産後マッサージを受けた方が良いと聞いたことがあっても、どのようなマッサージが産後マッサージにあたるのか、いつ受ければいいのか分からなくて悩んでいませんか。
産後の体型戻しや、全身のこりや痛みから解放されるために、産後マッサージの効果や施術を受ける時期を知ることができれば、今のつらい状態から抜け出せることができるかもしれません。。
この記事では、産後マッサージの種類からその効果、施術を受けるベストタイミングまでを紹介していきます。腰痛などつらい症状を感じている人や、スタイルの崩れに悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
産後マッサージを行っている各種施設の特徴も紹介しますので、自分の症状に合わせて最適な施設を選んでください。また、外出が難しい人や症状がすぐに戻ってしまう人のために、自宅でのセルフケアの方法も紹介します。少しでも産後の体が楽になり、赤ちゃんとの生活に笑顔が増えるよう、この記事が参考になれば幸いです。
1. 産後マッサージの種類と必要性
産後マッサージは大きく分けて2種類あります。目的によって受ける施術が変わりますので、自分が何のために産後マッサージを受けたいのかを明確にしておくとよいでしょう。
また、産後マッサージがなぜ必要なのかも具体的に紹介します。必ず受けなければいけないものではありませんが、つらい症状が長引かないよう、その理由もしっかりと理解しておいてください。
1-1.産後マッサージの種類
産後マッサージは「骨盤矯正」と「全身マッサージ」の2種類に分けることができます。
① 骨盤矯正
妊娠から出産にかけて、胎児の成長と共に大きく広がった骨盤を正常な位置に戻すマッサージを骨盤矯正といいます。開いた骨盤は放っておいても自然に閉じますが、妊娠前と同じ状態に戻るケースは非常に少ないといわれています。
歪んだり、ズレたりしたまま骨盤が閉じると、腰痛の原因になるだけでなく体型にも大きく影響を及ぼします。内臓が下がってお腹が出る、お尻が大きくなる、姿勢が悪くなるなどの体型の崩れだけではなく、全身の血行が悪くなって代謝が下がり太りやすい体質になってしまうことも……。骨盤矯正は、骨盤まわりの筋肉をほぐし、股関節の可動域を広げるマッサージをしながら骨盤の位置を矯正することで、これらのリスクを軽減させます。
② 全身マッサージ
産後の肩こりや腰痛、頭痛などの体の不調を緩和するためにもみほぐしたり、ツボの刺激を与えるのが全身マッサージです。全身をマッサージする場合もあれば、症状が強い特定の部位だけをマッサージする場合もあります。
さまざまな施設で産後ケアを目的とした全身マッサージを受けられますが、施設によって特徴が異なりますので詳しくは第三章を参考にしてください。
1-2.産後マッサージの必要性
産後の女性の悩みは骨盤の広がりや全身のこりなどの身体的なものから、イライラしたり落ち込んだりと精神面の不調まで幅広いです。放っておくと症状が慢性化して産後10年経ってもつらい症状が続くケースもありますので、産後マッサージを受けて早めに不調の原因を改善することは重要です。
また、妊娠中は「リラキシン」という、骨盤を形成する靭帯を緩める働きのあるホルモンが多く分泌されます。このホルモンの作用によって妊娠中に骨盤が広がって赤ちゃんが通り抜けられるようになるのです。このため、産後は骨盤をつなぐ靭帯が柔らかくなっており、元に戻しやすい状態であるといえます。
骨盤の緩みは産後半年ほどかけて徐々に妊娠前の状態に戻っていくので、それまでが骨盤を引き締めるチャンス! 適切な時期に施術を受けるほど骨盤矯正しやすいといわれていますので、ベストなタイミングを狙って産後マッサージを受ける必要があります。
2.産後マッサージの効果とベストタイミング
産後マッサージの効果は受ける施術の内容とタイミングによって大きく変わります。自分がどのような目的で産後マッサージを受けたいのかを明確にした上で、ベストなタイミングを狙って施術を受ければ辛い悩みからいち早く開放されます。マッサージで期待できる効果とベストタイミングを把握して、施術を受けるスケジュールを組みましょう。
2-1.骨盤矯正
産後マッサージの代表とも言える骨盤矯正には様々な効果が期待できます。産後女性の悩みを一気に解決してくれて、将来起こる可能性のある体の不具合を予防してくれます。
【効果】
・ヒップアップ
・ぽっこりお腹の改善
・代謝アップ(肥満予防)
・腰痛の緩和
・全身の怠さの緩和
・むくみの改善
【ベストタイミング】
・産後2カ月
※産後2カ月以降でも効果がないわけではありませんが、産後6カ月を過ぎると骨盤を支える靭帯は硬くなっていくとされています。
2-2.全身マッサージ
全身マッサージは読んで字のごとく、頭から足先までの全身マッサージですが、肩や腰といった特定の部位のマッサージも含みます。
もみほぐし、指圧、鍼灸などマッサージの方法はいくつかありますが、どれも血行を促して筋肉の緊張を和らげ、老廃物を流すことによってこりや痛みを緩和します。
【効果】
① 肩のマッサージ
・肩こりの緩和
・背中の痛みの緩和
・頭痛の緩和
・母乳分泌の促進
② 腰のマッサージ
・腰痛の緩和
・冷え性の緩和
・便秘の改善
③ 頭部のマッサージ
・頭痛の緩和
・睡眠の質改善
④ 足つぼマッサージ
・むくみの改善
・不眠の改善
・全身の倦怠感や重さの改善
【ベストタイミング】
・不調を感じたらなるべく早い段階
※1カ月健診時に問題がなければいつでも受けられます
3.どの施設に行くべきか
産後マッサージの施術を行う施設は主に整体院、マッサージサロン、鍼灸院、カイロプラクテッィクの4つですが、場合によっては整形外科の受診が必要になります。
どの施設で施術を受ける場合でも、「産後ケア」を謳っているかどうかを事前に確認し、確認ができない場合には産後であることを必ず伝えましょう。施設ごとの特徴を説明しますので、自分の症状と施術を受ける目的に合わせて最適な施設を選んでください。
3-1.整体院
ダイエット目的の骨盤矯正や、比較的症状が軽い場合には整体院がオススメです。予約が不要な施設が多いので気軽に行けます。料金は60分6,000円前後が相場で、回数券を発券している施設が多いので複数回通うとより安くなります。
整体は骨盤や背骨といった体を支える骨を正常な位置に戻して筋肉の緊張を和らげたり、血行を促したりする施術で、マッサージでもみほぐすよりも、体を捻ったり揺らしたりしたりして骨や関節の位置を整えていく施設が多いです。
※整体師には国家資格がないため民間療法と位置づけられています。症状が改善しない場合や悪化した場合には、後述する整形外科を受診してください。
3-2.マッサージサロン
症状が比較的軽く、エステ効果も期待して施術を受けたいならマッサージサロンやリラクゼーションサロンがオススメです。マッサージサロンでの施術料金は施設によって大きく異なり、1回の施術で3,000~4,000円程度の施設もあれば30,000円程する施設もあります。
整体やカイロプラクティックに比べると施術料金は高額な傾向にありますが、マッサージサロン特有のアロマオイルでのマッサージは美肌やリラクゼーションの相乗効果も期待できます。
また、個室を設けていることが多く、インテリアにもこだわりがある施設が多いので、周りを気にせず贅沢な時間を過ごすことができ、育児に追われて落ち着かない気分がリフレッシュできるのも利点です。育児を頑張るママのご褒美として、ゴージャスな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
3-3.カイロプラクティック
施術での痛みが苦手な人や、一時的な症状の緩和ではなく、新陳代謝など体質そのものを変えたい人にはカイロプラクティックが有効です。脊柱(せきちゅう)の中の特定の関節を揺らしながら正常な位置に戻すという施術で、ゴリゴリともみほぐしたり、ボキボキと体を捻らせたりすることがなく、痛みが少ないのが特徴です。
頭からお尻まで続く脊柱の位置を整えることで、神経系の機能を回復させるカイロプラクティックは、発祥地であるアメリカでは医療行為として認められていますが、日本では整体と同じく国家資格はありません。料金は整体より若干安い施設が多く、1時間5,000円前後の施設が多いです。
3-4.鍼灸院
症状が深刻な場合や、マッサージサロンや整体での施術では効果を感じられない人には鍼灸院がオススメです。鍼や灸は筋肉の奥まで刺激をすることができるので、表面のマッサージではほぐしきれない深部のこりも緩和することができます。
鍼灸院は国家資格を持つ鍼灸師が施術をするので、施術者が一定の技術を持っている点でも安心ができます。鍼灸治療は施術時間で料金を設定している施設は少なく、症状の重さや体質などによって施術時間が変わってきます。1回の施術料金は5,000円前後の施設が多いです。
3-5.整形外科
症状が重篤で、骨や靭帯、神経に異常がないかどうかの診断を受けたい人は整形外科を受診してください。マッサージだけでなく、レントゲンやCTでの画像診断、投薬や注射などの医療行為も施せるのが整形外科です。
ヘルニアが腰痛の原因になっている場合などは、マッサージサロンに通っても症状が緩和されません。立てないほどの痛みやしびれ、日常生活を送れないほどの不調がある場合は、一度整形外科を受診して不調の原因を調べてみてください。
4.自宅でできるセルフケア方法
産後マッサージはプロの施術を受けるのが最も効果的ですが、自宅ケアでも症状が緩和されます。この章では手軽にできるケア方法を紹介します。
産後育児に追われる生活の中では、定期的に施設に行けなかったり、症状がすぐに戻ってしまったりするので、日々のちょっとしたケアで症状の慢性化や重症化を防ぐことも大切です。施設での施術と併せて実施するのも効果的です。
どんなに忙しい時でも簡単にできるセルフケア方法を厳選して4つ紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
4-1.ストレッチ
ストレッチは体を伸ばしたり回したりすることによって、凝り固まった筋肉をほぐして血行を改善してくれます。体のこりは血行不良が根本的な原因なので、ストレッチで血行を促進することで症状が緩和されます。
【腰のストレッチ1】
① 足を肩幅にいて、腰に手を当てる
②腰を左右に各30回回す
【腰のストレッチ2】
① 仰向けに寝転んで両腕で両膝を抱え込む
② 胸に両膝がついたら、両手両足を大の字に広げる
③ ①②をゆっくりと5回繰り返す
【肩のストレッチ】
①右手で右肩の、左手で左肩の衣服を摘まむ
② そのまま大きく肩を30回回す
③ 逆方向に30回回す
4-2.リンパマッサージ
リンパマッサージで老廃物を効率的に押し出すと、こりや疲労感が改善するだけでなく、むくみや冷え性も改善していきます。
リンパ液は停滞しやすいため、日々のマッサージで流れを促してあげたいもの。リンパマッサージは体の外側から内側に向かって擦ることが基本です。下記の場所を気持ちの良い力で擦ってあげましょう
① 鎖骨の外側から内側に向かって擦る
② 手首から肘の裏側を通って肩に向かって擦る
③ ふくらはぎから膝の裏側を通って太ももの付け根に向かって擦る
④ マッサージの後は充分な水分をとって老廃物の排泄を促す
4-3.つぼマッサージ
気づいた時にちょこちょこと手や足のツボを刺激してあげると筋肉の緊張が和らぎ、血行が良くなるのでつぼマッサージも産後の体のケアに効果的です。
手の平、足の裏はツボが集中しているので、自分が気持ち良いと感じる場所をマッサージ棒や指で時々刺激するだけで効果が期待できます。知識がなくても、自分が押して気持ちの良い場所を刺激すれば大丈夫です。
4-4.お灸
つぼマッサージと同じく、ツボをお灸で温めてあげることでも血行が促進され、こりや疲労感が緩和されます。お灸の香りはリラックス効果も期待できるので、イライラが解消されたり、深い眠りを誘ってくれたりと精神面の不調も緩和してくれます。自宅で使える市販のお灸にもたくさんの香りの種類がありますので、自分の好きな香りを選んでリラックス効果も高めてあげましょう。
お灸によって産後の辛い症状を緩和するツボはたくさんありますが、今回は全身の疲れを取り、血流を促す代表的な3つのツボを紹介しますので試してみてください。
① 合谷(ごうこく):手の甲側の親指と人差し指の延長線が交わる場所
② 腰陽関(こしようかん):腰骨の高さと背骨がぶつかる場所(お臍の裏あたり)
③ 三陰交(さんいんこう):内くるぶしから指3本分上の場所
5.まとめ
産後マッサージは、腰痛の緩和や産後のスタイル戻しに効果のある骨盤矯正と、肩こり、頭痛、精神的不調の緩和を目的とした全身マッサージがあります。
産後マッサージを受けられる施設は下記の5つですが、自分の症状に合わせて適切な時期に適切な施設を選んで施術を受けてください。
・整体院
・マッサージサロン
・カイロプラクティック
・鍼灸院
・整形外科
また、外出が難しい場合には出張マッサージやセルフケアを実施して産後の不調を緩和し、笑顔で赤ちゃんと過ごせる時間を増やしてあげてください。
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内科医・公衆衛生医師
成田亜希子(なりた あきこ)先生2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。二児の母でもある。
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