健康のために、肉を食べる。
筋肉を落とさないために、タンパク質を取る。
トレーニングをしている人にとっては、当たり前の考え方かもしれません。
僕自身も、以前はそうでした。
2018年にベストボディ系の大会へ出場していた頃、頭の中にあったのは、ほとんど筋肉のことだけ。
筋肉を増やしたい。
筋肉を減らしたくない。
空腹の時間をつくりたくない。
体重が約80kgあった当時は、1日に240gほどのタンパク質を取っていました。
3食では足りないので、食事は1日7〜8回。
プロテインも1日3回。
2〜3時間おきに、何かしらの栄養を入れる。
筋肉を育てるという目的だけを考えれば、かなり合理的だったと思います。
しかし、大会が終わったあと、僕の中に一つの疑問が残りました。
この食事を、健康のために一生続けるのか。
そこで考えるようになったのが、
筋肉を守る食事と、内臓を守る食事は、同じではない
ということです。
『LIFESPAN』を読んで、食事の見方が変わった
その後に読んだのが、デビッド・シンクレアの『LIFESPAN 老いなき世界』です。
デビッド・シンクレアは、老化研究で知られる研究者です。
この本には、老化を単なる自然現象として受け入れるのではなく、生活習慣や体内の仕組みから考えていく視点が書かれています。
ただ、この本を読んだからといって、
肉を食べてはいけない
タンパク質を取ってはいけない
16時間断食をしなければならない
という話ではありません。
僕が重要だと感じたのは、もっとシンプルなことでした。
それは、
体には、成長する時間だけでなく、休んで修復する時間も必要
ということです。
40代から意識したい4つの食事習慣
僕が『LIFESPAN』を読んで、日常に取り入れたいと感じたことは4つあります。
1.牛肉や豚肉を毎日の主役にしない
赤身肉には、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンB群などが含まれています。
栄養価の高い食品なので、肉そのものを悪者にする必要はありません。
問題は、肉を食べることではなく、肉ばかりになることです。
肉中心の食生活になると、
魚
豆類
野菜
海藻
全粒穀物
などを食べる機会が減りやすくなります。
特に、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉は、毎日の習慣にしないほうがいいでしょう。
完全に禁止する必要はありません。
まずは週に1日だけ、肉を食べない日をつくる。
夕食の肉を、魚や豆腐に置き換える。
それくらいからで十分です。
2.植物性タンパク質を増やす
タンパク質というと、肉、魚、卵、プロテインを想像する人が多いと思います。
しかし、植物性食品からもタンパク質は取れます。
たとえば、
納豆
豆腐
豆乳
大豆
レンズ豆
ひよこ豆
ナッツ類
などです。
植物性タンパク質のメリットは、タンパク質だけではありません。
食物繊維、カリウム、マグネシウム、ポリフェノール、不飽和脂肪酸なども一緒に取りやすくなります。
つまり、肉を豆腐に置き換えることは、単なるタンパク源の変更ではありません。
食事全体の質を変えることでもあります。
僕は現在、タンパク源の優先順位を次のように考えています。
豆類、大豆製品
魚
卵、乳製品
鶏肉
牛肉、豚肉
加工肉
牛肉や豚肉を食べないわけではありません。
ただ、毎日の中心には置かない。
このくらいの距離感が、現実的だと思います。
筋肉を守る食事と、内臓を守る食事
筋肉を増やすためには、タンパク質が必要です。
筋力トレーニングをしている人や、食事量が落ちている高齢者にとっては、タンパク質不足のほうが問題になることもあります。
だから、肉やタンパク質を一方的に否定するつもりはありません。
ただ、筋肉を増やすことだけを優先すると、食事回数は増えやすくなります。
プロテイン、間食、アミノ酸、栄養補給。
一日中、何かを食べ続ける生活になりやすい。
僕も当時は、それが正解だと思っていました。
しかし、食べ物が入ってくるたびに、消化や吸収の仕事が始まります。
筋肉にとって都合のいい食事が、必ずしも体全体にとって最適とは限りません。
そこで僕は、こう考えるようになりました。
筋肉は運動で守る。
食事では、内臓と全身の健康を守る。
筋肉は、適切な運動を続けることで維持できます。
タンパク質も、肉だけでなく、魚や卵、大豆製品から取れます。
一方で、食べすぎやダラダラ食べを続けていると、体を休ませる時間は減ってしまいます。
だから僕は、大会後から肉を食べる頻度を減らし、食べない時間を意識するようになりました。
mTORは悪者ではない
『LIFESPAN』を読むと、mTORという言葉が出てきます。
mTORを簡単に説明すると、
栄養が入ってきたから、体を成長させよう
と判断する仕組みです。
特に、アミノ酸、インスリン、筋力トレーニングなどによって活性化します。
mTORが働くことで、筋肉がつくられ、細胞が成長します。
つまり、mTORは悪いものではありません。
筋肉を増やすためには必要です。
問題は、mTORを刺激することではなく、刺激し続けることです。
2〜3時間おきに食事をして、一日中アミノ酸を入れ続ける。
すると体は、常に成長や合成を優先しやすくなります。
しかし、体には成長だけでなく、修復や掃除に関係する時間も必要です。
そこで関係してくるのが、オートファジーです。
食べない時間は、体の掃除時間
オートファジーとは、細胞内の古くなった成分や不要なものを分解し、再利用する仕組みです。
よく「細胞の掃除」と表現されます。
ただし、16時間食べなければ必ずオートファジーが働く、と単純に断言できるものではありません。
人間の体は、そんな都合よく時間割どおりには動きません。
それでも、食事と食事の間隔を空けることで、
インスリンが下がる
脂肪が使われやすくなる
消化器官を休ませる時間ができる
細胞の修復に関係する仕組みが働きやすくなる
と考えられています。
僕自身も、大会後に16時間断食を試していました。
ただ、全員が16時間空ける必要はありません。
体調、年齢、運動量、生活リズムによって向き不向きがあります。
特に、成長期、妊娠中、持病がある人、食事制限が必要な人は、自己判断で極端な断食をしないほうがいいでしょう。
まずは12時間、食べない
最初にやることは、難しくありません。
たとえば夜8時に夕食を終えたら、翌朝8時まで食べない。
これだけで12時間空きます。
具体的には、
夕食後の間食をやめる
寝る直前に食べない
朝食までカロリーのあるものを取らない
食事を3回程度にまとめる
一日中ダラダラ食べない
この5つです。
健康のためにナッツを食べる。
プロテインを飲む。
スムージーを飲む。
栄養バーを食べる。
一つひとつは悪くなくても、一日中何かを口にしていれば、体は休めません。
長寿食というと、何か特別な食品を食べるイメージがあります。
しかし実際は、足すことよりも、食べない時間をつくることのほうが重要かもしれません。
40代からの食事は、筋肉だけを見ない
若い頃は、多少食べすぎても回復できます。
筋肉を増やすことだけを考え、たくさん食べても、見た目には結果が出るかもしれません。
しかし40代以降は、見た目だけでなく、
血糖値
血圧
脂質
肝機能
消化機能
睡眠
疲労感
まで含めて考える必要があります。
大切なのは、肉をやめることでも、タンパク質を減らすことでもありません。
肉を食べすぎない
植物性タンパク質を増やす
ダラダラ食べない
食べない時間をつくる
筋肉は運動で守る
このバランスです。
僕は、筋肉を守るために内臓を犠牲にする食事より、内臓を守りながら筋肉を維持する生活を選びたい。
そのほうが、長く動ける体をつくれると考えています。
健康は、何か一つの食品で決まりません。
毎日何を食べるか。
どれくらい食べるか。
そして、いつ食べないか。
健康は気合いじゃない、設計だ。
