不良がモテるわけ|原田文植 医師コラム

■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』

医師・医学博士 原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。

病や症状の多くが、みずから本能的に求めたものである。
と言われれば納得できない人も多いだろう。

本能とは、生命維持と関わる遺伝的なもので、主に、環境の刺激によって引き起こされる。
辞書的にはそう定義されている。

「オスの生存をむしろ困難にする特徴がなぜメスを惹きつけるのか?」
という古い論文がある(ザハヴィ、1975年)。
ライオンの前で挑発的な行動をとるガゼル。
捕食者に見つかりやすい恰好の鳥。
なぜそのような理不尽なことをするのか?
「ハンデを背負っても生き延びることで自分の遺伝子の強さを証明する」
つまり、「自傷行為」とも言える行動が本能由来と考察されている。

人間も似ている!
カーレーサー、スポーツ選手、格闘家…
身体を張っている職業は確かにモテる!
スリルを求めるのも本能なのだ。

藤本さん(仮名、55歳男性)は40代で脳卒中を発症した。
以来、ベッド上生活をしている。
排泄はオムツ、外出は車椅子だ。

背中には立派な彫物。右手の小指欠損。
元アル中で現役のヘビースモーカーだ。
「シャブは体質に合わなかった」
とうそぶく。
プロキックボクサーとしての戦歴もある。

往診時、藤木さんのサイドテーブルは賑やかだ。
コーラ、サイダー、ポテチ、チョコ…
高校男子のホームパーティーか!
肥満し放題だ。

「咳が止まんないんですよ」
タバコは止めるつもりはない。
寝巻はタバコの灰で穴と焦げだらけだ。

行動のすべてが理不尽だ。
「自傷行為」にしか見えない。
この自傷行為は本能由来かもしれない。
うちの師長(65歳)は
「何かほっとけないのよね」と言う。
母性本能をくすぐっているのかもしれない。

「藤木さん、モテた?」
「おかげさんで」
ニコッと笑顔がキュートだ。
事実かどうかはさだかでない…

思春期の男の子は、「アホなコト」をする。
それは本能的な行動だ。
ときを経て、徐々に前頭前野が発達してくる。
本能をコントロールする術を学ぶ。
社会性を獲得し、アホな行動は減る。
残念ながら藤本さんは、道を踏み外してしまった。

人間は理に適った行動ばかりするとはかぎらない。
自分の行動を省みて欲しい。
「情動過食」という概念がある。
ストレスが溜まると、高カロリーのモノを身体が求める。
過食により、脳内セロトニンが分泌される。
セロトニンは快楽ホルモンの一種だ。
心当たりがある方も多いと思う。
過労するまで働く。
ストレスによる衝動買い。
報われないのにホストに貢ぐ…
全部「自傷行為」の変形ではないだろうか?
それが「悩み」や「病」にまで成長する。

ではこの厄介な「本能」とどう付き合うか?
意識的に前頭前野を鍛えるしかない。
前頭前野はリラックス状態で機能することがわかっている。
過度の飲酒やストレスで機能が落ちることもわかっている。
まず、自分が自傷行為をしていないか確認する。
そして、その原因が本能的なものかもしれないと知ること。
ストレスを避け、リラックスし、気持ちよく過ごすこと。
現代では前頭前野が発達した動物の生存確率が高いのだ。

◆執筆◆

原田プロフィール
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生

1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。

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