■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』
医師・医学博士 原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。
70歳の安達さんは元気な女性だ。
アレルギー体質だけが悩みだった。
アレルギー性鼻炎と、慢性蕁麻疹だ。
大人はアレルギーで死ぬことは滅多にない。
「適当につき合うこと」を治療目標にした。
治療目標は完全に達成できた。
ひどいアトピーだった35歳の岡田君。
アトピーのせいで辛いイジメも経験した。
本人によると「暗黒の学生時代」を送っていたそうだ。
つき合いは10年になる。
岡田君は結婚もした。介護士として働き、管理職まで登りつめた。
アトピーはほぼ完治したと言えるレベルだ。
安達さんと岡田君はどうやって良くなったのか?
二人にとって「意外」と思われる助言をした。
冬のボストンでの思い出だ。
冬でもTシャツで過ごすアメリカ人。
「強く見られたい」らしい・・・
Tシャツ姿の彼らはほぼ全員鼻を垂らしていた。
鼻を垂らすことは気にならないのか?
「文化」と「価値観」の違いなのだろう。
彼らはバスケットの試合会場でコートを着ている日本人が不思議で仕方がないとも言っていた。
その経験から安達さんには冒頭の提案をした。
安達さんは「そうか!」と思ったそうだ。
素直だ・・・
最初に会った頃はいつも眉間にシワをよせていた。
長年のアレルギーでナーバスだったのだろう。
それは本当に理解できる。アレルギーは生活の質を落とすからだ。
アドバイス(?)で拍子抜けしたのだろう。
今では本当にリラックスしていて笑顔に溢れている。
開き直った安達さんは、本当に鼻水も蕁麻疹も治ってしまった。
アトピー性皮膚炎の岡田君は、
「ステロイド諸悪の根源説」
の熱心な信者だった。
まずその「洗脳」を取り払わなければならない。
「とりあえずステロイド使ってみたらエエやん。
それで悪くなったら止めればエエだけや。
少々皮膚が汚くても男の身体よ」
適切な使用法を丁寧に教えた。
もちろんガイドラインにのっとって。
スペシャルなことは何もしていない。
ほぼ一年でアトピーは完全に制御内になった。
今ではほぼ完治だ。
3年ほどステロイドも処方していない。
たまに遠方からわざわざ受診してくれる。
顔を出して、近況報告してくれる。
素晴らしい!
何が言いたいのか?
かたくなに拒む原因も「偏見」である可能性が高いということだ。
百花繚乱、世間には情報がうずまく。
取返しがつかないものはそんなに多くない。
「排除しよう」とする心の方が病んでいる。
不必要にマスクを着用するのも同じ。
気道の免疫力が低下するかもしれない。
実際「咳喘息」と診断される患者さんが増えている。
咳だけが遷延する病態だ。
はっきりとした原因はわからない。
ステロイド吸入が効くのでアレルギーであることは明らかだ。
かたくなな考えの持ち主は治癒しにくい。
多くの医師が抱いている経験的事実だ。
「絶対ダメ」とか「~してはいけない」
という言葉はまさにアレルギー反応だ。
わざわざ自分の言葉のアレルギー反応に苦しむことはない。
◆執筆◆
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。
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