それでも治ってほしい?|原田文植 医師コラム

■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』

医師・医学博士 原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。

肌寒い季節が迫ってくる。
黒木さん(70歳)の手荒れに対する不安は大きくなる。
色々試みて、年々改善してきてはいる。
確実に、驚くほど。
もちろん、まだ完治ではない。
本格的な寒さではない今の状態は悪くない。
それでも、冬になると、という不安が黒木さんを神経過敏にさせる。

「いつか治ってほしい」
黒木さんはポツリとこぼした。

受け入れ難い考え方かもしれないが、
「治ってほしい、治りたい」
は、実はあまり効果的な考え方ではない。
だから、口にしない方がいい。
潜在的に
治らないのでは?
という感情が入っているからだ。
「〇〇が治りたい」ということは「〇〇の状態が嫌だ」ということだ。
つまり、〇〇の状態を意識せざるを得ない。
残念ながら、無意識は「否定形」を理解できない。
「食べてはいけない」人はいつも「食べること」を考えている。
でしょ?
逆に、何度も〇〇を想像することになる。
記憶が強化されていくわけだ。
〇〇の状態が「普通」になってしまう。
居心地がよい状態と脳が誤認してしまう。
それが「病」を治りにくくさせている。

「病」はある意味、「脳と身体の解離」である。
脳がなりたくない状態が身体に発生しているわけだから。
脳でコントロール不能になっている。
だから脳の命令に従ってくれると思わない方がいい 。
つまり「強く思っていればよくなる」というものではない。
では、どのように思えばよいのか?
病とは無縁の物事に対し、「~したい」と強く思うことだ。
それを実現するためには当然治っている。
それが理想だ。

「治ったら~したい」
そう考える人は多いのではないだろうか?
その思いはよく理解できる。
だけど、本当に効くのは
「治ろうが治るまいが~している」
という考え方だ。
それが「忘れた頃に治ってた」を
引き出してくれる。
肝心の「やりたいこと」は治りたいときに
降って湧いてくるわけではない。
普段から「やりたいことをやる」を
実践していないと簡単ではない。

尊敬できる患者さんがいる。
石田さんは52歳のときに脳卒中を発症した。
76歳の今も、右半身のマヒは残っている。
趣味の川釣りと絵画は続けている。
利き腕でない左手で。
麻雀もプロ級の腕前だ。
もともと経営者としても一流だった。
くよくよしない性格が奏功したのだろう。

好きでやっていることは止まらない。
障害を乗り越える。
頭の中のイメージが既にあるから強い。
そこに近づくだけだ。
いや、常に超えて行こうとしているのかもしれない。

ワクチンの開発など細菌学の基礎を築いたパスツールの言葉だ。
「チャンスは準備された心に訪れる」
行動は簡単ではないかもしれない。
しかし、「言葉」だけはしっかり準備しておきたいものだ。

 

◆執筆◆

原田プロフィール
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生

1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。

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