当たり前のように使っている「便秘」という言葉、皆さんは本当に正しく理解しているでしょうか? 便秘の定義や便秘薬との付き合い方、そして自分の腸がわかる「腸タイプ診断」について、小野咲さんにお聞きしました。
■コラムテーマ
『人生を変える腸活』
国立成育医療研究センターPICU(小児集中治療室)勤務を経て、小林メディカルクリニック東京の便秘外来で腸について集中的に学ぶ。著書に『下がらないカラダ』(サンマーク出版)、『腸が変われば、人生変わる 美腸の教科書』(主婦の友社)がある。
【第3回】意外に知らない便秘の真実について
親が便秘体質なら、子どもにも遺伝する?
編集部
何となく使いがちな「便秘」という言葉ですが、定義はあるのでしょうか?
小野
「便が3日以上出ない」「毎日出ていても1回の量が35g以下」「腹部の違和感や残便感がある」という3つの条件にひとつでも当てはまれば便秘の可能性があると考えています。
編集部
35gというのは、どのくらいですか?
小野
おおよそピンポン玉くらいの大きさです。大腸がんなどの病気が背景にある「器質性便秘」であれば専門科での治療が必須ですが、腸の働きの異常で起こる「機能性便秘」であれば、生活習慣による改善が可能なことが多いと思います。
編集部
そもそも自分がどんな頻度でどんな量の排便ができているか、しっかりと把握する必要がありますね。
小野
実は、50年前の日本人は1日3回以上のペースで排便していたという記録があるんです。現代人と比べて、食物繊維の豊富な穀物をたくさん摂取していて、日常的に身体を動かす機会も多かったですからね。
編集部
1日に3回ですか! そこまで快便な人は、現代ではほとんどいないでしょうね。
小野
腸内環境を改善すれば不可能ではありませんよ。実際、1日に2~3回の排便がある人も少なくないです。口から入った食べ物は、おおよそ24~48時間かけて便として排出されます。1日に3回食事を摂っていれば、排便も3回あるというのは原理的には自然なことです。
編集部
便秘は遺伝による体質も関係してくるのでしょうか?
小野
腸の構造という意味では、遺伝の影響もゼロではないかもしれません。しかし、生活習慣で改善できる要素が8割ともいわれていて、後天的な影響のほうがずっと大きいと考えていいと思います。
編集部
「うちは代々、便秘体質だから……」と、あきらめることはないんですね。
小野
ただし、出生直後の腸内環境は、お母さんのそれを引き継ぐとされています。生まれたときに便秘体質という赤ちゃんは、お母さんの腸内環境から影響を受けている可能性もありますね。
編集部
自分の子どもに「負の遺産」を残さないためにも、できれば妊娠前から腸内環境を改善していけるといいですね。
便秘薬を使うときに気をつけたい2つのこと
編集部
薬剤を飲まないと排便できないのは問題だということでしたが、便秘薬とはどのように付き合っていけばいいのでしょうか?
小野
一口に便秘薬といっても、種類はさまざまです。どうしても薬剤の力を借りたいときは、できるだけ効果がマイルドなものを選択すること、規定量を守って使用することが大切です。
編集部
マイルドな便秘薬とは、具体的にどんなものですか?
小野
食物繊維や寒天などが主成分の「膨張性下剤」や、酸化マグネシウムに代表される「塩類下剤」が挙げられます。便の量を増やしたり、便を軟らかくしたりすることで、自然に近い排便を促してくれます。逆に、無理矢理に腸を動かす「刺激性下剤」を常用すると、自然に便意を感じられなくなるおそれもあるので注意が必要です。
編集部
すでに刺激性下剤を日常的に使っている人はどうすればいいでしょうか?
小野
下剤を飲まない日を設け、少しずつ服用間隔を空けていくとともに、できるだけマイルドな便秘薬に変えるようにしましょう。どうしても強力な便秘薬が手放せない、使用量が増えてしまうということであれば、ぜひ便秘外来を受診してください。
編集部
便秘に効くお茶というのもありますが、薬剤よりは身体に優しいですか?
小野
残念ながら、そうとは限りません。センナ茶やキャンドルブッシュといった一部のお茶は、下剤成分を含んでいます。一般的な下剤と比べてマイルドというわけではなく、飲み続けると自力で便を出せなくなるおそれもあることを知っておきましょう。
編集部
コーヒーを飲んだりタバコを吸ったりすると便意がわく、わざと冷たいものを飲んで腸を刺激する、なんて話もよく聞きますが……。
小野
いずれも一時的な解消法にすぎず、腸が正常に働いているわけではありません。腸の本来の機能を回復させるためには、「〇〇をしないと便が出ない」という状態から抜け出すことが肝心です。
「腸活」の前に知っておきたい!あなたの腸はどのタイプ?
小野
“美腸”を目指すなら、自分の腸がどんなタイプか知った上で対策を立てるのが効果的です。次の1~6のチェックリストの中で最も多くのチェックが付いたものが、あなたの腸タイプです。
□ つい足を組みがち
□ 食べるとおへその上の部分が出る
□ 立っているとお腹が突き出た姿勢になる
□ 体幹の筋肉が少ない
⇒下半身が太りやすい「下がり腸」タイプ!
★水溶性食物繊維やミネラル豊富な食材をたくさん摂取しよう。
□ 呼吸が浅いと感じる
□ 背中を丸めると違和感や痛みがある
□ 手よりお腹のほうが冷たい
□ 腰やお尻の上が冷たい
□ 冷たいものが好き
⇒疲れやすく虚弱体質な「冷え腸」タイプ!
★食事は温かいものから口にし、冷たいものやアルコール、カフェインの摂取量を減らして。
□ デスクワークなどで座っていることが多い
□ 猫背になりがち
□ 身体をねじることが少ない
□ 塩辛い味付けが好き
⇒全身がむくみやすい「むくみ腸」タイプ!
★塩分や白砂糖を控え、水溶性食物繊維やカリウムを含む食べ物を多く摂取。お腹をねじる運動も取り入れてみよう。
□ トイレを我慢することが多い
□ 階段を上がることが少ない
□ ヒールのある靴をよく履く
□ 水分をこまめに摂らない
⇒中半身が太りやすい「詰まり腸」タイプ!
★食物繊維が不溶性に偏らないよう注意しつつ、水分を意識的に摂取しよう。
□ お腹が張りやすい
□ おならを我慢することが多い
□ 炭酸水が好き
□ 夜遅い食事が多い
⇒上半身が太りやすい「ガス腸」タイプ!
★早食いをやめて、発酵食品や乳製品をたくさん摂取しよう。
□ リラックスする時間が少ない
□ 眠りが浅い/寝起きがスッキリしない
□ 不規則な生活を送っている
□ 口で呼吸していることが多い
⇒自律神経が乱れやすい「ストレス腸」タイプ!
★食事の偏りを正し、オリゴ糖や食物繊維の摂取で腸をいたわろう。
編集部
私は「下がり腸」タイプで3つ、「冷え腸」タイプと「ストレス腸」タイプで4つずつ当てはまりました。
小野
3つ以上当てはまるタイプについては、それぞれ対策が必要ですよ。いよいよ次回から、“美腸”になるための具体的な方法に入っていきましょう!
◆◆お話を伺った人◆◆
大学卒業後、2007年より国立成育医療研究センターPICU(小児集中治療室)勤務。その後、小林メディカルクリニック東京の便秘外来に移り、腸について集中的に学ぶ。著書に『下がらないカラダ』(サンマーク出版)、『腸が変われば、人生変わる 美腸の教科書』(主婦の友社)がある。