今日はめまいの日やな|原田文植 医師コラム

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■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』

医師・医学博士 原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。

めまい患者さんが多い日というのがある。
おそらく天候が原因だと思われる。
気圧が大きく変化したときになりやすい。
台風が近づいて来るとニョキニョキ。
急に寒くなってもニョキニョキ。
キノコのように外来に登場する。

特効薬があるから対応に難渋することは滅多にない。
外来で漢方薬を飲んでもらえば大抵治る。
ウソのように。
それでダメなら点滴だ。

めまいの原因は色々あるので、当然注意は必要だ。
気圧に起因するめまいは、東洋医学的には「水毒(すいどく)」とよばれる。
人間は「気」「血」「水」いずれも滞ることなく、巡っていなければならない。
これは東洋医学における中心的な考え方だ。水が滞っているので「水毒」。「水滞(すいたい)」ともいう。ストレスや冷えも「水毒」の原因になる。

「水毒」の症状としては、頭痛、肩こり、胸やけ、むくみなどがある。
ちなみに「二日酔い」というのは典型的「水毒」だ。
「利水剤(利尿剤ではない)」が効く。
利水剤の機能は「水を捌く(さばく)」ことだ。
簡単に言えば、詰まりを改善し、流れをよくするということだ。
「水毒」症状改善に関しては、漢方薬の方が西洋薬より一日の長があると感じる。

めまい患者さんに
「今日はめまいの人ばっかりですよ」
というと一瞬驚かれるが、安心される。
他人とのつながりを感じる。グループに属していることを知る。
いかに人を安心させることか!
たとえそれが「病」であっても。
「同病相憐れむ」という言葉は実に言い得て妙だ。
人間は「社会的動物」だとつくづく感じる。
アリストテレスの指摘は正しい。

「めまい」そのものは、主観的な症状だ。
身体所見で「眼振(がんしん)」を診る検査をする。
こちらの指を目で追いかけてもらう。
目がプルプルと振るえるかどうかを観察する。
ただし、これも数値化できる検査ではない。
眼振がなくても「めまい」がある人もいる。
めまいは、やっぱり客観性に乏しいのだ。

初めてめまいを経験した人の中には
「死んでしまうのかと思った」
という人も少なくない。
妄想がそう思わせるケースがほとんどだ。
だから「安心」することが重要なのだ。
こうなると、「水」の滞りが「気」を滞らせているのだと知る。
安心させることで「気」が巡れば、「水」をいじりやすくなる。
ここで利水剤を投入すれば効き目がアップする。

西洋医学的にも、めまい治療にしっかりとしたエビデンスがあるのは鎮静剤だけである。
つまり「気」に働きかけているわけだ。

空の様子を「天の気」と名付けた先人は偉い。
実際「気(圧)」が乱れると雲が発生し、「雨(水)」が降る。
人体と実によく似ている。
人体も自然の一部なのだから当たり前だ。
だから、自然そのままの生薬が効くことに何の不思議もない。

再発を怖がる患者さんにはこう話す。
「めまいごとき!地球の自転を体感できてよかったじゃない。多分ガリレオもめまいだったのかも!」
「めまい」は宇宙の摂理を体感する絶好のチャンスなのだ!

 

◆執筆◆

原田プロフィール
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生

1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。

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