■コラムテーマ
女性の5大不調 ~その原因とリセット法
福田千晶先生
1988年、慶應義塾大学医学部卒業。医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科勤務を経て、1996年よりフリーランスの健康科学アドバイザーとして、講演と執筆、テレビ・ラジオ番組を中心に活動。
福田千晶先生インタビュー【第8回目】は、マッサージやリラクゼーションのストレス改善効果について
疲れには、大きく分けて「体の疲れ」と「心の疲れ」があることを前回お伝えしました。
今回は、心に与えるマッサージ・リラクゼーションの効果を、医学博士・健康科学アドバイザーの福田千晶先生が解説します。
ストレスがピークに達する前に、サッと駆け込めるスポット、確保しておきませんか?
ストレスがダブルでやって来ると……
福田
産業医として私が多くの働く女性と接する中で感じたのが、2つ以上のストレスが重なると、人間ってすごく弱いということです。
編集部
たとえば、どういった場合でしょう。
福田
「家庭のストレス」と「仕事のストレス」、「子育て」や「親の介護」プラス「仕事の大変さ」。このように複数の要素がからんでくると、大きなストレスに発展しやすいのです。
編集部
確かに、大きな仕事を抱えているときに子供のことで電話がかかってきたり、親が倒れたとなると、いろんな歯車が狂ってきますよね。複数をこなすのは確かにつらいかもしれません。でも、恋愛ならいいのかな……。
福田
いや、恋愛もうまくいっているときはいいけど、こじれているときは、仕事中にそれを考えることも疲れの原因になります。
編集部
悪いことしてないかなーって。
福田
そうです、そうです。仕事だけの忙しさだったら、職場を離れると解放されたり、「週末に楽しみが待っているから、がんばろう」と納得できたりするのだけど、複数のストレスがあると、そんな気持ちのゆとりもなくなってしまう。
編集部
ピークに達したストレスも含めて、心の疲れを癒す秘策があれば、ぜひ教えてください。
心の疲れにも効果的なマッサージ
福田
先ほど、心の疲れのケアには、自分が心地よいと感じることをするのが一番だとお話ししました。さらに具体的なアクションとしては、「ストレスの現場から離れる」「人にゆだねる」「好きな香りを嗅ぐ」などがおすすめです。
編集部
体が疲れたときに、マッサージやリラクゼーションがいいと先生がおっしゃいましたが、実はマッサージって筋肉だけでなく、心をほぐす作用もあるのではないかと……。
福田
それは大いにあると思いますよ。
まず、ストレスの現場から一時的にでも離れるのは、心の疲れを取るのにとてもいい。
ふだん仕事や家事でバリバリがんばっている人も、マッサージサロンに行ったら自分では何もできません。
編集部
はい、寝ていることしか。
福田
そうです、他人にすべてをゆだねるわけですよね。私も好きでときどきマッサージに行きますが、マッサージの魅力は、自分が何かをしなければいけないのではなく、誰かが手をかけてくれることにあると思うんです。あとは、スタッフや先生から元気もらえたりとか。
編集部
サロンの方とのおしゃべりが、ストレス発散になる方も多いようです。
福田
はい。人と話すことで楽になる人は、サロンに行くのが合っていると思うんですね。
一方で、リラクゼーションサロンに行って、必要以上に気を遣って疲れてしまう人もいる。
あるいは、接客業などで一日中人としゃべっている方は、仕事が終わったら、他人と話したくないと思うかもしれない。そういう場合、当座は自分でストレッチしたり、こりをほぐすグッズなどを試してみるのもいいと思います。
編集部
アロママッサージのような、香りで癒されるという方法もありますね。
福田
はい、心のリラックスには香りを活用するのもおすすめです。ラベンダーやひのきの香りなどでリラックスされる方が多いようですね。
ストレスがないのもストレス?
編集部
多忙によるストレスというのはよく耳にしますが、一方で、何のミッションもない生活というのも、それはそれでストレスになりそうです。
福田
そうなんです。朝起きても、特にすることがなく、一日中ボーッとテレビを見て過ごしている。それが幸せかというと、意外と本人はそうでもなくて、どこかで「私だけこんなことしていていいのだろうか?」と、罪悪感や孤立感を抱いていたりするのです。
編集部
真面目な人はとくに。
福田
はい。
編集部
そんな心の声が、体に出てくることはありますか。
福田
ありますね。たとえば専業主婦の方で、経済的にも非常に恵まれているのだけど、頭も痛いし、肩も痛いし、腰も痛いといって病院を訪れる。いろいろ話を聞いていくと、何か心に不満足な面があると。
編集部
不定愁訴のような。
福田
そうですね。最近そういう心の痛みというものが体にも出てくるというのがだんだんわかってきていています。
編集部
やはり多少ストレスがあるのが、健全なのかもしれません。
福田
はい。ストレスって、すごく悪者のイメージがありますけど、悪いことばかりではないんです。
たとえば、「明日までにレポートを仕上げなければならない」「友人の結婚式のスピーチを頼まれた」というのは、そのときはストレスになるかもしれませんが、乗り越えたときに達成感というギフトがもらえるんですね。
ストレスは人生のスパイスといった方がいて、「やってみよう」「乗り越えてみよう」という気持ちが、前に進むエネルギーになったり、気持ちの張りにつながります。
疲れのケアに関しては、ぜひ体と心の両面から考えてみてください。
まとめ
疲れとは?
過度に体を動かしたり、緊張やストレス、不規則な生活などによって起こる心身のだるさや衰弱感。肉体的な疲労のほか、精神的な疲労、内臓の疲れなどがある。
疲れのメカニズム
・筋肉が少なく血行が悪いと、老廃物の除去がスムーズに行かずに疲れを感じやすい。
・疲れは脳がジャッジしており、現代人は精神的ストレスによる脳の疲れが大きいと考えられる。
・リラクゼーション・マッサージは肉体的な疲労の改善と共に、精神的ストレスの緩和にも一役買っている。
こんな人は注意
筋肉が少ない
ストレスを受けやすい
複数のストレスを抱えている
など
疲れのリセット法
サロンでリセット……マッサージ、アロマセラピー
自宅でリセット……睡眠、運動
根本リセット……運動による筋肉育成、ストレスケア
★千晶語録
疲れは、「肉体的な疲れ」と「心の疲れ」の両方からとらえる必要があります。
肉体的な疲れには睡眠やマッサージ、心の疲れには、ストレスの現場から離れる、好きな香りを嗅ぐことなどがおすすめです。
ちなみに私の疲労撃退法は、泳ぐこと。マスターズ水泳の大会にも出場しています。
楽しいこと、好きなことをしているときは疲れを感じません。時間を忘れて没頭できるような趣味をもつのも、疲れのリセットには有効だと思います。
▼次の記事を読む
関連記事◆◆お話を伺った人◆◆
医学博士・健康科学アドバイザー
福田千晶(ふくだ ちあき)先生1988年、慶應義塾大学医学部卒業。医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科勤務を経て、1996年より、フリーランスの健康科学アドバイザーとして、講演と執筆、テレビ・ラジオ番組を中心に活動。医療機関での診療、企業の産業医活動も行う。『自分でスッキリ消せる! 肩こり・腰痛・ひざの痛み』(永岡書店)、『心も体もきれいになる!その場で「あたため」ストレッチ』(講談社+α文庫)、『花粉症がみるみるよくなる62の対策』(日東書院)、『1日10分! 足の悩みは自分で治せる』 (実業之日本社) など著書・監修書多数。
コメント