場合、「両手の複数の指」に同じような変化が出る
- 数日ではなく「数か月～数年」でゆっくり進行する
- 痛みがないことが多い(見た目の変化が主)

もし「肺の病気を指摘されていて、最近指先が丸く太くなってきた」という状況なら、医師に「ばち指の有無」を確認してもらう価値があります。

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## 3. 神経のルートから見た関係(しびれ・痛み)

親指の感覚を担当する主な神経は「正中神経(median nerve)」と「橈骨神経の一部」です。
これらは頚椎(首の骨)の高さで脊髄から出て、腕・手・指に分布します。

### 3-1. 肺の病気が胸郭や神経を圧迫するケース

肺や胸膜(肺を包む膜)に異常があると、まれに神経に関連した症状が出ます。

- 肺がんや縦隔腫瘍が大きくなり、腕神経叢(brachial plexus)を圧迫
- 上肺野の腫瘍(パンコースト腫瘍など)が肩～腕の神経に障害を起こす

この場合の症状は、

- 肩～腕～手まで広く痛い、しびれる
- 力が入りにくい
- 多くは親指だけでなく、他の指もセットで異常を感じる
- 片側だけに集中していることが多い

「長引く咳・体重減少・胸や肩の痛み」と「片側の腕～手のしびれ」が同時にある場合、肺や胸郭の画像検査(レントゲン・CT)が重要になってきます。

### 3-2. 呼吸の異常が姿勢を変え、首～肩～腕に負担がかかる

慢性的に息苦しい状態だと、どうしても「前かがみ・肩をすくめる」姿勢になりがちです。
その結果、

- 首や肩・肩甲骨周りの筋肉がガチガチに緊張
- 頚椎や胸郭の動きが悪くなり、神経の通り道が狭くなる
- 結果として、腕や手指(親指を含む)のしびれ・痛みが出る

特にデスクワークが多い人・スマホ時間が長い人では、この「姿勢由来のしびれ」が肺の不調とタイミング的に重なって、「肺が悪いから親指が変」と感じることもありえます。

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## 4. 自己免疫・全身疾患を介した間接的な関係

肺と指(特に指先)は、自己免疫疾患ではセットで異常が出ることがあります。

### 4-1. 膠原病・リウマチ性疾患

例として:

- 全身性強皮症
- 関節リウマチ
- 多発性筋炎/皮膚筋炎
- ANCA関連血管炎 など

これらの病気では、

- 肺に間質性肺炎や肺高血圧症を起こす
- 指の関節に痛みや腫れ、変形が起こる
- 指先の血流障害(レイノー現象:寒さやストレスで指が白・紫・赤に変色)

といった症状が同じ病気の一部として出ます。
つまり、「肺の病気」と「指の異変」が別々ではなく、「同じ自己免疫疾患の別々の現れ」です。

もし、

- 朝、指のこわばりが30分以上続く
- 指の関節が腫れて痛い
- 階段や坂で息苦しい、乾いた咳が長く続く
- 検診で「肺に影がある」「間質性肺炎と言われた」

などが重なっているなら、膠原病内科・リウマチ内科での精査を検討した方がよいです。

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## 5. 「ほぼ無関係」のことが多いパターン

反対に、今の医療知識では「肺の不調との関連は薄そう」と考えるパターンもあります。

### 例
- 親指だけの打撲・捻挫・腱鞘炎(スマホ・ゲーム・PCによる酷使)
- 爪の根元の炎症(ばい菌による化膿)
- 親指の付け根の「ばね指」「母指CM関節症」などの整形外科疾患
- 片手の親指だけ突然しびれた(明らかな局所の神経圧迫など)

こうした場合、肺の軽い不調(軽い風邪や急性気管支炎程度)とはほぼ関係なく、「たまたま同時期に起こった別々の問題」であることが多いと考えられます。

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## 6. どんなときに受診を急ぐべきか

次のような症状がある場合は、肺と親指の関係を抜きにしても「早く受診」が必要です。

- 息苦しさ(安静時にも息がしづらい)
- 胸痛(特に締め付けるような痛み)
- 唇や爪が青紫色(チアノーゼ)
- 指先が急に真っ白になって痛む(血流障害)
- 親指に激しい痛みと腫れ、熱感がある(感染や急性関節炎)

一方で、

- 「ここ1～2か月、長引く咳がある」
- 「最近、階段で息切れする」
- 「指先が丸くなってきた気がする」
- 「親指～人差し指のしびれが続いている」

といった「じわじわタイプ」の症状なら、まずは内科・呼吸器内科・整形外科などで落ち着いて相談し、必要なら専門医(呼吸器・リウマチ・神経内科)に紹介してもらうのが良い流れです。

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## 7. まとめ:肺と親指の関係を一言でいうと

- 東洋医学的には「肺経」が親指に通じており、肺の乱れが親指の症状として現れるという考え方がある。
- 西洋医学的には、
- 低酸素や血流障害 → 指先の色・温度・感覚の変化
- 慢性肺疾患 → ばち指
- 肺・縦隔の腫瘍 → 神経圧迫で腕～手のしびれ
- 自己免疫疾患 → 肺と指関節・指先のトラブルが同時に出る
といった「間接的なつながり」が複数存在する。
- 一方で、親指単独のケガや腱鞘炎などは、肺の不調とは切り離して考えることが多い。
- 実際に心配な場合は、「どんな異変がどれくらい続いているか」をメモして、医療機関で相談するのがおすすめ。

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もし「具体的に今こういう症状がある」と教えてもらえれば、そのケースに絞ってもう少し詳しく整理できます。