筋肉とは
筋肉には、体を支え、動かし、エネルギーを貯蔵するという機能があります。それらの役割によって、筋肉は大きく3つに分けられます。
骨格筋
腕や脚の筋肉、腹筋、背筋などで、体を支え、動かす役割を担っています。自分の意志で動かすことができます。
平滑筋
血管や内壁の壁にある筋肉で、血液を運んだり、胃腸を動かしたりする働きをしています。
心筋
心臓だけにある筋肉で、心臓の壁を作り、心臓を動かしています。
筋肉量と寿命の関係
筋肉量は、筋肉を構成するたんぱく質の代謝(合成と分解)によって決まります。合成が多ければ増え、分解が多ければ減りますが、この代謝には加齢と生活習慣が深く関わっています。
筋肉の量が減ると、転倒したり、病気にかかったりするリスクが増えます。また、筋肉量が多いほど長生きできることもわかってきました。
生まれたばかりの赤ちゃんは、立つことも歩くこともできません。成長していくにつれて筋肉の量が増え、20歳ごろまでは、筋肉の組織は太く長くなっていきます。そして、20歳ごろを過ぎると少しずつ筋肉量が減っていき、70歳代では20歳代の4割程度に減少します。特に、30~50歳代の中年期にあまり運動をしないで過ごすと、筋肉が急激に減少する可能性があります。
最近、75~84歳の高齢者の歩く速さと、10年後の生存率を調べた研究で、筋肉の量が多いほど長生きできることがわかってきました。普通以上の速さ(毎秒1.4m以上)で歩けるグループと、歩行速度が遅い(秒速0.4m未満)グループとを比べると、10年生存率に3倍程度の開きがあることがわかったのです。この結果は、歩くのが速い人、すなわち筋肉量が多い人ほど長生きできることを表しています。今、歩くのが遅い人も、運動や適切な食事などによって速く歩くことができるようになれば、生存率を伸ばすことが可能です。
筋肉量の減少で高まるさまざまなリスク
加齢に伴い、筋肉量は減っていきますが、筋肉が減ると、肺炎や感染症、糖尿病などさまざまな病気のリスクも高まります。
筋肉はエネルギーの貯蔵庫で、血糖値の調整を行う働きがあります。食事をとると、血液中の糖が多くなります。糖の一部は脂肪にも蓄えられますが、多くは筋肉にため込まれます。筋肉の量が減ると、糖をためておく場所が少なくなるため、糖を調節する力が低下して血糖値が変動しやすくなり、糖尿病になる可能性が高まります。
また、筋肉が減ると免疫機能が低下し、肺炎などにかかる人が多いことも報告されています。厚生労働省研究班の報告では、筋肉量の少ない高齢の男性は、多い男性に比べて死亡率が約2倍になるとの調査結果がまとめられています