かわいいわが子を抱くために。腱鞘炎、肩こりは早めのケアが肝心!

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ホルモンバランスの急激な変動や育児に伴う生活環境の変化により、産後はさまざまな体調不良が起こりやすくなるもの。なかでも、産後の体を酷使することで生じる腱鞘炎や肩こりには、多くのママが悩まされています。悪化すると長期間にわたる治療が必要になることも……。今回は、腱鞘炎と肩こりの原因と、効果的な予防法・対処法を詳しく解説していきます。

■コラムテーマ
お疲れママに贈る!子育て中のボディ&メンタル健康術

内科医、公衆衛生医師 成田亜希子
2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。本コラムは、だっこで腰を痛めたり、母乳育児による免疫力低下でかぜを引きやすかったり、睡眠不足や思うようにならないストレスを抱えてお疲れの子育てママに、同じく子育て中の女性医師が贈る健康管理術。


ママは腱鞘炎や肩こりに悩まされがち

長い妊娠期間を終え、いよいよわが子と感動の対面! ママにとってもパパにとっても、一生忘れることのできない瞬間です。しかし、出産を終えたママは感動の余韻に浸る間もなく、昼夜を選ばずの授乳やおむつ替えなど慣れない育児に追われることになります。

特に初めての出産では、ママ自身も「1年生」です。どのように赤ちゃんをお世話すればよいかわからず、何をするにも力が入ってしまいがち。かわいいわが子の寝顔を眺めながら、つい時間を忘れて抱っこしている……なんてこともあるでしょう。しかし、育児に伴う無意識の力みや長時間の抱っこは、思いのほかママの体にダメージを与えることがあります。そして、その代表的な症状が腱鞘炎肩こりです。

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1.腱鞘炎とは?

腱鞘炎とは、骨と筋肉をつなぐ腱を包んでいる「腱鞘」に炎症が生じる病気の総称です。腱は、骨と筋肉をつないで骨に筋肉の力を伝え、骨の運動をサポートする役割があります。腱鞘は、これらの腱がスムーズに動くように支えるような構造をしています。

何らかの運動をして腱が動くたび、腱鞘に刺激が伝わることになりますが、通常程度の運動によるものであれば特に問題にはなりません。しかし、無理をして運動を続けると腱鞘が過剰なダメージを受け、炎症を起こすことがあるのです。これが腱鞘炎です。腱鞘は全身のさまざまな部位にありますが、腱鞘炎が特に起こりやすのは手首や指の付け根です。腱鞘が腫れることで腱が圧迫されて痛み、周辺の神経を刺激してピリピリとしたしびれを引き起こすケースもあります。

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2.肩こりとは?

肩こりとは、後頭部から首筋、肩、背中にかけての筋肉がこわばり、こりを感じるものです。首、肩、背中などが張っている、重苦しいと感じるだけでなく、強い痛みを覚えることも少なくありません。肩こりの原因は、首、肩、背中回りの筋肉が過度に緊張して血行が悪くなることです。前屈み猫背の姿勢になりやすい人、長時間同じ姿勢を続けがちな人が発症することが多く、より根本の原因としてストレス冷えがあると考えられています。

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肩こりの原因となる筋肉はひとつではなく、症状が現れやすい部位には個人差があります。肩こりが続くと慢性的な緊張型頭痛につながり、育児が一段落した後も頭痛目の痛み吐き気などに悩まされることがあります。


ママが腱鞘炎や肩こりになりやすいのはなぜ?

産後のママは妊娠中の不調とは違った様々なトラブルに悩まされることがあり、その代表例として腱鞘炎や肩こりがあります。産後のママに腱鞘炎や肩こりが起こりやすいのはなぜなのでしょうか?

1.ママの腱鞘炎の原因は?

先に述べたように、腱鞘炎は手首や指などの酷使が原因で発症します。長期間にわたり腱鞘に負担がかかり続けると炎症が起こってしまうのです。そのため、腱鞘炎は産後すぐに発症するのではなく、産後1ヵ月を過ぎたころから徐々に悩まされることが多くなるといわれています。

産後ママの腱鞘炎の原因は、ずばり頻繁な授乳長時間の抱っこです。特に首が座っていない低月齢の赤ちゃんの抱っこは、手のひらを広げて赤ちゃんの頭を支える必要があるため、手首や指に強い負担がかかります。また、首がしっかりと座る月齢になると赤ちゃんの体重もどんどん増えていくため、手首や指にかかる負担が大きくなります。わが子が新生児や乳児の時期だけでなく、大きくなってからも抱っこする機会がある間は、誰でも腱鞘炎になる可能性があるのです。

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また、産後は女性ホルモンの分泌が大きく減少します。女性ホルモンの一種であるエストロゲンには炎症による腫れなどを改善する作用があり、腱鞘炎の発症を抑制していると考えられています。そのため、エストロゲンの分泌が減少する産後は、腱鞘炎を発症するリスクが高い時期だといえます。

2.ママの肩こりの原因は?

出産を終えたママは、その日のうちから肩こりに悩まされる可能性があります。長い陣痛や帝王切開の痛みに耐えたママの体は、無意識のうちに緊張して力が入り、肩こりを引き起こしやすくなっているからです。また、出産後すぐに始まる授乳や抱っこでは長時間前屈みの姿勢になりやすいため、気づけばひどい肩こりになっていることがあります。産後の頭痛や吐き気などの体調不良の原因が、実は肩こりだったというケースも少なくありません。さらに、冬場の頻繁な授乳で体が冷えること、授乳による水分不足で血行が悪くなること、ストレスがたまりやすいことなども肩こりの原因となります。

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ママの腱鞘炎、肩こり対策のお勧めは?

多くのママを悩ます腱鞘炎や肩こりは、授乳や抱っこ、ホルモンバランスの変化など、ママにとって避けて通れないことが原因となります。とはいえ、打つ手がないわけではありません。日常の生活習慣を改善することで、腱鞘炎や肩こりを予防・改善することができます。

1.ママの腱鞘炎対策

授乳や抱っこは、ママと赤ちゃんのスキンシップを図る貴重な機会でもあります。腱鞘炎対策には手首や指に負担をかけないことが大切ですが、だからといって授乳や抱っこの時間を減らしたくないというママも多いでしょう。

腱鞘炎を予防・改善するには、授乳まくらサポートクッションなどを使って、手首や指への負担が少なくなるような姿勢で授乳や抱っこをするようにしましょう。授乳まくらを使うときは、肘がまくらから浮いていると手首に負担がかかるので、肘とまくらの間にタオルなどを挟んで手首への負担を軽減するようにします。また、添い寝をしているママは、夜間などは手首に負担がかからない添い乳にすることもお勧めです。

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2.ママの肩こり対策

授乳や抱っこでは前屈みや猫背の姿勢になりやすく、そのことが肩こりを引き起こす大きな原因のひとつとなります。したがって、肩こりがひどいママは、無理のない範囲で姿勢を正して授乳や抱っこをするようにしましょう。また、長時間同じ姿勢を取り続けることは避け、時には立って抱っこしたり、っこする腕を替など、自分に合った対策を行うことが大切です。そして、産後1ヵ月を過ぎて医師の許可が出た後は、赤ちゃんと一緒に入浴して体を温め、水分をこまめに摂取するようにしましょう。

肩こりは放っておくと悪化しやすく、安静にしていれば治るというわけではありません。少しでも首や肩のこりを感じたときは、肩の上げ下げをしたり、大きく伸びをしたりして血行改善を促すことのもひとつの方法です。

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こんな肩こりには要注意!

産後の肩こりは、病気が原因となって生じることもあります。特に注意したいのは高血圧です。妊娠中、血圧に注意していたママも多いと思いますが、実は産後も12週ごろまでは高血圧になりやすい時期とされています。高血圧により脳出血を起こしてしまうママもいます。肩こりがひどい場合は血圧をチェックし、血圧が高い状態が続くようであれば早期に受診するようにしてください。

まとめ
まとめ

 

ママの「職業病」ともいえる腱鞘炎や肩こり。誰でも発症する可能性があり、重症化すると強い痛みで赤ちゃんを抱っこできなくなることも少なくありません。そうなる前に予防・改善のための対策をしっかりと行い、症状があるときには早めに病院に相談しましょう。ひどい肩こりに襲われたときは、セルフケアだけでは対処できないこともあります。そのときはプロに任せて、アロマトリートメントやリラクゼーションを受けることもお勧めです。

  • ◆執筆

    成田亜希子先生
    内科医・公衆衛生医師
    成田亜希子(なりた あきこ)先生

    2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。二児の母でもある。

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