ズルい私
しかし、毎日下働きだけを続けていたら、自分の店を開く時期が遅くなってしまうと思い、ズルいことを思い付きました。
大将が、毎朝市場から仕入れて来た魚や野菜、その他調味料や備品を、私が車から店へと運ぶ作業を担当していました。
それを良いことに、たくさんある安い魚を数匹、冷蔵庫の下に一時保管(隠して)しておくのです。
そして、忙しいお昼の営業が終わり、大将や先輩たちが休憩しに店内から出ていくやいなや、冷蔵庫の下からデッキブラシの枝で魚をかき出すのです。
そう聞くと汚いと感じるかもしれませんが、毎日私がそこも綺麗に掃除してありました。(下心があったので念入りに)
その数匹しかない練習材料を、見よう見まねで真剣に捌いていたのです。
大将に咎められることはなかったのですが、後に、実はしっかりバレていたのが分かりました。
ほんの少しの魚だったので、大目に見ていてくれたそうです。
そして、その成果は後に、中野新橋の菊寿司にトレードになった時に発揮されました。