缶コーヒーと血糖値|原田文植 医師コラム

■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』

医師・医学博士 原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。

世界中で毎年約5000万人が亡くなります。
戦争で12万人、犯罪で50万人亡くなります。
一方、糖尿病で亡くなる人は150万に達します。
ユヴァル・ハラリ氏は『ホモ・デウス』の中で
「甘い砂糖の方が火薬よりも危険」
と表現しています。

近田さん(仮名、69歳)という患者さんがいます。
サーファーでバイカー。
体型も若く、引き締まっています。
午前中はトラック運転手で、夜はカラオケスナックを経営。
風貌は「チョイ悪親父」(チョイ古!)。
よく働くカッコいいオッチャンです。

健診で高血糖を指摘され来院したのは3年前です。
プロフィールと裏腹に、数値は大変ひどいものでした。
身内に糖尿病はいません。
自営業なので滅多に健診は受けてきませんでした。
幸い、現在、一種類のクスリのみで超安定しています。

初診のときに訊いてみました。
「缶コーヒー何本飲みます?」
運転中に缶コーヒーを一日3本飲んでいたのです。

ビンゴ!

他院のことは知りませんが、当院では「缶コーヒー糖尿病」が意外と多いのです。

缶コーヒーは、概して砂糖たっぷりです。
その昔、「コーラ糖尿病」を多く見かけました。
最近は缶コーヒーです。
飲むときにあまり罪悪感がありません。
「コーヒー→カフェイン→眠気対策」
長距離運転手さんに重宝されるわけです。

その昔、「ヒロポン」という薬がありました。
薬局で売られていたのです。
「疲労がポンと消える」でヒロポン。
親友の父親は母親が夜食とともに持ってくるヒロポンで京大医学部に受かったと言います。

ヒロポンとは、ご存知「覚せい剤」のことです。
「ヒロポン→アンフェタミン→眠気覚まし」
の構図が一部で信奉されていたのです。
終戦後、覚せい剤中毒が量産されました。
当然、お上の規制が入り、「覚せい剤取締法」が制定されることになります。
親友の祖母はヒロポンに中毒性があるとは知らなかったはずです。
親友の父親は幸い中毒にはなりませんでした。

缶コーヒーに何の恨みもありません。
ときどき美味しくいただいています。
ましてや「缶コーヒー取締法」を制定しろとは言いません。
ただ、飲みすぎのリスクは教える必要がありそうです。

自販機も缶コーヒーも日本特有の文化です。
缶コーヒーと糖尿病の関係は諸外国では研究対象にはなり得ません。
日本国内で自覚するしかないのです。

大人の飲食は自己責任か?
常に問題になります。
素敵な芸能人を使って広告を垂れ流す。
自販機とコンビニは乱立している。
100円そこらで手に入る。
無意識で自販機にコインを投入する。
そういう人が多いのは事実です。
「依存症」は簡単に作られてしまいます。

依存症は「止めたくても止められない」という状態に使われる言葉です。
二次災害的「病」を引き起こすまでの習慣をつけさせられる。
それも新種の「依存症」と言えるかもしれません。

◆執筆◆

原田プロフィール
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生

1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。

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