前回と前々回は八重桜を取り上げてみました。今回は今たくさん咲いてきている山吹を紹介しようと思います。実はサロン希望の応接間にも一重咲きの山吹の花を生けておりましたが、終わってしまいました。山に行くと黄色い山吹の花が目立ちます。黄色が山吹色と形容されるように山吹は黄色い花の代表といっても良いでしょう。
八重咲きの山吹と言えば、江戸城を築城した太田道灌の逸話で有名です。道中 にわか雨に遭い、農家で蓑を借りようと立ち寄ったところ、1人の娘が出てきて、黙って一輪の八重の山吹の花を差し出したそうです。太田道灌はその時は訳がわからずその娘に腹を立てたそうですが、後で家臣にその話をすると、その家臣は、
七重八重花は咲けども山吹の実の一つだに無きぞかなしき(あやしき)
勅撰和歌集の一つの後拾遺和歌集に収録された兼明親王(かねあきらしんのう)が詠める和歌の下の句、“実の”一つだに無きぞかなしき、実の と 蓑(みの)を掛けているのでは?と説明したそうです。その時に太田道灌は素直に自分の無知を恥じたそうです。
ネットで太田道灌を調べてみたところ、なかなかの教養人で頭脳派の武将だったようですね。彼自身、その博学多識を自負していたはずです。しかし、一人の農家の娘により、これまた当時の教養人の常識の一つであった和歌の句の一つを知らなかったという事実を突きつけられて、その後、発奮して古人の和歌を深く学ぶようになったのは想像に難くありません。
しかしそれにしても、印刷物のない時代に一般庶民の家までそうした和歌集の写本が浸透していたのは驚きです。その娘さんは読み書きができていたのでしょうか?あるいは有名どころの和歌はその当時の日本人の共通の財産だったのかも知れませんね。
さて今回の山吹の写真は五台山で撮影したものです。春の五台山、桜が終わっても、いろいろな花が次から次に咲いて私たちの目を楽しませてくれます。残りのお花はシャガ、コデマリです。彩り豊かなツツジもたくさん咲いてきました。ツツジもそのうち取り上げてみようと思います。
平成もあと残りわずか1週間となりました。早いものです。それでは皆様今日も1日元気に過ごしましょうね。