「また肩がガチガチ…」。デスクワークやスマホ操作が日常になった今、多くの人が慢性的な肩こりに悩まされています。
マッサージに行くとその場は楽になるけれど、すぐに元通り。
そんな経験はありませんか?
ほぐしても、ほぐしても、すぐに元に戻ってしまう。
その一番の理由は、あなたの「身体の使い方のクセ」にあります。
少しだけ、ご自身の身体に意識を向けてみてください。
パソコン作業をしている時、スマホを見ている時、無意識のうちに「肩がキュッと上がっている」ことはありませんか?
実は、肩を上げるという動作は、重力に逆らって常に筋肉を使っている状態です。
本来、リラックスしている時には全く上げる必要がないのに、私たちはつい、この「肩をすくめる」クセをやってしまいがちです。
なぜなら、肩こりをよく感じるその部分の筋肉(僧帽筋上部など)が、あなたの身体の中で「無意識でもつい使ってしまうほど、得意になってしまった筋肉」だからです。
私はこれを「得意筋」と呼んでいます。
一方で、この「得意筋」が働きすぎてしまう分、本来使われるべき筋肉がすっかり出番を失い、使い方を忘れてしまっている状態があります。
力を込める機会があまりにも少なくなり、サボるようになってしまった筋肉。これが「苦手筋」です。
では、なぜ肩を動かすのに、肩の上(得意筋)ではなく、別の筋肉(苦手筋)が働くべきなのでしょうか?
それは、私たちの身体が、より効率的に、そしてパワフルに動くための素晴らしい設計になっているからです。腕を動かす時、その土台となるのは「肩甲骨」です。
この肩甲骨を、背中の下側から力強く支え、安定させてくれるのが、僧帽筋の「下部」などの「苦手筋」たちなのです。
この苦手筋がしっかり働くことで、肩の上(得意筋)は余計な頑張りから解放され、リラックスできます。これが、肩こりのない、本来の楽な状態です。
つまり、あなたの肩こりを根本から解消するカギは、凝り固まった得意筋をほぐすこと以上に、サボっている「苦手筋」の使い方を思い出し、目覚めさせてあげることにあるのです。
「苦手筋」を目覚めさせる「効かせる感覚」とは?
「苦手筋を目覚めさせる」と言われても、どうすればいいか分からないかもしれません。
普段使っていない筋肉を意識するのは、最初はとても難しいものです。そこで大切になるのが、「効かせる感覚」です。
これは、筋トレで「ここに効いている!」と感じるあの感覚に似ています。
「攻めの効かせる」:意識的に力を入れる感覚 まずは、苦手筋に「ここにいるよ!」と教えてあげるように、意識的に力を入れてみましょう。
例えば、腕を横に開く動作で、肩の上ではなく、「背中の真ん中あたりがキュッと締まる」ような感覚を探してみてください。最初は小さくても大丈夫です。
「守りの効かせる」:抵抗しながら力を保つ感覚 次に、その力を入れた状態をキープしながら、ゆっくりと元の位置に戻すような動きをしてみましょう。
例えば、腕をゆっくり下ろす時に、「背中の筋肉がじわーっと伸びながらも、力を保っている」ような感覚です。これは、重力に逆らって姿勢を保つ時に使う、持久力のある力の入れ方です。
この「攻めの効かせる」と「守りの効かせる」を繰り返すことで、あなたの脳は、今まで使っていなかった「苦手筋」の存在を再認識し、その使い方を少しずつ学習していきます。
身体は「使ったこと」しか学習できない
私たちの身体は、非常に正直です。「使ったこと」しか学習できません。
いくら頭で「正しい姿勢」を理解しても、実際にその筋肉を動かし、その感覚を繰り返し体験しなければ、脳は新しい動き方を覚えてくれません。
「苦手筋」を目覚めさせるには、実際にその筋肉を「使う」練習が不可欠です。最初はうまく使えなくても、意識を向け、少しずつでも動かそうとすることで、脳は新しい運動パターンを学習し始めます。
今日から始める「身体の使い方の再教育」
肩こりの根本改善は、マッサージで一時的に楽になることではありません。それは、あなたの身体が長年のクセで忘れてしまった「本来の効率的な使い方」を、もう一度脳に教えてあげる「身体の使い方の再教育」です。
「苦手筋」を目覚めさせ、「効かせる感覚」を意識する。この小さな一歩が、あなたの肩こりを根本から変え、より快適で、疲れにくい身体へと導くでしょう。
今日から、あなたの「苦手筋」に意識を向けてみませんか?