デスクワーク中に、首の後ろがゴリゴリと石のように凝り固まった感覚や、首を動かしたときのピリッとした痛みに悩まされていませんか?
そんな「首こり」は、スマートフォンやパソコンを毎日長時間使用する現代人にとって、今や肩こりと同じくらい当たり前の悩みになってきています。
そこで今回は、慢性的な首こりに悩まされている方におすすめのストレッチを2つ紹介します。また、首こりについて詳しく知って正しく対策できるよう、首こりの原因や、肩こりとの違い、首こりを起こさないための予防法もお伝えします。
参考にして、ぜひ実践してみてください。
1.首こりには「後頭下筋群」のストレッチが効果的
まず知ってほしいのが、首こりを改善するには、「後頭下筋群(こうとうかきんぐん)」という首の下層の筋肉を動かすことが重要です。
今まで肩こりと同じと思われていた首こりの原因に、実は後頭下筋群が大きく影響していると判明しました。
首から肩にかけての筋肉は、上層・中層・下層の3層で構成されています。これまで首こりは、肩こりと同じように「僧帽筋」や「肩甲挙筋」など、表面の筋肉を緩めれば解消する、という意見が一般的でした。そのため、上層・中層の筋肉をメインとしたストレッチが多く紹介されており、下層にある「後頭下筋群」にアプローチするストレッチがあまり広まっていなかったのです。
しかし研究が進み、首の深部に位置し頭を支える役割を担う「後頭下筋群」が単独で首こりを引き起こす、という研究結果が新たに発表されました。そして現在では『首こりを解消するには後頭下筋群のストレッチが効果的』という意見が主流になりつつあります。
ただし、ここで注意してほしいのが、後頭下筋群だけでなく周辺の筋肉も合わせて、広範囲にストレッチすることも大切だということです。
首から肩、背中(肩甲骨)、胸と、首周辺の筋肉は連動しています。一部の筋肉だけほぐしても、周辺の筋肉が緊張したままだと、取り除いたはずのこりが時間の経過とともにまた蓄積してきます。
つまり、首こりの原因である後頭下筋群を中心に、首周辺の筋肉のストレッチを加えることで、首こりの根本的な解消が期待できます。
《首の筋肉の図解》
【上層】僧帽筋(そうぼうきん)
【中層】頭半棘筋(とうはんきょくきん)、頭頸板状筋(とうけいばんじょうきん)、肩甲挙筋(けんこうきょきん)
※上層・中層の筋肉は首こりや肩こりに影響します
【下層】後頭下筋群…上頭斜筋(じょうとうしゃきん)、下頭斜筋(かとうしゃきん)、大後頭直筋(だいこうとうちょっきん)、小後頭直筋(しょうこうとうちょっきん)の左右8つの筋肉で構成された筋肉群。
※下層の筋肉は首こりに大きく影響します
参考:テレビで大きな反響を呼んだ”こり”解消の簡単セルフケアを紹介 日本人を襲う「肩こり」と「首こり」のメカニズム
2.セットでやると効果アップ!首こり解消ストレッチ2選
首こりに効果的なストレッチを2つ紹介します。1つ目は首周辺の筋肉、2つ目は首以外の筋肉のストレッチとなっています。両方おこなうと効果が増すので、ぜひセットで実践してみてください。
2-1. これが重要!後頭下筋群など首周辺のストレッチ
まずは後頭下筋群を中心とした、首周辺のストレッチです。
動画内では「オフィスワーク中などに座ったままできる」と紹介されていますが、姿勢に気を付ければ立った状態でも簡単におこなえます。
【手順】 ①後頭下筋群のストレッチの準備 まずは椅子に座り、背中を丸めず背筋を伸ばした状態でスタンバイ。
②後頭部の柔らかい部分を探す 両手の中指と薬指を使って、後頭部の髪の生え際にある窪み(硬い骨のすぐ下の柔らかくなっている部分)を探す。 目安は、耳から指3本程度斜め後ろ。
③首を左右に揺らす 2本の指を外側から中央に向かって窪みに押し当てて固定する。そのまま顔を上に向けた状態で、首を左右に軽く揺らす(10秒ほど)。このとき、指は固定したまま動かさず、目線は天井を向くように意識する。 ※首の前の筋肉が張り、後ろの筋肉が緩んだ状態にする
④後頭部をほぐす 次に、中指と薬指で円を描くように後頭部の窪みをグリグリとほぐす(10秒ほど)。
⑤僧帽筋など上層・中層の筋肉のストレッチの準備 背中を丸めず、背筋を伸ばして椅子に座る。顎を少し引き、頭に両手を乗せて手を組む。
⑥両手を使って頭を押し下げる 手の重みを利用して、後頭部をやや下に押し下げる。そのまま10~20秒間キープする。
【ポイント】 ・上を向いた際に首に強い痛みを感じるときは、無理にストレッチをおこなわない ・仕事の合間におこなう場合は、40分~1時間に1回を目安とする ・両足を開いておこなうと、骨盤が安定してストレッチしやすくなる |
2-2. 広範囲を伸ばして効果アップ!首以外のストレッチ
続いては、首とつながっている肩甲骨・背中・胸などの筋肉のストレッチです。
2-1.で紹介したストレッチと合わせておこなうことで、首こりの根本的な改善が期待できます。
【手順】 ①ラットプルダウン(ガッツポーズで肩甲骨はがし) まず、立った状態で背筋を伸ばして胸を張り、両腕を上に伸ばす。このとき、手のひらを外側に向け、手の甲を合わせるようにする。そのままガッツポーズをするように、外側に円を描くように両腕を下ろしていき、肩甲骨を背中の中央に寄せて脇をギュッと締める。10回を3セット。
②シュラッグ(肩の上下運動) 足を腰幅に開き、両腕を体の脇に置いてスタンバイ。両肩をグッと引き上げて1秒キープし、力を抜いてフッと落とす。このとき、首をすくめるように力を入れるのではなく、肩甲骨を上下させるよう意識する。10回を3セット。
③ベントオーバーローイング(ガッツポーズで上体起こし) 足を腰幅に開き、骨盤から下はそのままで、上半身だけを前に倒す。床と平行になるくらいが目安。 そのまま手のひらを外側に向け、両腕を真下にダランと伸ばして、肩甲骨を外側に広げる。胸を張りながらガッツポーズを取り、上体を腰よりやや高くなるまで起こす。ガッツポーズをとりながら両腕を背中側に回し、肩甲骨を中央に寄せた状態で1秒キープする。10回を3セット。
【ポイント】 ・筋肉を鍛えたいときは、シュラッグやベントオーバーローイングをするときにダンベルや500mlのペットボトルを両腕に持っておこなうと負荷が増す ・ベントオーバーローリングの際に腰が痛い場合は、椅子に座っておこなう |
3.首のストレッチをする際の注意点
首は神経が集中しており、とてもデリケートな部分です。首のストレッチをおこなうときは、以下のことに注意してください。
3-1.痛みがあるときはストレッチを避ける
ストレッチをおこなう前に首に強い痛みや違和感を覚えたら、ストレッチ全般を避けて医師に相談するようにしてください。
強烈な痛み、首を左右上下に動かせないような違和感は、頚椎椎間板ヘルニアや寝違えを起こしている可能性があり、病院での診察が必要なケースもあります。
そのため、もし強い痛みや違和感がある場合は自己判断でストレッチせず、首をなるべく無理に動かさないようにして少し様子を見つつ、症状が続くようなら医師に相談しましょう。首以外をメインとしたストレッチでも、首に負担を掛けるおそれがあるので、要注意です。
3-2.無理して筋肉を伸ばすのはNG
ストレッチ中に無理に筋肉を伸ばすのはNGです。首はもともと可動域の狭い部位で、無理に伸ばすと筋肉が強張ってしまい、逆に負担をかけてしまいます。また、神経が圧迫されて痛みが出るおそれもあります。
目安としては「痛気持ち良い」程度までにとどめ、「痛い」と感じるほど筋肉を無理やり伸ばすのは避けましょう。
4.そもそも首こりの原因は?肩こりとどう違う?
1章で軽く説明しましたが、肩こりとの違いを含め、首こりについて詳しく解説していきます。
4-1.原因は「スマホやPC使用時の姿勢」「眼精疲労」「冷え」「ストレス」「合わない枕」
首こりと肩こりの原因はほぼ同じなので、この2つはよく混同されがちですが、どこの筋肉が凝り固まるかで区別できます。
肩こりは、スマホやパソコンを長時間使用するときの姿勢の乱れのほか、運動不足や冷え、ストレスなどによる、主に肩周辺の筋肉疲労(筋肉の緊張状態が続くこと)が原因です。
一方で首こりは、スマホやパソコンを長時間使用するときの姿勢の乱れ、眼精疲労、冷え、ストレス、高さが合わない枕の使用などによって、主に首周辺の筋肉が緊張することで起こります。
こりや痛みが発生するメカニズムは以下の通りです。
さまざまな要因で筋肉疲労(筋肉の緊張)が起こる ↓ 血管が圧迫されて血液の流れが悪くなる ↓ 栄養素や酸素が行き渡らなくなり、疲労物質が蓄積 ↓ 筋肉が硬直し筋肉同士の癒着が起こる(こり) ↓ 硬直した筋肉が神経を圧迫(痛み) ↓ 神経から大脳に刺激が送られて首周辺の痛みを感知 ↓ 交感神経が優位になり、さらに筋肉や血管が収縮する ↓ 筋肉疲労(筋肉の緊張)が起こる |
このように首こりが発生するメカニズムを辿ると、筋肉の緊張が発端になっているとわかります。筋肉の緊張を引き起こしている原因は日常的な習慣にあり、スマホやパソコンを長時間使用するときの姿勢の乱れ、眼精疲労、冷え、ストレス、高さが合わない枕の使用などが挙げられます。
6~8kgもある頭を通常は背骨が支えますが、猫背や巻き肩で作業をしていると、背骨が頭の体重を支えられず首に大きな負担が掛かります。眼精疲労は目の周辺の筋肉の緊張が首や肩にも伝わり、こりを引き起こします。
同じように、冷えによる血行不良、ストレスによる自律神経の乱れ、高さの合わない枕の使用も、筋肉の緊張を引き起こし、首こりが発生します。
4-2. 首こりが悪化すると肩こりよりも神経症状が出やすい
首こりと肩こりを比較したときに最も異なるのは、首こりは症状が悪化すると自律神経系に大きな影響を及ぼす点です。
肩周辺と比べ、首周辺には多くの神経が集中しています。そのため、筋肉の緊張によって周りの交感神経・副交感神経が圧迫されることで、各臓器のコントロールが効かなくなり、神経にまつわる不調を発症しやすいのです。
例としては、神経系のピリッとした痛みをはじめ、めまいや吐き気、イライラ、頭痛、不眠、食欲不振、倦怠感などから、自律神経失調症、うつなどにも影響することが過去の研究で明らかになっています。
首は肩よりも神経が密集していてデリケートな部位のため、首こりが悪化すると神経系の症状が出るケースも。神経症状が出ている場合は、肩こりではなくまず首こりを疑いましょう。
5.習慣化が大切!首こりを起こさないための予防法
首こりを慢性化させないためには、日々の予防が大切です。生活のなかで心掛けるべきポイントを5つ紹介します。
5-1.スマホやPCを見るときの姿勢に注意
まずは、スマートフォンやパソコンを見るときの姿勢に注意すること。猫背や巻き型など背中を丸めた姿勢を長時間取り続けると、前に出た頭を支えるために首に大きな負荷が掛かってしまい、首が凝ってしまいます。
できるだけ首や肩(肩甲骨)が前に出ないようにして、首への負担が少ない姿勢を取るように心がけましょう。
5-2.目を酷使しない
特にデスクワークの方は、長時間のパソコンの使用で眼精疲労にならないように気を付けてください。目を酷使して周辺の筋肉が凝り固まってしまうと、首をはじめ全身の筋肉にも緊張が伝わり、こりが発生してしまいます。
1時間の作業ごとに目を休める、目薬を差すなどの対策をして、目の負担を減らしましょう。
5-3.首周りを温める
首周辺を温めて血流を良くすると、首こりの予防だけでなく緩和にもつながります。体が冷えると肩周りに不自然な力が入り、筋肉の緊張(こり)を引き起こすからです。また、冷えによる血行不良もこりの原因になります。
冬場はマフラーを巻く、湯船に浸かる、などの工夫で首周辺を冷やさないようにしましょう。また、夏場でも職場や自宅の冷房が効きすぎて実は首周りが冷えてしまっていることがあります。そういった場合は薄手のストールなどで首元をカバーするといいでしょう。
5-4.ストレスを溜め込まない
首こりを予防するには、ストレスの発散も必要です。ちょっとしたストレスでも毎日少しずつ蓄積していくと、自律神経が乱れがちになってしまいます。そして筋肉の緊張状態が続くことによって、首が凝ってしまうのです。
ストレスによる苛立ちを日常的に感じる方は要注意。運動や睡眠、友人への相談など自分に合った方法でストレスを解消するようにしましょう。
5-5.自分に合った枕を使う
自分の体に合った高さの枕を使用することも、首こりの予防につながります。高さの合わない枕を使い続けていると、首や肩に負担が掛かって筋肉の緊張状態が続き、こりが発生します。
枕の選び方については下記の記事に詳しくまとめていますので、気になる方はぜひチェックしてください。
関連記事6.まとめ
首こりを解消するには、首の下層にある筋肉「後頭下筋群」のストレッチが効果的です。さらに首の表面や肩甲骨、背中、胸まで、首と連動している筋肉を広範囲でストレッチすることで、首こりを解消できます。
なお、首こりはさまざまな要因により筋肉が緊張することで起こります。
具体的には、スマホやPC使用時の姿勢の悪さ、眼精疲労、冷え、ストレス、高さが合わない枕の使用などです。
首こりを放置すると神経系の症状が出るおそれがあるため、慢性化しないよう日々予防することが大切です。
ゴリゴリッとした首のこりから解放されてスッキリしたい方は、ぜひストレッチや日常的な予防に取り組んでみてください。
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