物事には順序というものがある。種をまき、芽が出て、花が咲き、実がなる。それが世の理というものだ。ただ世の中には順序通りにいかないことが不意に生じることがある。
25歳の甥が急死したとの知らせが入ったのが先月末。風邪をこじらせて容態が急変し、そのまま帰らぬ人となってしまった。親戚には自分を含めたくさん彼より年配者がいるのによりによって25歳の若者が命を落とすとは順序を飛ばしすぎだろう。馬鹿者が。
彼は福祉関係の仕事についており、自閉症のうちの長男にも優しく接してくれ、また私の義父が晩年体調を崩した時期も文句も言わず身の回りの世話を引き受け、まさに福祉を体現したような人物だった。
遺族や友人たちの悲痛な叫びは彼がいかに周りの人たちに愛され、信頼されていたかを物語るとともに、世の中の理不尽さを否応なしに突き付けてくる。「いい人ほど先に死ぬ」という俗説をこんな形で経験することになるとは現実は残酷だ。
葬儀を終えた昨夜、家に帰りたいんだけどどうしても帰れなくて走り回る夢を見た。明け方にハッと目を覚ますとひどい寝汗。臆病な私は左右の手をゆっくりと動かし「生」を確認する。彼の魂が行き場を失いさまよっているのではないかという思いがふと頭をよぎる。来月は四十九日だ。あちらで義父母に「急ぎすぎだ」と頭をはたかれている情景を想像しつつ彼の成仏を願う。合掌。