みんなどうしてる?人には聞きづらい、産後の夫婦生活のギモンに答えます

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「妊娠中はお腹の赤ちゃんが気になって性行為ができなかった」「そもそも性欲自体がわかなかった」……。そうしたママも少なくないと思いますが、無事に出産して体調が落ち着けば、夫婦生活の再開を考えると思います。しかし、様々な問題から、スムーズに再開できないことも珍しくはありません。今回は、産後の夫婦生活にまつわるいくつかの問題を取り上げ、なぜ起こるのか、どう対処すればよいのかを考えます。

■コラムテーマ
お疲れママに贈る!子育て中のボディ&メンタル健康術

内科医、公衆衛生医師 成田亜希子
2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。本コラムは、だっこで腰を痛めたり、母乳育児による免疫力低下でかぜを引きやすかったり、睡眠不足や思うようにならないストレスを抱えてお疲れの子育てママに、同じく子育て中の女性医師が贈る健康管理術。


夫婦生活の再開は「早くとも産後1ヵ月」が目安

出産によるダメージが回復するまでの時間には個人差がありますが、一ヵ月検診前にはすっかり元気になっているママもいます。会陰切開の傷は痛まないし、悪露(おろ)もなくなったし、「検診前に性行為をしても大丈夫そうだな」と思う人もいるかもしれません。

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しかし、出産は一世一代の大仕事。骨盤は押し広げられ、子宮内や産道、会陰は決して小さくないダメージを負っています。約10ヵ月もの間、様々なトラブルを乗り越えてお腹の中で赤ちゃんを育ててきたママは、まさに満身創痍なのです。そのダメージはママ本人が自覚する以上に大きいので、産後は慣れない赤ちゃんのお世話をしながらも体をしっかりと癒していく必要があります。

一般的には、出産によるダメージが回復するまでにはひと月ほどを要すると考えられているため、ちょうどそのころに医師が会陰の傷や子宮内の状態を診察する一ヵ月検診が行われています。出産による会陰や産道、子宮のダメージが順調に回復したことが確認されれば、夫婦生活や入浴も再開できるようになります。


産後すぐの夫婦生活……。その危険性は?

とはいえ、「一ヵ月検診でOKが出たら夫婦生活を再開可能」というのは絶対の基準ではなく、あくまでも目安のひとつです。これまで禁欲してきたパパが、産後すぐに夫婦生活の再開を求めてきたけれど、応じるべきか悩むということもあるかもしれません。実際、産道や会陰の傷に痛みがなければ、性行為をすることは不可能ではありません。しかし、産後すぐの性行為には次のような思わぬ危険が伴います。

1.傷の化膿

出産時は、会陰の裂傷を予防するため、あらかじめ会陰切開を行っておくことが一般的です。医師による切開以外にも、赤ちゃんに押し広げられる産道や会陰には大小様々な傷ができます。これらの傷は痛みを感じなくなったとしても、完全には治っていないことがあります。その状態で性行為をすると、細菌感染などを起こして傷が化膿してしまうおそれがあります。ひどい場合には、治りかかっていた会陰切開の傷が開いたり、強い痛みや発熱を生じたりするケースもあります。

2.産褥熱

産褥熱(さんじょくねつ)とは、産後24時間~10日の間に38℃以上の発熱が2日以上続くものを指します。子宮内の傷や子宮内に残った組織や血種などに細菌感染が生じて起こります。重症化すると敗血症などの重篤な状態になることもあるため、注意が必要な産後トラブルのひとつとされています。どのような経路で細菌感染が生じたのかはっきりとわからないことも多いですが、性行為が発症の引き金になりうることは確かです。


産後の夫婦生活……ママたちが抱えやすい悩みとは?

問題なく一ヵ月検診を終えたママは、夫婦生活を再開する準備がおおむね整ったと考えられます。とはいえ、特に妊娠中から出産後にかけて長い間夫婦生活から遠ざかっていたママの中には、スムーズに夫婦生活を再開できない人がいることも事実です。産後ママたちが抱えやすい夫婦生活の悩みと、その対処法をみていきましょう。

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1.性欲がわかない

性欲がない状態での性行為は、心身ともに大きな負担になります。産後は、女性ホルモンの分泌が急激に減少したり、慣れない育児で疲れやストレスがたまったり、何より「夫のパートナー」から「子どもの母親」へと役割がシフトするように思えるため、性欲がまったくわかないというママも少なくありません。そうした状況で気分が乗らないまま夫婦生活を再開すると、性行為自体に嫌悪感が芽生えてしまうこともあります。性欲がわかないときは正直にパパに打ち明けて、無理な性行為は控えましょう

2.性行為が怖い

出産を通して、ママは今までに経験がないほどの痛みにさらされます。産後しばらくの間、それを引きずるママも多いでしょう。その間は、たとえ身体的には回復していたとしても、痛みや出血などが気になって性行為に踏み切れないことがあります。その場合は、まずはスキンシップなどから初めて徐々に不安や恐怖心を克服していくことが大切です。

3.性行為をすると痛みを感じる

産後ママの夫婦生活上のトラブルとして最も多いと考えられるのが、女性ホルモンの減少に伴う性交時の痛みや出血です。妊娠中には女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンが大量に分泌されていますが、出産を終えると急激に分泌量が減少します。特にエストロゲンには膣分泌液の産生を促して、膣内に潤いをもたらす作用があるため、エストロゲンが急激に減少すると膣内が乾きやすく、性交時に痛みや出血が生じやすくなるのです。産後、女性ホルモンの分泌は徐々に増えていきますが、元の状態に戻るには半年~1年ほどかかります。性交時に痛みを感じる場合は、潤滑ゼリーを使うことを検討してください。


産後の妊娠可能性と避妊方法

産後の夫婦生活に関する疑問として意外と多いのが、妊娠の可能性についてです。「産後の生理がない間は避妊なしでも妊娠しない」と安心しきっているママはいませんか? 実際は、生理がないと思っていても気づいたら妊娠していた……というケースがあるのです。

妊娠が成立するためには、排卵が起こることが絶対条件です。排卵は女性ホルモンの働きにより引き起こされる現象であるため、当然ながら女性ホルモンがほとんど分泌されない産後しばらくの間は排卵も起こっていません。産後に女性ホルモンの分泌状態が妊娠前に戻るまでの時間には個人差がありますが、半年~1年ほどかかるとされています。

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授乳すると女性ホルモンの分泌を妨げるプロラクチンと呼ばれる別のホルモンが多く分泌されるようになるため、女性ホルモンの状態が元に戻るのに時間がかかり、産後1年以上たっても生理が来ないママもいます。一方で、授乳していないママは比較的早く元の状態に戻ります。

しかし、その期間を正確に予測することはできません。産後2~3ヵ月ほどで妊娠したというママもいれば、産後に生理が再開する前、つまり排卵再開時に妊娠したというママもいます。すぐに次の子が欲しいと望んでいるのでなければ、不測の妊娠を防ぐためにもしっかりと避妊をしましょう。

産後しばらくの間の避妊方法としては、ピルよりもコンドームをお勧めします。より確実な避妊効果があるのはピルですが、産後に使用するとせっかく元に戻ろうとしているホルモンバランスを変化させることになります。また、母乳の量にも影響することがあるので、産後にピルを使用する場合は半年以上たってからにしましょう。


まとめ

産後に夫婦生活を開始するときのポイントは、焦らず自分たちのペースで行うことです。産後ママは心身ともに大きなダメージを負っており、夫婦生活に抵抗感や恐怖を覚えることも少なくありません。しかし、その多くは一時的なもの。赤ちゃんの成長とともママの心身も時間をかけて元の状態に戻っていくので、無理のない範囲で夫婦生活のことを考えていけるとよいですね。

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  • ◆執筆

    成田亜希子先生
    内科医・公衆衛生医師
    成田亜希子(なりた あきこ)先生

    2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。二児の母でもある。