仕事中パソコンのキーボードを夢中で叩いていると、気付かぬうちに肩が丸まった姿勢になっていませんか?
デスクワーカーの約8割が該当するといわれている「巻き肩」は、放っておくと肩こりや首こり、腰痛、さらには呼吸が浅くなる原因にも。
そこで本稿では、巻き肩に効くストレッチを2つご紹介します。
ストレッチ以外で巻き肩を改善する方法、巻き肩に関して知っておきたい基礎知識、巻き肩と猫背の違いもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
効きそう、と思ったら早速ストレッチなどの対策に取り組んでみてください。一緒に姿勢をきれいに整えていきましょう!
1.だらっとした姿勢をキレイに!巻き肩改善ストレッチ2選
本章では体の前後両面(胸、肩、背中)の筋肉にアプローチし、巻き肩を改善するストレッチを2つご紹介します。
胸から肩、背中までの筋肉の動きは連動しています。
胸の筋肉が縮こまって短くなると、肩や背中の筋肉が伸びて胸の筋肉をサポートします。そうして肩甲骨ごと肩の筋肉が前方へ引っ張られ、巻き肩になってしまいます。
つまり短くなった胸の筋肉をはじめ、伸びてしまった肩や背中の筋肉に働きかけて肩甲骨を正常な位置に戻すストレッチが巻き肩には最も有効です。
1つ目は3分間かけてじっくりおこなう本格的なストレッチ、2つ目は仕事の合間にできる1分間の簡単なストレッチとなっています。
1-1.じっくり時間をかけて体をリセット!3分間の本格ストレッチ
1つ目に紹介するのは在宅時など、時間のあるときにおすすめの3分間でおこなう本格的なストレッチです。
このストレッチでは、柱や壁を使って次のような動作をおこない筋肉にアプローチします。
肩や胸に広がる鎖骨下筋(さこつかきん)、小胸筋(しょうきょうきん)、大胸筋(だいきょうきん)、広背筋(こうはいきん)にアプローチし、短縮している筋肉の柔軟性を高めます。
さらに前鋸筋(ぜんきょきん)の動きを良くして、肩甲骨が引っ張られて浮いてくるのを阻止します。
最後に、僧帽筋(そうぼうきん)、菱形筋(りょうけいきん)の動作を改善し、肩甲骨が外側に引っ張られるのを防ぎます。
【手順】 ①肩や胸の前にある筋肉の柔軟性を高める(マッサージ編) 鎖骨を見つける。左側の鎖骨のすぐ下に右手の指先を当て、くるくると円を描くようにやさしくほぐす。 次に鎖骨の外側に指を移動させ、コリコリと硬い小胸筋も円を描くようにほぐす。 ※小胸筋は斜めに伸びているので、上から下まで少しずつ指を移動させながらほぐしましょう。 ※終わったら右側もおこないます。
②肩や胸の前にある筋肉の柔軟性を高める(ストレッチ編) あらかじめ柱や壁の近くに移動し、体の左側を壁側に向ける。 肘を少し曲げ、手のひらを上に向けた状態で左手を後ろに伸ばす(小指が外側)。そのまま小指の腹を壁に押し当てる。 腰が反らないよう意識しながら、体を壁とは反対方向、右側に向ける。 空いている右手をパーの状態にして、左の鎖骨部にやさしく添え、鎖骨を押し下げる(このまま20~30秒キープ)。 ※終わったら右側もおこないます。
③前鋸筋の動きを良くするストレッチ 四つんばいになり、両手を肩幅に広げる。 体温計を脇に挟むイメージで、腕を少し下、内側に移動させ、脇をキュッと締めるようにして床をグーッと7秒間押し込む。 ※7秒間を3セット程度。
④僧帽筋・菱形筋の動作を改善するストレッチ 正座してあごとへそを引く。 背中の後ろで両手を組んで、そのまま後ろにグーッと伸ばす。腰が反らないよう気をつけながら肩甲骨を中央に寄せ、10秒間キープ。これを3回繰り返す。 肩甲骨を寄せたまま、後ろで組んでいた両手を離して、天井に向かってバンザイする。グーッと伸ばしたままゆっくりと両腕を下ろし、最後にもう一度背中の後ろで両手を組んで10秒間伸ばす。
【ポイント】 ・理想の頻度は1日1回。最低でも1週間に2~3回はおこなう。 ・ストレッチでどれだけ巻き肩が改善されたか知りたい方は、動画の前半と後半にあるセルフチェックを。 |
1-2.デスクワークの合間に!1分でできる簡単ストレッチ
続いては、職場で仕事をしていて時間がないときにおすすめの、1分間で簡単におこなえるストレッチです。
デスクワークをしていて、気付いたら巻き肩になっていると気付いたとき、気分転換を兼ねて気軽にやってみてください。
今回は全工程を2つの動画で紹介します。
1つ目(前半)は胸周辺のマッサージとストレッチ、2つ目(後半)は肩甲骨周辺のストレッチです。胸から肩、背中と、前後2方向からアプローチし、前に出た肩甲骨が後ろに戻るよう働きかけます。
どれも簡単な工程なので、組み合わせても1分程度で実践できるはずです。
【巻き肩 治し方】巻き肩の本当の原因(2:15~)
【前肩・巻き肩】って?原因とすぐできる対策ストレッチとコツ(4:36~)
【手順】 ①胸側の筋肉のマッサージ(30秒) 鎖骨のすぐ下にある筋肉を、内側から外側に向かって指でグリグリとほぐす(10回)。 次に鎖骨の外側までいったら、コリコリと硬い筋肉(小胸筋・肋骨と肩甲骨をつないでいる筋肉)を同じように指でグリグリとほぐす。 最後に、後ろ側の脇のすぐ下に手を当て、グリグリとほぐす。 ※同じ側の手を使うときは、手をグーの形にして脇腹をほぐす。
②胸の筋肉を伸ばすストレッチ(10秒) 手のひらを上にして、肘を曲げたまま両腕を左右に開く。そのまま両腕をグーッと背中側に伸ばして、肩甲骨を背部中央に寄せるようにして胸の筋肉を伸ばす。
③肩甲骨のストレッチ(20秒) 体の構造上、肩甲骨を回しやすくするために薬指か小指のみを肩に当て、前後に肩を回す。
【ポイント】 ・ストレッチの効果を高めるため、最初にマッサージをして胸や鎖骨、脇の筋肉をほぐす。 ・1日何回でもOK。気になったときにやるのがベスト。 |
2.組み合わせると効果アップ!3つの巻き肩対策
ストレッチ以外の巻き肩対策を3つご紹介します。
筋トレ、生活習慣の改善は、まずは自力でどうにかしたい方におすすめです。
整体に関しては費用が掛かるので、ストレッチをしてもなかなか改善が見られなかったときに検討するといいでしょう。
2-1.背面の筋トレ
体の背面の筋トレは非常におすすめです。
ストレッチだけでも改善できますが、背面の筋肉を強化することで、より巻き肩になりにくい体を目指せます。
巻き肩になっている方は、背中の筋肉が伸びて筋力が弱くなっている可能性があります。背面の筋肉を鍛えると、肩から胸までの筋肉を後ろに引っ張る力が強くなり、肩甲骨が正しい位置に戻ってそのまま定着しやすくなります。
2-2.生活習慣の改善
巻き肩を緩和するには、生活習慣の見直しも必要です。
というのも、巻き肩の発生や悪化につながるクセを直せば、徐々に正しい姿勢へ変化していくからです。
具体例を3つに分けて紹介します。
A)姿勢の改善
スマートフォンやパソコン、ゲーム機を使用するときは、体が前のめりにならないよう気をつけましょう。筋肉が凝り固まってしまうため、長時間同じ姿勢で作業するのはNGです。
姿勢に気をつけるとともに、適度に休憩を取って筋肉が凝らないように軽い運動を挟むと、より効果的です。
B)日常的に運動を
姿勢を直す以外では、日常的に運動をして筋肉を動かすといいでしょう。ウォーキングなどの軽い運動でも、胸や肩、背中の筋肉を意識的に動かす工夫をすれば、しっかりとした巻き肩対策になります。
可能なら筋トレをして、巻き肩が原因で衰えてしまった背中の筋肉を重点的に鍛えるのがおすすめです。
C)横向きで寝る頻度を減らす
横向きで寝る習慣がある方はできれば日ごとに体勢を変えるようにして、横向きで寝る頻度を減らしましょう。
肩の筋肉への負担を減らすとともに、肩が丸まったまま寝て巻き肩が癖付くのを防ぎます。
2-3.整体院へ通う
もし金銭的に余裕があれば、整体院に通ってプロの施術を受けるのもおすすめです。
巻き肩矯正を得意とする整体院も数多くあるからです。
整体とは、筋肉をほぐして骨格や骨盤の位置を調整し、体のバランスを整えることで不調を改善していく施術です。
さらに詳しく説明すると、小顔矯正、骨盤矯正という具合に、施術ジャンルが細かく分かれています。
そのうち猫背矯正やO・X脚矯正などの「姿勢矯正」と呼ばれるジャンルには、巻き肩矯正も含まれています。つまり、巻き肩の改善を目的としたメニューがあるわけです。
姿勢矯正のなかでも特に巻き肩矯正を得意としている整体院も多くありますので、まずは自宅や職場近くの通いやすい場所で、店舗を検索してみてはいかがでしょうか。
予約をする際は、「姿勢矯正」もしくはハッキリと「巻き肩矯正」と書かれているメニューを選んでくださいね。
3.巻き肩とは・原因・改善するメリット
巻き肩が直った!と実感できるまでセルフケアを続けていくのは、多少根気がいるかもしれません。
そこで少しでも励みになるよう、まずは巻き肩になっているときの体の状態、巻き肩になる原因を説明したうえで、巻き肩を直すメリットをお伝えします。
ストレッチや筋トレが面倒に感じたときは、ぜひ今の自分の姿と巻き肩が直ったあとの自分の姿を想像し、比較してみてください!
3-1.巻き肩とは「左右の肩が前方内側に入り込んだ状態」
ズバリ巻き肩とは、左右の肩が前方内側へ入り込んだ状態のこと。
肩甲骨が正常な位置から徐々に外側へ移動し、弧を描くようにして胸のほうへ引っ張られた結果、肩が丸まってしまいます。
出典: 猫背とはちょっと違う『内巻き肩』改善するポイント!|Asuca~インスパイリングエクササイズ
イラストの左側が正常な状態、右側が巻き肩になっている状態です。
力を抜いて腕を下げたとき、耳の直線上に肩があるのが正しい姿勢です。巻き肩の場合は、肩が耳よりも前方に出てしまっています。
3-2.巻き肩の原因はスマホやPCの使用、姿勢のクセ
巻き肩は、肩が丸まった姿勢でのスマートフォンやパソコン、ゲーム機の長時間使用が最大の原因です。
肋骨と肩甲骨をつないでいる小胸筋が縮んで、肩甲骨を含めた肩全体が前に引っ張られることが根本的な原因ですが、それが続くうちに肩が丸まった姿勢が癖付いてしまいます。
イメージとしては、パソコンのキーボードで文字を打ち込んでいるとき、肩が前に出ていますよね。この姿勢こそが、縮んだ胸の筋肉をカバーしようと肩の筋肉が伸びている状態です。
毎日デスクワークをしている方は巻き肩になる可能性が比較的高いとされています。
また、横向きで寝る習慣がある方も要注意です。
横向きで寝ると、上半身の体重が肩に掛かります。その負荷を分散させようとして、肩が前へ前へと無意識に移動していくことで、肩が内巻きになってしまうのです。
3-3.巻き肩を直すとスタイルや印象が良くなり不調も軽減される
ストレッチや筋トレ、生活習慣の見直しによって巻き肩を改善すると、以下のように多くのメリットが得られます。
大きく分けて3つに分類されます。
A)姿勢が改善され印象が良くなる
まず考えられるメリットは、姿勢改善とそれに伴う印象アップです。
肩甲骨をはじめ肩や背中、胸の筋肉が元の位置に戻ると、自然と胸を張って背筋が伸びた姿勢になります。
顔も上向きになり、ハツラツとした印象に。
B)肩こりや首こり、頭痛、腰痛、呼吸の浅さが緩和される
次に挙げられるのが、健康面でのメリットです。
肩や首の筋肉の緊張状態が解け、肩甲骨がスムーズに動くようになると、血流が良くなって肩こりや首こりになるリスクが減ります。また、頭から首の筋肉の緊張による頭痛の予防や、不良姿勢により上半身の体重を大きく受け止めていた腰の負担が減り、腰痛防止も期待できます。
さらには胸の筋肉が柔軟性を取り戻すと、肺や肋骨への締め付けが緩和されて、深く呼吸できるように。
C)バストアップ、胸板が厚くなる
実は美容面でのメリットも期待できます。
巻き肩を改善すると、大胸筋、菱形筋が本来の役目を果たせるようになります。
大胸筋は胸の脂肪を支えられるようになり、菱形筋が肩甲骨を背部中央に引き寄せることで、バストアップや胸板が厚くなる効果が見込めます。
4.巻き肩と猫背の違い
しばしば混同されがちな「巻き肩」と「猫背」。自分が一体どちらなのか、はたまた両方なのか、把握できていますか?
巻き肩と猫背は、体が丸くなる方向、原因の2点で異なります。
以下で両者の違いを比較しましたので、参考にしてください。
<体の状態(姿勢)>
巻き肩
・肩が内側に巻いて、左右の肩を結ぶ横のラインが丸くなる。
・耳の直線上より前に肩が出ている。
出典:猫背とはちょっと違う『内巻き肩』改善するポイント!|Asuca~インスパイリングエクササイズ
猫背
・猫のように背骨が曲がって、背中の縦のラインが丸くなる。
・頭の位置が下がり、頭からあごが前に突き出している
出典:“猫背”治したくない?正しく矯正して美しい姿勢を手に入れろ!|FORZA STYLE|ファッション&ライフスタイル[フォルツァスタイル]
<原因>
巻き肩
・前傾姿勢(肩を丸めた姿勢)によって胸の筋肉が縮み、肩の筋肉が伸びて前方へ引っ張られた状態で、体が癖付いてしまう。
・肩甲骨が外転(外側に移動すること)していく。
猫背
・前傾姿勢(肩を丸めた姿勢)によって背骨まで丸まり、頭からあごが前に出て首が突き出た状態で、体が癖付いてしまう。
・巻き肩の悪化。
・背中周辺の筋肉が衰えて肩甲骨の動きが悪くなり、外転、挙上(上に持ち上がること)していく。
つまり、巻き肩は猫背の原因にもなり得ます。
どちらも直したい方はストレッチや筋トレで胸や肩、背中の筋肉の動作を改善しましょう。腰から曲がるような猫背を直したい場合には、弱った腹筋も鍛えるとより効果が見込めます。
5.まとめ
巻き肩に効くストレッチを2つ紹介しました。
1つ目は自宅にいて時間があるときにおすすめの3分間の本格的なストレッチ、2つ目は職場にいて時間がないときにおすすめの1分間のストレッチです。
ストレッチだけじゃ物足りないと感じる方は、筋トレや生活習慣の見直し、整体でのケアも取り入れてみましょう。
スマートフォンやパソコン、ゲーム機の長時間の操作は巻き肩を悪化させますので、できるだけ姿勢に気をつけてこまめに体を動かすことが大切です。
巻き肩が緩和されるだけで、見た目の印象が良くなるほか、肩こりなど不調の予防やバストアップにもつながります。
今日から巻き肩対策を始めて、1日でも早くきれいな姿勢を手に入れましょう。
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