前回は季節を二十四節気に分け、それぞれの特徴を関連する五臓とともに紹介しました。
今回は、季節ごとの養生法を五臓の性質とともに書いてみようと思います。
春は肝
東洋医学の五行説では春に対応している五臓を「肝」としています。
春は発陳(はっちん)、陽のエネルギーが盛んに伸び広がろうとする力を得る季節です。この季節に肝の陽気(陽のエネルギー分)が春の陽のエネルギーの発散する力と相まって体を動かす原動力となり活力になります。
肝の働き
肝には疏泄作用と蔵血作用があります。
疏泄の「疏」は疎通、「泄」は発散・昇発の意味があります。気の流れを滞りなく行い上昇、発散させる作用という事になります。この働きが、精神状態を安定させたり、胃腸を整えたり、血流を滞りなくさせています。
蔵血は、肝には血液が集まり必要に応じてそれを全身に巡らせるという作用があります。わかりやすいところでは睡眠でしょうか。寝ている間は体にたくさん血液は必要としないので肝に集り、活動している時には血液を全身に巡らせている、つまり肝は睡眠のリズムには影響を与えるということになります。
このような働きを持つ肝の陽気が少ない状態ですと、春の陽気を発散させる力に合わせることができなくなり、鬱傾向となります。また、肝の陽気が旺盛すぎると熱を持ってしまい、イライラや焦燥感などにつながります。
1年を四季に分けて、それぞれ陰陽の変化が訪れます。そして1日の中にも四季があると古代中国では考えていました。中医学の原典である黄帝内経の霊枢の中にある『順気一日分為四時』には『早朝は春、日中・正午は夏、日暮れ時は秋、夜間は冬』という記載があります。これに肝を当てはめると、もし肝の陽気が少ないと早朝から午前中にかけて活動しようとしているタイミングで気が足りないので肝の陽気不足による鬱などの状態は悪化しますが、午後からは陽気を必要とされなくなるので状態は落ち着いてくるという事になります。問診などで、「一日の内で特に状態が悪いと感じるのはいつですか?」という事を聞くのもこのような作用があるからです。
肝を滋養しましょう
大きく肝の陽気不足と肝の陽気旺盛の場合を考えてそれぞれの養生、特に食養生について書いてみます。
肝の陽気不足
肝は先ほど現した五行説の表でいくと、酸味と関係性が深いです。つまり酸味を摂ることで肝を滋養できるとも言えます。しかし、肝の陽気が不足している時は酸味はマイナスに働くことがあります。それは酸味それ自体に「収れん作用で筋の動きを引き締める」という性質があるためです。陽気を活性化させて伸びやかにしていきたい時に「収れん作用」のある酸味は逆効果です。
そこで早朝活力が足りないなという方、鬱傾向にある、やる気がでないそういう状態の方には温性(体を温める性質)の食べ物と若干辛味のある食べ物がお勧めです。
例としては、「しそ、ニラ、ニンニク、ニンニクの芽、こしょう、落花生、エビ、ピーマン、唐辛子など」です。
肝の陽気が旺盛
イライラや焦燥感、怒りやすいなどには、先ほど書いたように酸味の収れん作用を利用します。
例としては、「トマト、ミカン、柚子、パパイヤ、枇杷、レモン、セロリ、チンゲン菜など」です。
食事に関しては何事もバランスが肝心です。温性の食べ物をたくさん食べる、酸味のあるものをたくさん食べるというのはバランスを欠いてしまいます。難しいことを考えずに、ご自身の食事を見てください。色味はどうでしょうか?白っぽい食事、緑が多すぎる食事などになっていないでしょうか?パッと見たときに色が様々ある食事は自然とバランスの良いものです。そんなバランスが良い食事に上に書いたような食材を少しプラスしてみることが春、肝の食養生に役立つと思います。
その他、やはり春先は気が旺盛になって普段より気持ちも慌ただしくなりがちです。アロマやマッサージ、ストレッチ、入浴などご自身にあったリフレッシュ方法で養生してください。