今回から何度かにわたって子供の成長と体の変化、体の診立て、ケアに関して書いてみようと思います。
今回は子供と言ってもまだお母さんのお腹の中にいる子供の腸内環境から子供の成長を考えてみたいと思います。
なぜ腸内環境?
腸というのは胎児が形成される中では最も早く形成される臓器です。最も早く機能する臓器は心臓ですが。腸は原始腸管という部分から形成されますが、それができ始めるのは受精後およそ4週目から5週目とされています。
この胎児でも初期の段階から形成され始める腸ですが、胎児の間は基本的に腸内細菌は存在していないとされています。ではいつから腸内細菌は子供に備わるのでしょうか。
出産
胎児は無菌状態だった腸内もある部分を通過することで腸内細菌を獲得することになります。それは産道です。
産道を通過する際に赤ちゃんはその口や鼻を膣壁に押し付け、そこにある菌を体内に取り込みます。この時に膣壁に存在する細菌の多くは乳酸菌やビフィズス菌です。これは腸内細菌における善玉菌と同じ種類のものです。
膣壁に存在する菌は妊娠期間で変わっていきます。これは妊娠後期における膣内の分泌物の変化が関係します。後期においてはその分泌物はグリコーゲンいわゆる糖質に近い成分に変化します。これを好物にしているのが乳酸菌やビフィズス菌です。乳酸菌は栄養を取り乳酸を産生します。乳酸自体は酸性ですので、膣壁に存在するこれらの菌によって、膣内は酸性になり悪い菌が繁殖しないようにできています。そこを赤ちゃんが通ることで最初のお母さんからのプレゼントを受け取って外に出てきます。
帝王切開は?
上のメカニズムは自然分娩での話です。産道を通過しない帝王切開による出産ではいつ腸内細菌を獲得するのでしょうか?それは帝王切開時の医師や看護師からという事です。ベネズエラの病院での発表では、赤ちゃんの腸内細菌には皮膚常在菌が存在していたというデータがあります。自然分娩で獲得できていた乳酸菌やビフィズス菌は獲得するチャンスを失ってしまいます。
これを補う方法として膣内ガーゼ法という方法が考え出されています。帝王切開で生まれた子供に母親の膣内の分泌物、細菌をガーゼで取り子供の口元に1時間ほどつけるという方法です。この方法に関しては帝王切開による腸内細菌の正常化を図ることができる新しい方法と言われる一方、衛生的な面で感染症の危険性を高める方法とされ医師の間で賛否分かれるところです。
しっかりと伝えなくてはならないことは、帝王切開が駄目だという事ではないという事です。母子のために帝王切開が優先的に選択される場合もあるでしょう。そのような場合は行われるべき方法です。しかし、必要のない帝王切開による出産が増えてきているとWHOでも警鐘されているように、出産方法に関しては、様々な角度から考慮する必要があると思います。
アレルギー疾患との関係性
母親がアレルギー疾患を持っているケースにおいて、自然分娩と帝王切開では帝王切開による出産によって生まれた子供は自然分娩に比べアレルギー疾患になる可能性が7倍多いというデータ(ノルウェーにおける2800人を対象としたもの)や喘息のリスクが3倍になるというデータ(オランダ)も出てきています。これらのデータはまだまだ研究段階ですので確実なことは言えません。関連性がないとする研究もあるくらいです。今後さらに明らかになる分野と言えます。
出産の方法云々ではなく、しかしながら腸内細菌の状態とアレルギー疾患との相関性は高いという事は言えます。マウスの実験段階ですが、本来酸素を嫌うビフィズス菌が母親の腸内から白血球によって乳腺に運ばれ子へと行くという事がわかりました。偶然ではなく、メカニズムとして行われているこの一連の流れは、それだけ子の腸内環境は免疫系に重要だという事かもしれません。
子供の発育に合わせた食事
特に離乳食へと変わるときには、子供の腸内環境を考え乳酸菌やビフィズスも含めてメニューを考えてみる事が健康状態をよいものに保つきっかけになると思います。
乳酸菌やビフィズス菌はいわゆる発酵食品に多く含まれますが、漬物や納豆などは代表例ですが、それらは小さな子供にはなかなか与えづらいものだと思いますので、ヨーグルトを活用して子供の腸内環境に良い影響を出せるといいですね。
*別の機会に書くと思いますが、これらの菌の好物にオリゴ糖があります。乳酸菌などの生育環境としては大変有用ですが、たくさん摂取するとそれはそれでデメリットがあります。オリゴ糖が入っているからといってあまり多量には摂らないようにしてください。何事もバランスです。