イジメはなくなるか?|原田文植 医師コラム

イジメ

■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』

医師・医学博士 原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。

「イジメってなくなるかな?」
医師をしている30年来の友人に問われた。
友人が中学時代にイジメを受けていたそうだ。
初めて聴かされた告白だ。
「なくせると思う」
そう答えた。
少なくとも、「なくす」という意志がなければ、絶対になくならないだろう。
これまでも勝手にはなくならなかったのだから…

別の学校の生徒にイジメを受けた。
そんな話は聞いたことがない。
その場合、傷害事件として扱われるからだ。
「イジメ問題」として扱われるものは、所属グループ内で発生する。
イジメとは、「同級生や同じ組織に所属するメンバー間から受ける不当な攻撃」と定義することにする。

朝日新聞に載った『さかな君』の記事だ。
海の中では仲良く群れて泳ぐメジナ。
せまい水槽では、イジメが始まるそうだ。
イジメられ、傷ついたメジナを別の水槽に移す。
すると残ったメジナは別の1匹をイジメ始める。
無限に続くそうだ。
せまい世界故に発生する現象だ、とさかなクンは考察している。

先日、高校時代の同窓会が開かれた。
国語教師であった担任も参加した。
折角の機会なので、担任に
「日本語の語彙はネガティブなものが多いと思いませんか?」
と訊いてみた。
担任の説明はこうだ。
常に侵略される危険にさらされている国は言葉の役割は「伝達」が主だ。
島国で、侵略された経験のない日本は内省的な方向に向かう。
だから、自己批判的な言葉が多くなったのではないか?

自身もうつ病に悩んだことのある担任だ。
文学青年だった自分の過去を参照したのかもしれない。

なるほど!
うつ病とイジメの構造は似ている!
一種の「自傷行為」だ。
自分個人に向かう、所属グループが内部に向かう、の違いこそあれども。

自分に向かい、自らのことだけを扱う。
すると、自分のアラ探しを始めたり、妄想したりしてしまうのだ。

有事であれば、所属グループは一丸となるだろう。
グループ内でイジメの対象を探したり、仲間をイジメたりするヒマなどないはずだ。

とすれば、解決策は見つかるかもしれない。
外部に目を向けることだ。
個人であれば、できるだけ所属の違う人とたくさん関わることだ。
グループであれば、リーダーが他のグループとの関わりを促すことだ。
ビジネスでも遊びでも、趣味でもかまわない。

2020年にはオリンピック、2025年には大阪万博が開催される。
多くの外国人がどんどんやってくる。
外国人を手伝ったり、助けたりすることが自助になるのだ。 

人と関わらないでいると誰もが自己反省に向かってしまう。
狭いサークル内では誰もが、「イジメる」側にも「イジメられる」側にもなりうる。
内側に入るな。常に外側に目を向けよう。

「うつ病」と医師に診断される。
実際にイジメに悩まされる。
そういう状況になってからでは対処は容易ではない。
常に外側に向かい、人間関係を広げていく。
その能力こそが現代人のサバイバルに必要な武器なのではないだろうか?

◆執筆◆

原田プロフィール
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生

1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。

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