ひきこもりを生む病|原田文植 医師コラム

ひきこもり-病

■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』

医師・医学博士 原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。

事件の背景に「ひきこもり」があったのでは?
中高年の「ひきこもり」が社会問題化している…

ひきこもる原因はさまざまだ。
自ら好んでひきこもる人もいるだろう。
ある種の「病」もひきこもりの原因になりうる。
たとえば、重症の皮膚疾患。
だれでもひきこもりたくなるのではないだろうか。
告白すると、慢性蕁麻疹に苛まれた時期がある。
今はほぼ完治しているが、時折ポツっと出現する。
「かゆみ」を訴える患者さんが来たときだ。

「かゆみ」は感染するようだ。
他人が身体を掻いているのを見ると、自分も身体を掻きたくなる。
これは本能によるものという説がある。
人類史上大半の期間、病原体や有毒寄生動物だらけの環境に晒されてきた。
他人の掻いている姿を目にする。
自分も同じ危険に晒されているのでは?
生命危機を避ける「適応的本能」が発動する。
それが「掻く」という「適応的行動」につながる。
仲間のふるまいを見て察知し、サバイバルするわけだ。
「かゆくなる」のは事実、免疫応答反応だ。

アトピー性皮膚炎も難治性慢性疾患の一つだ。
他のアレルギー疾患同様、大抵子どもの頃に発症する。
親子で悩んでいる人も多い。
アトピー性皮膚炎の西洋医学的治療法は今も昔も「ステロイド」が主軸だ
90年代、「ステロイド治療」はメディアに叩かれた。
ステロイドの使用にアレルギーを感じる人はいまも少なくない。
しかし、ステロイドの薬害の大半は不適切な使用によるものだった。
今はしっかりしたガイドラインができた。
しっかり治療すればほぼ完ぺきにコントロールできる。
現在、アトピー性皮膚炎に苛まれている患者さんに伝えたい。
民間療法に走る前に偏見を捨て、一度確認してほしい。
ガイドラインに基づいてプロの指導のもと、きちんと治療したのに治っていないのかどうか?
アトピー性皮膚炎に限らず、慢性疾患は負け続けると心が折れる。
一度、しっかり改善した状況を作る。
それによって、「治る自信」を取り戻すことができる。
ステロイドの劇的な効果は精神面にも光が差す。

誤解してほしくないが、民間療法を否定しているわけではない。
ただ、民間療法には「個体差」がある。
百発百中の方法があれば、現代医療が取り入れないはずがない。
実際、皮膚科医の懸命な啓蒙が奏功し、以前ほどの重症例は減っている。
医療のアップデートの速度を侮ってはいけない。

他人の見る目が気になる皮膚症状は、人をひきこもらせる。
小さな空間に入り込めば視野も狭くなる。
偏見や先入観は情報収集に不利に働く。
人類は他人の行動を見て、適応的行動を取り、生き延びてきた。
奇しくも「ひきこもり」が話題になっている昨今。
生存確率を上げる行動として、「ひきこもり」は適切ではないかもしれない。

◆執筆◆

原田プロフィール
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生

1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。

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