美腸を目指すためには、生活習慣の改善に加えて、腸の動きを活発にするためのストレッチを行うことが有効です。今回は、小野咲さんにお腹痩せにも効果が期待できるという、すぐに実践できる簡単な腸ストレッチを3つ教えてもらいましょう。
■コラムテーマ
『人生を変える腸活』
国立成育医療研究センターPICU(小児集中治療室)勤務を経て、小林メディカルクリニック東京の便秘外来で腸について集中的に学ぶ。著書に『下がらないカラダ』(サンマーク出版)、『腸が変われば、人生変わる 美腸の教科書』(主婦の友社)がある。
【第9回】お腹をやわらかくする腸ストレッチについて
胸式&腹式の呼吸効果で腸を活性化
小野
前回は、横になった状態で行う「腸もみ」についてお伝えしましたが、プラスで実践してもらいたいのが「腸ストレッチ」です。
編集部
体の中にある腸をストレッチするというのがおもしろいですね。どんな効果が期待できるのでしょうか?
小野
小腸は、神経の影響をとても受けやすい器官です。不安な気持ちになったりドキドキしたりすると、緊張のせいで腸が物理的に硬くなり、その結果として便秘や下痢を引き起こしてしまうことが少なくありません。そこで、ガチガチになってしまったお腹を柔らかくするために行うのが腸ストレッチです。腸を直接的にもむ腸もみとは違って、全身を動かしながら周囲にある筋肉に刺激を与えていきます。
編集部
具体的には、どこをどうストレッチすれば腸に効きますか?
小野
いくつか種類がありますが、まずは「胸式&腹式ストレッチ」からやってみましょう。その名の通り、胸式呼吸と腹式呼吸の両方を意識しながら行うストレッチで、血流を改善することで腸を活性化させていきます。
編集部
肩幅に足を開き、立った状態で行うのですね。
小野
最初は両手をお腹に当て、軽く息を吸います。その後、ゆっくりと両腕を上げながら、鼻から息を吸い込んでください。
空気を取り込むにつれて「お腹→胸」の順に体がふくらむイメージです。
上体を反らすくらい体を伸ばして、そのまま少しキープしましょう。
編集部
なんだか、これだけでもとっても気持ち良いです。
小野
その後、腕を少しずつ下ろしながら、口から息を吐きます。今度は「胸→お腹」の順で空気が出ていくイメージです。
最後は、おへそをのぞき込むくらい上体を丸めて、息を吐ききったら終了です。
この一連の流れを5回行います。
手の位置がポイント!お腹痩せにもおすすめの簡単おじぎストレッチ
小野
胸式&腹式ストレッチができたら、より直接的にお腹に圧をかける「おじぎストレッチ」にも挑戦してみましょう。便通を促す効果があるだけでなく、腸腰筋やお尻を形作る大殿筋を緩ませることから、体全体をしなやかにしてくれます。
編集部
最初の立ち方は先ほどのストレッチと同じで、両手を腰に当てるんですね。
小野
手の位置をよく見てください。右手は腸骨の下、左手は助骨の下に置きます。
編集部
本当ですね! 両方の手を比べてみると、右手のほうが少し下側にあります。少しの違いのようにも思えますが、これが重要なポイントなのでしょうか?
小野
その通りです。このときに手を置いている場所は「右の腸骨下の上行結腸下部」と「左の助骨下の横行結腸の終わり」の2つ。いずれも特に便がたまりやすいポイントです。ここを意識することでストレッチの効果が出やすくなり、続けるうちにウエストが細くなっていく人も多いですよ。
編集部
なるほど、理にかなっていますね。この2つの場所に手を置いて、わき腹をもみながらおじぎをするわけですね。
小野
上半身を倒すと同時に、左手だけ下にスライドさせていく感じです。また、顔は正面を向いたままで、床を見ないように気をつけてください。そして、上半身が地面と平行になるまで深めのおじぎをしましょう。この動きを10回繰り返します。
編集部
左手が下りてきて、最終的に両手が同じくらいの位置になるわけですね。そのほか、おじぎストレッチを行うときのポイントはありますか?
小野
上半身を倒していくとき、ふくらはぎや太ももの裏をしっかりと伸ばすことですね。いわゆる「ハムストリング」と呼ばれる部分ですが、ここを充分にストレッチすることで、腸腰筋を柔らかくすることにつながります。
ぐるぐる腰回しで腸の詰まりを解消
編集部
いずれも特に難しい動きがあるわけではなく、自宅で簡単にできるストレッチですね。ちなみに、生理中に行っても問題ないでしょうか?
小野
無理のない範囲で行うのはOKでしょう。少しでも気分が悪くなるようなことがあれば中断してくださいね。なお、妊娠している場合は、ストレッチをすることは基本的に問題ありませんが、お腹を直接的に押す腸もみは避けてください。
編集部
それはそうでしょうね。
小野
すでにかなり腸が詰まっている感じがするときは、腰をぐるぐる回す動きをおすすめします。実は、これも腸ストレッチの一種です。
編集部
腰を回すだけで便秘解消につながるのですか?
小野
ポイントとなるのは、やはり手の置き場所です。おじぎストレッチのときと同様、右手は腸骨の下、左手は助骨の下に置いた状態で、ゆっくりと腰を回します。時計回りと反時計回りを5回ずつ行ってください。
編集部
なんだか、想像以上に腸が動いている気がします。
小野
上体を前に倒し、お腹に圧をかけた状態で腰を回すと、もっと刺激を与えられます。肛門をキュッと締めるようにするとより効果的ですよ。
編集部
これらの腸ストレッチと腸もみは、毎日行ったほうがよいのですか?
小野
私たちは、毎日の習慣にすることを推奨しています。1日5分もかからず理想の腸に近付けることができるのですから、試してみるだけの価値はあると思いますよ。
◆◆お話を伺った人◆◆
大学卒業後、2007年より国立成育医療研究センターPICU(小児集中治療室)勤務。その後、小林メディカルクリニック東京の便秘外来に移り、腸について集中的に学ぶ。著書に『下がらないカラダ』(サンマーク出版)、『腸が変われば、人生変わる 美腸の教科書』(主婦の友社)がある。