つい飲みすぎてしまった翌日の地獄のような二日酔いは、何度経験してもつらいもの。それでも仕事や家事を休めない人のために、効果的な二日酔い対策を原田文植医師が伝授します。
■コラムテーマ
『言葉は身体のコントローラー』
医師・医学博士原田文植先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。
自己診断だが、「天才型慢性アルコール依存症」の疑いがある。
断酒4ヶ月、一滴も飲んでいない…
以前、医者の友人の結婚式に参加した。豪華客船での結婚式。受付で席次表とともに包装された粉薬を渡された。
「五苓散」と書かれたその薬は、「酔い止め」として有名な薬だ。
船酔い対策?もちろん、それもある。しかし、医師である自分にはすぐにわかった。
五苓散は二日酔いにバツグンに効く!
酒で大いに盛り上がってくれ、という新郎新婦の意図が…
五苓散は、このコラムにもちょくちょく登場する。
東洋医学的には「水毒」に効く、とされる。水毒症状は、頭痛、めまい、吐き気、むくみ、下痢…
つまり、「二日酔い」とは典型的な「水毒」なのだ。
五苓散を、飲酒する前後と翌朝に飲めば、二日酔い対策として最強だ。
ほとんど副作用がなく、安全に使える薬なので、医師の処方なしでも買える。
酒飲みなら二日酔いを経験したことはあるはずだ。
「もう二度と酒なんか飲むもんか!」
そういう切ない自己嫌悪に苛まれる。まあ、すぐに喉元過ぎるのだが…
日本は文化的に飲酒に非常におおらかだ。
酔っ払って騒いでも、「酒の席だから」と見逃されることもある。
外国では酔っ払って騒げば、精神病扱いされてしまう。
研修医の頃のエピソードだ。
ベテラン看護師が、急性アルコール中毒で搬送された大学生の醜態を写真で撮っていた。
点滴されている上、オムツまで着用されている情けない姿…
看護師は「明日本人に見せて反省させる」と言っていた。
ホラー映画なみの怖さだ。
俗名である「アルコール中毒」には急性と慢性の二種類ある。
大学生の新歓コンパで新聞沙汰になる「急性」はときに死に至る。
対して、「慢性」は「アルコール依存症」のことだ。
飲酒習慣を長期間続ける。すると、飲酒していないときに震えがきたり、性格が陰鬱になったりする。
そこで酒の力を借りる。人格が変わり、自信を取り戻す。
休みの日に、朝から飲むようになる。仕事をトチったり、人間関係の失敗を契機に、連続飲酒が始まる。
ここまで来ると、入院による治療が必要だ。周囲も促すようになる。
他に、「天才型」と呼ばれるアルコール依存症が存在する。
一定期間止めることができるが、飲まないと決めていた日でも飲んでしまう、ブラックアウト(記憶をなくすこと)することがある、という点が特徴だ。
このタイプは自分でコントロールできると思っているから自覚しにくいし、周囲にも気づかれにくい。
飲み始めると止まらない、つまり「酒が酒を呼ぶ」飲み方をしてしまう。
このタイプの治療は、「断酒」しかない。一滴でも飲めば元に戻ってしまう。
日本のアルコール依存症患者数は230万人という試算もある。
精神的・肉体的に悪影響なだけではなく、犯罪の原因にもなることを考えると、喫煙より深刻と言えなくもない。
冒頭に書いておきながら言うのも何だが、二日酔い対策は単なる付け焼き刃だ。
飲酒の怖さは習慣性と、それによるさまざまな機会損失、それに尽きる。
ほどほどに付き合うことができるかどうか自分で見極め、できないなら勇気ある撤退を。
いつでも一緒に止めてあげます。
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◆執筆◆
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。