日々の食生活が次第に腸の状態を悪化させてしまうこともあれば、驚くほど元気にしてくれることもあります。食事の力は決してあなどれません。美腸のために私たちは何を口にすべきなのでしょうか。無理なく腸活を続けるための工夫とともに、知っておきたい「乳酸菌」の種類や、コンビニ飯の選び方など、小野咲さんに腸をキレイにするための食材選びの極意を伺いました。
■コラムテーマ
『人生を変える腸活』
国立成育医療研究センターPICU(小児集中治療室)勤務を経て、小林メディカルクリニック東京の便秘外来で腸について集中的に学ぶ。著書に『下がらないカラダ』(サンマーク出版)、『腸が変われば、人生変わる 美腸の教科書』(主婦の友社)がある。
【第6回】腸に良い食べ物・悪い食べ物
私がコンビニでお昼ご飯を買うなら
編集部
前回は「美腸のために心がけたい食事のとり方」がテーマでしたが、今回は具体的な食材の選び方について伺っていきたいと思います。腸を変えるために取り入れるべき食材は、ズバリ何でしょうか?
小野
ちょっと待ってください! 腸に良いものを食べるよりも前に、やるべきことがあります。それは「腸にとってマイナスになるものを食べない」ことです。どんなに優れた食材を取り入れても、腸内環境が悪ければ台なしになってしまいます。まずは、善玉菌の敵になる食品添加物を、できるだけ体内に入れないことを意識してください。
編集部
食品添加物というと、保存料や着色料、甘味料などのことですね。もちろん、体に良いものだとは思いませんが、腸にとってそんなに悪影響があるものなのですか?
小野
食品添加物は化学合成物質で、体外に排出することがとても難しいといわれています。どんどん蓄積されていき、必要な栄養素の吸収を妨げ、不要な腸内細菌を増やしてしまうのです。
編集部
でも、今の時代では、食品添加物をゼロにするというのは難しいように思いますが……。
小野
確かにそうですが、少しでも減らそうという心がけを大切にしたいですね。例えば、毎日のようにコンビニやファストフード店で食事をしている人は、週に数回でも家庭的な定食屋さんを選ぶだけで全然違ってくるはずです。また、コンビニで食品を選ぶにしても賞味期限をチェックするとか。
編集部
賞味期限ですか?
小野
賞味期限が短い食品は、保存料の添加が少ないことが多いというわけです。例えば、どのコンビニでも、塩むすびの賞味期限はあまり長くありません。また、酢の効果で腐りにくいことから、酢飯の含まれた納豆巻きなどもよいですね。私がコンビニでお昼ご飯を買うなら、納豆巻きにゆで卵、バナナ、インスタントのお味噌汁などを選びます。
乳酸菌=ヨーグルトとは限らない!
編集部
できるだけ腸にマイナスになる食材を食べないようにした上で、腸に良い食材を取り入れるという段階を踏むことが必要なのですね。
小野
その通りです。プラスとマイナスの2つの方向性を考えようというわけですね。プラスの方向性としては、腸内にいる善玉菌が優勢になるように、乳酸菌をとりましょう。実は、乳酸菌にも植物性と動物性の2種類があります。どちらも腸を活性化させてくれますが、より菌の力が強く、生きたまま腸に届きやすいのは「植物性乳酸菌」ですね。
編集部
動物性乳酸菌であるヨーグルトやチーズならなじみがあるのですが……。植物性乳酸菌は、どんな食材に含まれているのですか?
小野
納豆や漬物、麹、甘酒などです。いわゆる発酵食品ですね。料理に甘味をつけるとき、みりんを甘酒に置き換える方法もあります。甘酒はスーパーなどで気軽に買えますし、わが家では手作りしていますよ。炊いたおかゆに麹をかけて、しばらく保温しておくだけで完成です。
編集部
調味料を変えてみるのは、食事ごとに特別な食材を取り入れるより簡単かもしれませんね。
小野
そうですね。大豆と塩だけで作られた味噌を選ぶこともお勧めです。使いやすく、続けやすいというメリットを考えると、調味料に投資することはコスパに優れていると思います。たくさんの種類をそろえるよりも、少数精鋭でいきましょう!
編集部
ヨーグルトの選び方や食べ方についてはいかがでしょうか?
小野
ヨーグルトを買うときにパッケージをよく見ていただくと分かりますが、含まれる菌は商品によって異なります。初めのうちは1つの種類に偏らず、さまざまなものを試してみてください。2週間を目安に同じものを食べてみて、お腹の調子が良くなっていると感じるものが見つかったら、それを続けていきましょう。食べる量は1日に200gくらいで、できるだけ無糖・無脂肪のものをチョイスしてください。
編集部
無糖のヨーグルトは味がちょっと苦手で……。美味しく食べられる方法はありますか?
小野
ハチミツを入れるだけで、とても美味しくなりますよ。また、好きなフルーツを加えてみてはどうでしょう。バナナやイチゴ、ブルーベリーといった果物と相性が良いですから。基本的には食後、それも夜に食べることで、腸内環境を改善する効果が高まります。
良質の“エサ”を取り入れて善玉菌を育てよう
小野
善玉菌を増やしたら、今度はそれを育てることが大切です。彼らの“エサ”となる食物繊維やオリゴ糖をたっぷりとりましょう。これらは消化酵素で分解されず、大腸まで届いて善玉菌を元気にしてくれます。
編集部
食物繊維は善玉菌の“エサ”になるのですか? 便のかさを増やすものだと思っていました。
小野
食物繊維はさまざまな働きをするのですが、便のかさを増やしてくれる、蠕動運動を活発にしてくれるのは「不溶性食物繊維」です。善玉菌を育ててくれるのは「水溶性食物繊維」ですね。海藻やオクラ、なめこ、長芋や里芋などに多く含まれています。
編集部
いわゆるネバネバ食材ですね。
小野
それから、雑穀にもたくさんの食物繊維が含まれています。毎食のように食べるご飯に雑穀を混ぜ込むことで、簡単に摂取量を増やせますよ。初心者の方におすすめめしたいのは、白米と一緒に炊き込むだけでよく、しかも味や食感になじみやすい「もち麦」です。
編集部
それなら無理なく続けられそうですね。食物繊維ついてはわかったのですが、オリゴ糖のほうはあまりピンときません。どのようなものなのでしょう?
小野
たくさんの種類があり、しょうゆや味噌などの調味料、はちみつ、大豆、玉ねぎ、ごぼう、たけのこ、ニンニク、てんさい糖などに含まれています。どれに含まれているのか、いないのか、暗記しようとすると大変ですが、野菜多めの和食にすることで自然と摂取できるはずですよ。
編集部
そういう意味でも、和食は体に良いのですね。今日からでも積極的に取り入れていきたいです!
◆◆お話を伺った人◆◆
大学卒業後、2007年より国立成育医療研究センターPICU(小児集中治療室)勤務。その後、小林メディカルクリニック東京の便秘外来に移り、腸について集中的に学ぶ。著書に『下がらないカラダ』(サンマーク出版)、『腸が変われば、人生変わる 美腸の教科書』(主婦の友社)がある。