2019年12月11日 更新
腰痛は温泉で改善するとは限らない?あらかじめ知っておきたいこと
体の悩みで多いのが腰痛。一時的な痛みではなく、生活のなかで気になる慢性的な腰痛に悩んでいる人も少なくありません。そんな腰痛の緩和として「温泉」に入ることが良いと聞いたことがある人もいるでしょう。はたして本当なのでしょうか。
温泉で緩和が期待できる腰痛
そもそもどうして腰痛には温泉が良いといわれるようになったのでしょうか。日本には古くから「湯治」という概念があります。湯治とは、病気や傷の治癒を目的として、温泉に入るという行為のことを指します。
実際、温泉にはナトリウムなど体に良い成分が含まれ、科学的に良い効果もあるとされています。ただし腰痛に対してはこの温泉成分よりも、温泉の温熱と浮力が関係しています。温熱によって体の血行が促進され、痛みがやわらぎ、また浮力によって体を動かしやすくなるのです。
ただこれは温泉につかっている間のみの一時的な効果の場合も多いので、慢性の腰痛の場合は温泉に毎週通うなどの必要があります。
腰痛に効果的な入り方
腰痛緩和のために温泉を活用するのなら、注意したいポイントがあります。
それは「じっくり芯まで温まること」。単純ですが重要です。温泉につかると全身の血行が良くなり、こうした血の流れは痛みをやわらげます。この時の血の流れは、ほとんど体温の上昇に影響されるわけですが、体のなかでも深部体温を上昇させる必要があります。深部体温とは、脳や内臓などの温度のことです。ここまで温度を上昇させるためには、ゆっくりと温泉につかり、体の芯まで温まることが不可欠なのです。
腰痛持ちが温泉に入る注意点
湯冷めしないようにする
「温泉から出ても湯冷めしないようにすること」。季節にもよりますが、温泉から出ると急激に体の温度が低下するため、腰痛にもあまり良い影響を与えません。ゆっくり温泉につかって出た後は、表面の水滴をきちんとふき取り、温かくすることが大切です。
急性の腰痛は温めない
すべての腰痛が温めれば良いというものではありません。温めると逆効果になる腰痛が「急性」の腰痛です。
ケガによる腰痛はもちろん、ぎっくり腰など突然発症した腰痛も入ります。これらの腰痛はたいてい鋭い痛みを伴い、患部が炎症を起こしています。温泉につかれば一時的に痛みはやわらぎますが、炎症を促進させてしまうのでかえって悪化することもあります。急性の腰痛の場合には、温熱効果のある温泉などにはつからないように注意しましょう。
炎症を起こしている患部は冷やすのが一般的な対処法です。また慢性の腰痛であっても、鋭い痛みを感じる場合や炎症がひどい場合には、医師に相談するのが良いでしょう。
温泉地への移動時の負担
慢性的な腰痛を患い、「いざ温泉に行って痛みをやわらげよう」と感じた時に注意しなくてはならない点があります。盲点ですが「移動時の負担」です。乗り物に長時間座っていると、筋肉がこり固まり、腰痛がさらにひどくなってしまうことがあります。特に長時間姿勢を変えることのできない夜行バスなどは腰痛の敵ともいえます。いくら温泉につかって腰痛を緩和しようと考えても、移動時に腰痛を悪化させてしまっては本末転倒です。温泉地の近くに住んでいれば話は別ですが、温泉に入るために電車やバスなどで移動する場合には注意が必要です。先に説明しましたが、腰痛には温泉の成分よりも、温熱と浮力が影響しているので、あまり成分にこだわらず、近場で通える範囲の温泉を探すのが良いのかもしれません。
まとめ
じんわりとする慢性的な腰痛の場合、温泉の温熱と浮力が痛みをやわらげることがあります。一方、急性的な腰痛の場合には冷やした方が良いので温泉は控えましょう。腰痛緩和で温泉に入る際には体の芯まで温まるようにし、移動時の腰への負担も考慮しましょう。
◆監修◆
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。 ホームページ
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