患者様がよく口にするのが「『変形』しているから痛い」という言葉です。
果たして本当に変形が痛みの原因なのでしょうか。
CMなどによって『変形=痛い』という固定概念にとらわれていませんか??
最初に疫学を用いますと
東京大学22世紀医療センターのX線撮影調査によると50歳以上の男性約54%、女性約75%が変形性関節症と診断を受けています。
=50歳以上の日本人の約60%は関節が変形しているということです。
日本人集団における変形性膝関節症の有病率(症状があるか)の調査では40歳以上の男性約40%、女性約60%という結果でした。
=変形している人の約50%は症状があるということで、逆に残りの約50%は変形していても症状がないということです。
上記のことから『変形≠痛みの原因』と想像できます。
軟骨組織には、ほとんど痛覚が分布していません。
痛覚がある滑膜や靭帯、軟骨下骨という軟骨と骨の堺目付近まで『炎症が及ぶ』ことで痛みを認知します。
痛みの機序は①負担がかかる身体の使い方や外力により軟骨がすり減ることで関節内に軟骨の破片が遊離します。
②遊離した破片をそのままにはできないので貪食作用がある細胞が破片を食べてくれますがその際に炎症が起こります。
③関節内に繰り返しストレスが加わり続けると破片を処理しきれなくなり、より強い貪食作用がある細胞を引き寄せます。
④強い貪食作用がある細胞は軟骨の破片だけではなく周りの滑膜や靭帯にも食らいついて炎症が波及し痛みにつながることになります。
症状が長引いていくと炎症による痛みから神経が過敏になり、結果的に痛覚過敏を引き起こして痛みは持続し長期化してしまいます。
近年では変形性関節症は慢性炎症性疾患と考えれており、初期に軟骨の破壊を食い止められるよう、炎症を長期化させないように先手を打っていくことが大切になります。