餅つき大会なのに積極的に餅つきをしない。つきたてではなく、あらかじめついた餅をパッキングして持ち帰る……。食品衛生の観点から、餅つきのスタイルが変化しつつある今、改めて「衛生の知恵」をつけることの大切さを説く。下町の医学博士・原田文植氏による実録健康コラム!
■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』
医師・医学博士原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。
昨年末の話だ。
娘の幼稚園の餅つき大会に参加した。
餅つき大会なのに、自分以外誰一人餅つきをしない。
そしてつきたての餅は食べない、いや食べさせてくれない。
衛生上の問題で好ましくないという幼稚園側の配慮だ。
事前に先生たちが餅つきをし、パッキングしている餅を父兄が持ち帰るシステムだ。
なるほど、こうして「文化」は廃れていくのだな、と実感した。
牛や豚(鶏も?)のホルモンを扱うお店が増えている。
ほとんどが若いアルバイト店員だ。
「それほど焼かずに食べることをオススメします」
「焦げている方が美味しいです」
焼き加減を指南してくれる。
ホンマか?
あまり信用していない。
彼らが衛生の”キモ”を知っているとは思えないからだ。
地べたで座る若者が増えている。
欧米文化の影響だろう。
しかし、家の中でも土足の欧米と玄関で靴を脱ぐ日本とは違う。
間違いなく「輸入」文化だ。
中途半端に衛生が良い国になってしまった日本。
周囲に「守られて」いる。過保護なほどに…
衛生があやしい国の方が”キモ”を押さえている可能性もある。
アジア地域を訪問する旅行者は年々増えている。
アジア名物の屋台を巡る人も多い。
それにも関わらず、数年前と比して、食中毒の発生数は減っている。
アジアの店員にとっても評判が落ちると死活問題なのだろう。
多くの国は日本ほど医療体制が整っていない。
それゆえ、自分たちの身を守る知恵も醸成されていくのだろう。
韓国焼肉には鉄製の箸やトングがつきものだ。
金属製の箸は高温滅菌が可能だ。
日本の若者は竹の箸で生肉をつかみ、同じ箸で食べる。
バーベキューでよく見る光景だ、
最近は、ノロウイルスが猛威を振るうなど、食中毒は年ガラ年中発生している。
冷蔵庫や流通の改善など衛生環境が充実してきているのに、患者数はそれほど減ってはいない。
個人レベルの「衛生の知恵」の欠如が原因ではないだろうか?
むかし某ファストフード店であった経験だ。
商品を手渡しする若い店員の指から出血している。
「お姉ちゃん、血が出てるで」
「あっ、大丈夫です、絆創膏しますので」
店員の心配をしていると勘違いされた。
違う、衛生上の問題のお話だ。
ちなみに商品は苺ソースのかかったソフトクリームだ。
出血なのか苺ソースなのか区別がつかなかった。
ジョークのようだが、笑えないエピソードだ。
衛生改善を啓蒙するのは、今後益々重要になってくるだろう。
幼少時からの指導も大切かもしれない。
周囲が「守ってあげる」だけではまずい。
「知恵」をつけてあげる、つまり「教育」が必要だ。
食中毒は国の大好きな「労働生産性」にも影響する。
余談だが、衛生における最近の傾向として、
「子供にキスをしてはいけない」
というのがある。
「大人の口の中の雑菌で虫歯になるから」
というのが理由らしい。
実は、子供たちに内緒でキスしまくっている。
虫歯が増えなきゃ、歯医者も食えない!
歯科医の「精神衛生」を守ってあげるのも社会的に必要だ。
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◆執筆◆
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。