『マッサージの治癒効果~1/3~』からご覧ください。
筋肉再生の仕組み
メカニズムは、どういうものなのか?
研究チームは、マッサージがもたらす再生と強化は炎症を引き起こす細胞が筋肉組織から押しだされたことによるものだと仮定した。
マウスを使った実験でも実際にマッサージを始めて3日後の分析では、広範囲の炎症因子であるサイトカインの一部がマッサージを受けた筋肉内で激減している様子が見て取れたようだ。
またサイトカインの減少とともにマッサージを受けた筋肉と受けていない筋肉を比較すると好中球(白血球の一種)の数も少なくなっていた。
好中球はサイトカインに引き寄せられるので、サイトカインが減少するにしたがって損傷部位に集中的に移動する好中球も減少するからだ。
本来ではアメーバのように盛んに動き回る好中球はサイトカインのシグナルに引き寄せられて、損傷部にある細菌・真菌などの病原体や異物を貪食して排除する性質を持つ。
そこで研究チームはさらに一歩進み、好中球やサイトカインが再生中の筋繊維にどう影響するかを調べた。
「好中球は病原体や損傷した組織を殺して除去することで知られていますが、今回の研究では好中球が筋前駆細胞の振る舞いに直接影響を与えていることがわかりました」と今回の論文の共同著者であるステファニー・マクナマラは説明する。
「治癒の初期段階の再生には炎症反応が重要です。しかしフル機能で再生のプロセスを行うには炎症反応が速やかに解消されることも同じように重要なのです」
好中球が実際に筋肉の再生に重要なのか調べるために研究者たちはマッサージをせずに好中球を除去する抗体を注入してみた。
するとマッサージ無しでも損傷した筋肉の再生が同じように早まることが確認された。
結果的に好中球が分泌する因子は筋肉損傷の初期段階では筋細胞の成長を促すが、その因子が長期にわたり存在してしまうと新しい筋繊維への分化と成長を阻害するのである。用済みになった好中球を素早く除去することが回復を早める鍵だったのだ。
また研究者らは筋肉損傷から2週間後、マッサージを受けたマウスと受けなかったマウスで再生した筋繊維の種類が異なることに着目した。
するとマッサージを受けたほうの筋肉繊維はより大きな筋肉繊維を伴った強い筋繊維へと再生してという。これが筋肉の強化につながっていたのである。
『マッサージの治癒効果 ~3/3~』に続く
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