インピンジメント症候群と「四十肩(中年の肩の痛み)」は、どちらも“肩が痛くて上がりにくい”を起こしますが、痛みの発生メカニズム・経過・治療の優先順位がかなり違います。理学療法(PT)と柔道整復(整復・手技+物理療法)の視点で、専門的に整理します。
インピンジメント症候群(肩峰下インピンジメント)とは
事実としての定義は、上腕骨頭と肩峰(けんぽう)周囲の間=いわゆる肩峰下スペースで、腱板(特に棘上筋)や肩峰下滑液包が機械的に挟み込まれ、炎症・疼痛が出る状態を指します。
多くは「使い方の問題(負荷+フォーム)」と「肩甲骨・上腕骨頭の位置関係」が絡みます。
症状の特徴
・腕を横から上げる途中(だいたい60〜120°)で痛い=ペインフルアーク
・夜間痛は出ることもあるが、動作特異的になりやすい
・押して痛い部位は前外側(大結節付近)に出ることが多い
・腱板機能低下(外旋筋力低下など)や肩甲骨の運動異常が併発しやすい
PTの評価ポイント(狙い:挟み込みを減らす)
・肩甲骨の上方回旋/後傾/外旋が出るか(胸郭・姿勢も含む)
・上腕骨頭の上方偏位が強くないか(腱板の求心位機能)
・胸椎伸展可動性、広背筋・小胸筋の短縮、後方関節包の硬さ
・反復挙上で痛みが増悪するか(負荷量の要素)
柔道整復の評価・介入の考え方
・腱板・滑液包周囲の炎症所見、圧痛、熱感の確認
・日常動作(洗髪、着衣、棚上げ)での再現性
・手技での過緊張筋の調整(僧帽筋上部優位、三角筋優位になっていないか等)
・物理療法(疼痛軽減を優先):アイシング/温熱/超音波などは施設方針による
※ここで大事なのは「無理に上げる」より、疼痛を下げて動作の質を戻す順番です。
四十肩(肩関節周囲炎)とは
一般に四十肩・五十肩は、医学的には肩関節周囲炎として扱われることが多く、典型例は**凍結肩(フローズンショルダー)**です。これは「挟み込み」よりも、関節包や滑膜の炎症→線維化→拘縮が主軸になります。
年齢は40〜60代が多いですが、呼び名が“四十肩”なだけで、50代でも普通に起こります。
症状の特徴(インピンジメントと最大の違い)
・何もしなくても痛い(安静時痛)、夜間痛が強い
・動かす方向が特定というより、全方向が硬くなる
・特に外旋制限(腕を外に捻る)が目立ちやすい
・経過が長い(数か月〜年単位)ことがある
・炎症期→拘縮期→回復期のように、時期で戦略が変わる
PTの評価ポイント(狙い:時期判定+拘縮パターンの把握)
・可動域制限が「自動」だけでなく「他動」でも同程度か
・外旋>外転>内旋のような制限パターン(関節包の関与)
・痛みが強い時期にストレッチで悪化しないか(炎症期の見極め)
・肩甲上腕リズムが崩れて代償(肩すくめ)になっていないか
柔道整復の評価・介入の考え方
・炎症優位か拘縮優位かを見極め、刺激量を調整
・強い夜間痛がある時期は、可動域を追いすぎず疼痛管理と生活指導
・拘縮期以降は、手技で筋緊張を整えつつ関節可動域エクササイズを段階的に
・物理療法は疼痛と循環改善目的で用いることが多い(温熱は時期を選ぶ)
見分けの実用的まとめ(臨床で迷うところ)
・インピンジメント:「ある角度・ある動きで痛い」+使いすぎやフォーム要因が濃い
・四十肩:**「夜も痛い・安静でも痛い」+“全方向に硬い”**が濃い
ただし現実には、
・インピンジメント様の痛み → 防御性収縮 → 動かさない → 拘縮
のように混在・移行も起こります。ここは断定せず、「評価を繰り返して時期と主因を更新する」のがPT/柔整どちらでも重要です。
セルフケアの方向性(安全側の目安)
・インピンジメント疑い:痛みが出る角度で反復を避け、肩甲骨と腱板の軽い筋トレ(痛みが増えない範囲)
・四十肩疑い:夜間痛が強い時期は無理なストレッチを避け、温冷や寝方・日中の保持姿勢を工夫。痛みが落ち着いたら段階的に可動域を回復
受診・画像検査を考えたいサイン(念のため)
・転倒など外傷後から急に上がらない
・明らかな筋力低下(腱板断裂疑い)
・発熱、強い腫れ、安静でも激痛が増悪
・しびれが強い、手まで症状が広がる
この場合は整形外科での評価(超音波やMRI含む)も検討が安全です。
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