1日働いて体も頭も疲れているのに、いざベッドに入るとなかなか寝付けないときってありますよね。
そうしてムダに夜更かしすると、睡眠の質が低下してしまいます。翌朝起きたときに体の疲れが抜けていなかったり、日中眠くて頭がボーっとしたりなど、起床後の生活や仕事にも影響が出ることも。
そこで今回は、睡眠の質をグッと高めてくれる、寝る前に最適なストレッチを紹介します。
また、就寝前のストレッチの効果をさらに高めるコツや注意点、そもそも寝る前のストレッチにはどのような効果があるのかについても解説していきます。
寝付きが悪い、眠りが浅い、朝起きても疲れが抜けず眠いなど、睡眠に何らかの不満を抱えている方は、ぜひ今回紹介するストレッチを試してみてください。
1.疲れを取ってぐっすり眠りたい…寝る前に最適な5ステップストレッチ
「今日はぐっすり眠って明日の朝までに疲労を回復させたい」
そんなときは、ベッドに入ってリラックスしながら、寝る前にストレッチをおこなうのがオススメです。
この5ステップのストレッチは、普段の生活で特に疲労が溜まりやすく、血行不良を起こしやすい<お尻・腰・足首・肩甲骨・股関節・ふくらはぎ>を仰向け、座位の順で伸ばしていくものです。体の中心から末端まで、全身の血液の巡りを良くすることで、疲労物質を取り除きながら、ストレッチ後の深部体温(※)を大きく下げて睡眠の質をグッと高めます。
※深部体温…内臓のある体内部の温度。運動や入浴などで一度上昇したのち、下降する際に眠気が生じる。
1-1.<ステップ1>お尻~肩の側面伸ばし
はじめに、仰向けでお尻から腰、脇腹、背中、肩の側面を、左右片方ずつ伸ばしていきます。
【手順】
①仰向けの体勢でスタンバイ
仰向けになり、左足だけ膝を軽く曲げて床に立て、右足は床につけて真っ直ぐ伸ばします。左手は横に伸ばし、右手で左足の膝を持ちます。
②お尻~肩の側面伸ばし(15秒×左右)
右手を使って左足を手前にグッと引っ張るようにして、体の右側に倒します。反対に顔から腰までは左を向き、上半身と下半身で体を逆にひねるようにして、お尻から腰、脇腹、背中、肩の側面をグーッと伸ばします。
この状態で15秒間キープ。終わったら反対側も同様におこないます。
【ポイント】
・お尻や腰、脇腹、背中、肩がグーッと伸びている感覚があればOK
1-2.<ステップ2>足首の前後運動
ステップ2では、仰向けの状態で足首を前後に動かします。
このステップは特に重要です。体の末端から熱を放出させることで、深部体温がスムーズに低下し、寝入りが良くなるとともに朝まで熟睡しやすくなります。
【手順】
①足首の前後運動(30~50秒)
仰向けに寝た状態で、両手・両足を伸ばし、できる限り力を抜きます。手は自然な位置で、手のひらを天井側(上)、手の甲を床側(下)に向けます。
次にふくらはぎと足首に力を入れ、左右のつま先をグッと手前に引っ張ります。3~5秒数えたら、力を抜いて元の状態に戻ります。
そして今度は、両足の小指を内側に丸めるように力を入れ、左右のつま先をグッと奥に倒します。3~5秒数えたら、力を抜いて元の状態に戻ります。
これを30~50秒間繰り返します。
1-3.<ステップ3>肩甲骨回し
ステップ3では、デスクワークなどで特に血行不良に陥りやすい肩甲骨周辺を伸ばします。
ステップ2に引き続き、最初は寝た状態でストレッチをおこないます。途中で状態を起こし、あぐらの体勢に切り替えます。
【手順】
①横向きで肩甲骨回し(10秒×左右)
右向きで寝た状態から、右腕を曲げて頭の下に入れ、腕枕をします。
左腕も肘を曲げたら、肘で大きく円を描くように、ゆっくりと前から後ろに肩を回します。これを10秒間繰り返します。
終わったら今度は左向きになり、右腕の肩甲骨もグルグルと10秒間回します。
②あぐらで両腕を上に伸ばす(18~30秒)
起き上がり、床にあぐらになって座ります。
両手を伸ばしたまま胸の前で組み、3~5秒かけて鼻から息を吸いながら、背伸びをするように頭の真上までグーッと引き上げます。次に、3~5秒かけて口から息を吐きながら、両手をほどきゆっくりと腕を体の横に下げていきます。
これを3回繰り返します。
③あぐらで両腕を後ろに伸ばす(18~30秒)
あぐらの体勢のまま、3~5秒かけて鼻から息を吸いながら、両手を背中のすぐ後ろで組みます。肘は曲げた状態です。
次に口から息を吐き出しながら、肘を伸ばしつつ肩甲骨を中央に寄せるようにして、両手をグーッと後ろまで伸ばします。
これを3回繰り返します。
【ポイント】
・①の工程はゆっくりでいいので、とにかく肩を左右上下に大きく動かすよう心がける
・①の工程は座った状態でもOK
1-4.<ステップ4>あぐらで股関節ほぐし
ステップ3であぐらの体勢になったら、そのままの流れで股関節まわりをストレッチしましょう。
体の中心に位置する股関節周辺には、約20もの筋肉が密集しているのですが、なかなか動かす機会がなく血行が滞りやすい場所です。
【手順】
①あぐらの体勢でスタンバイ
床にあぐらになって座った状態で、両手で足先を掴み、左右の足の裏をぴったりくっつけます。
胸を張って背筋を伸ばし、顔は真正面を向きましょう。そして3~5秒かけて鼻から息をゆっくりと吸います。
②あぐらで前屈(20~30秒)
3~5秒かけて口から息を吐き出しながら、上半身を前に倒していきます。無理のないところまで伸ばしたら、そのままの体勢で20~30秒間キープします。その間、深呼吸を繰り返します。
体が硬くて痛い方は20秒ほどで構いません。問題なければ30秒じっくりと伸ばしましょう。
【ポイント】
・頭から腰までを一直線にし、背中が丸まらないように注意する
・体を伸ばしている間は徐々に呼吸を深くしていく(3秒、4秒、5秒と)
・どうしても背中が丸まってしまう場合や、肩が疲れる場合は、両手を足から離して上半身と一緒に前にグーッと伸ばして床に付けると楽になることも
1-5.<ステップ5>ふくらはぎを伸ばす前屈
ステップ5では、下半身から上半身へ血液を循環させるポンプ機能を持つ、ふくらはぎをストレッチします。
【手順】
①あぐらから右足を前に伸ばしてスタンバイ
ステップ4のあぐらの体勢から、右足だけを前に伸ばします。左足は内側に曲げたまま、右足の太ももあたりに足裏をくっつけるイメージです。両手は体の横、床につけます。3~5秒かけて鼻から息を吸います。
②ふくらはぎを伸ばす(15秒×左右)
3~5秒かけて口から息を吐きながら、ゆっくりと上半身を前に倒していきます。両手も上半身と一緒に自然に前に出します。
無理のないところまで伸ばしたら、そのまま15秒間キープします。
【ポイント】
・背中が丸まらないように注意する
・体を伸ばしている間は徐々に呼吸を深くしていく(3秒、4秒、5秒と)
2.もっと深くリラックスしたい…寝る前のストレッチをより効果的にするコツ
就寝前のストレッチは“脱力”がポイント。
以下のように体の緊張を解き、脳をリラックスさせる工夫を取り入れることで、よりストレッチの効果が高まります。
2-1.就寝時刻の90分前に入浴する
まずストレッチの前に全身浴をしてください。
湯船にしっかりと全身浸かることで、浮力・温熱作用により筋肉のコリがほぐれ、その後ストレッチをする際に体が伸びやすくなります。
そしてお風呂から出て90分後に就寝する、という意識でストレッチをしましょう。その後の疲労回復や睡眠の質を高める効果を考慮すると、約40℃のお湯に10~15分浸かった場合、約90分後に「深い眠りに就ける体温」になるからです。
実は、入浴の温熱作用には、ストレッチと同じように人間の深部体温を上げ、寝入りを良くする効果があります。人間の体は深部体温が一度上昇し、低下していく過程で徐々に眠くなるようになっているのです。
2-2.ストレッチは就寝15分前までに終わらせる
ストレッチは遅くとも就寝時刻の15分前には終えましょう。
お風呂から出ると、時間の経過とともに徐々に深部体温が下がっていきます。下がりきった後にストレッチをすると、逆に体が活動的になり、目が冴えてしまう可能性も少なからずあります。
ちなみに「入浴直後がストレッチするのに最も効果的なタイミング」と言いますが、たとえ入浴後から多少時間が経過し、就寝直前にストレッチをおこなったとしても、ストレッチの「睡眠の質を上げる効果」が弱まるわけではありません。
歯磨きや明日の準備などを済ませて照明を落とし、寝る準備を終えて完全にリラックスした状態でストレッチができるからです。このように心身がリラックスした状態でのストレッチは、寝付きを良くする効果や熟睡効果を底上げしてくれます。
2-3.照明や音楽、アロマで五感をリラックス
照明を落とす、ヒーリングミュージックを流す、アロマオイルを焚く、といった五感を癒す環境づくりも、寝る前のストレッチの効果を高める方法のひとつです。
蛍光灯のまぶしい光や雑音など、日中は外から受ける刺激で脳はずっと覚醒状態を強いられています。就寝前の環境を整え、脳をリラックスモードに切り替えてあげましょう。
落ち着いた環境でストレッチをおこなうと自然に呼吸が深くなり、体から余計な力が抜けて筋肉を伸ばしやすくなりますよ。
それに、やさしいオレンジ色の灯りやヒーリングミュージック、自分が心地良いと感じる香りに包まれた空間こそが、実は最も入眠しやすい環境なのです。
2-4.ストレッチ中は徐々に呼吸を深めていく
ストレッチ中は、体を伸ばす工程に合わせて徐々に呼吸を深くしていきましょう。体から無駄な力を抜いてリラックスし、最初は浅い部分からじわじわと、次第に筋肉の深い部分までグーッとしっかり伸ばすためです。
ストレッチ中の呼吸は、3秒~5秒かけて鼻から息を吸い、同じように3秒~5秒かけて口から吐くのが基本です。
例えば、最初は3秒かけて鼻から息を吸いながらスタンバイし、同じく3秒かけて口から息を吐きながら力を抜いて、グーッと体を伸ばします。次は4秒×4秒、その次は5秒×5秒、と徐々に呼吸を長くします。
このように少しずつ呼吸を深くしていくことで、浅い部分だけでなく深い部分の筋肉のコリまで、じっくりと伸ばすことができます。
2-5.ストレッチの手順を覚えてスマホは見ないように
はじめの何回かは難しいと思いますが、ゆくゆくはストレッチの手順を覚え、寝る前にはスマートフォンの画面上で手順を確認しないよう心がけましょう。
スマートフォンやパソコンから出るブルーライトは太陽光(紫外線)に近い特徴があり、目の奥の網膜まで強い刺激を与えてしまいます。そして強い光を浴びたせいで脳が「まだ昼間だ」と認識し、体内時計を調整して眠気を誘う「メラトニン」というホルモンの分泌を抑制してしまうのです(ちなみに最近スマートフォンの「夜間モード」に搭載されているイエローライトも、ブルーライトと同じく睡眠を阻害するので、あまり意味がありません)。
これでは脳が覚醒状態になって目が冴えてしまい、せっかくストレッチをしても効果がありません。
そのため、寝る前にストレッチをしてもしなくても、どのみちスマートフォンの操作は控えるべきです。どうしてもストレッチの手順を覚えられない場合は、スマートフォンの画面から出る光の強さをできるだけ弱めるのが有効です。
3.就寝前のストレッチにおける注意点
就寝前にストレッチをおこなう際、注意すべき2つのポイントをお伝えします。
3-1. 激しい動きは睡眠の妨げに
寝る直前のストレッチで、筋トレやエクササイズのように汗をかくほど激しく体を動かすのはNGです。
汗が吹き出るほどの運動は体温を思いきり上昇させて心拍数を上げるため、体が興奮して覚醒状態になってしまいます。すると目が覚めてしまい、逆に睡眠の妨げになります。
就寝前のストレッチは、筋肉をほぐしながら呼吸を整え、心身をリラックスさせることが目的です。
本記事で紹介しているような、体を大きく動かさずに筋肉をじっくりと伸ばすストレッチが睡眠の質を高めるのに最も効果的です。
3-2. 程良い痛気持ち良さが目安、無理に体を伸ばさない
就寝前のストレッチでは、自分の中で「痛気持ちいい」と感じる程度に体を伸ばしましょう。動きに反動をつけて無理やり筋肉を伸ばすと、逆に筋肉が緊張し、ストレッチの効果が半減してしまいます。
また人それぞれ関節の可動域には限界があるので、息を止めて無理をしながら体を伸ばすと、筋肉や関節を痛める原因にもなります。
寝る前にストレッチをする際は自然な呼吸を心がけ、あくまで痛気持ちいいと感じる範囲で体を伸ばすようにしましょう。
4.メリットだらけ!寝る前のストレッチで得られる効果
寝る前のストレッチは、寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝にスッキリと目覚められない、そんなお悩みを持つ方に最適です。
それは以下で紹介する3つの効果が組み合わさって、総合的に睡眠の質が高まるから。
それでは、寝る前のストレッチがもたらす3つの効果について、ひとつずつ詳しく解説していきます。
4-1.寝付きを良くする
まず就寝前のストレッチには、寝付きを良くする効果が期待できます。
ストレッチで軽く体を動かすと、深部体温(内臓のある体内部の温度)が少しだけ上がり、その後時間が経って深部体温がグッと低下したときに、眠気が強くなります。実は人間の体は深部体温が一度上昇し、低下するにつれて休眠モードに移行していくようになっています。ぬるま湯に浸かって体がポカポカと温まったあと、少し時間が経ったら眠くなる現象と同じです。
また、ストレッチ中の深い呼吸にも入眠作用があります。
深呼吸をしながら心地良く筋肉を伸ばしているうちに、自律神経のひとつ、副交感神経が優位になるからです。副交感神経は心拍数を落とし、緊張を解いて心を落ち着かせる働きがあり、心と体を休眠モードに切り替えてくれます。
4-2.朝までぐっすりと眠れる
寝る前のストレッチには熟睡効果も見込めます。
加齢や病気が原因のケースもありますが、そもそも夜中に何度も目が覚めてしまって朝まで熟睡できないのは、ストレスによって脳が覚醒しているか、ノンレム睡眠(深い睡眠)の時間が短いせいで、眠りが浅いことも関係しています。
ここで少し、レム睡眠とノンレム睡眠について説明します。人間は一晩のうちに、レム睡眠(浅い睡眠・体は眠っているけど脳は働いている状態)とノンレム睡眠(深い睡眠・体も脳も休息している状態)を、90~120分周期で4~5回繰り返します。
またノンレム睡眠は、眠りの深さによってステージ1~4(浅~深)の4段階に分かれます。一般的に就寝直後の約90分(=第1サイクル)に最も深い眠り(ステージ3~4)に到達し、そこから起床に向かって徐々に睡眠が浅くなっていきます。
実はこの「入眠直後の90分間でどれだけ深いノンレム睡眠に潜れるか」が睡眠の質を左右し、朝まで熟睡できるかどうかに関わります。
ここでストレッチが関係してきます。就寝前のストレッチは、最初のノンレム睡眠をより深いものにしてくれるのです。
4-1でも説明したとおり、寝る前のストレッチには深部体温を調整して心身をリラックスさせる作用があります。脳の覚醒も抑えられ心身が完全に休息モードに切り替わっているため、入眠直後にスッとノンレム睡眠に入れるわけです。そしていつもより深い眠りに就くことができ、睡眠が浅いせいで夜中に目が覚めることも減り、朝までぐっすりと熟睡しやすくなるわけです。
4-3.翌朝の目覚めがスッキリする
就寝前にストレッチをすることで、翌朝の目覚めもスッキリと爽快になります。
ストレッチと、朝まで熟睡できるような質の良い睡眠によって自律神経のバランスが整ううえ、ノンレム睡眠(体と脳を同時に休ませる深い睡眠)の時間が増え、体だけでなく脳の疲労もリセットされるからです。
またストレッチの疲労回復作用により、その日溜まった疲れを翌日に残さずに済むので、朝起きたときに体が重い、だるいといった感覚も減ります。
寝る前のタイミングでなくとも、元々ストレッチには筋肉をほぐして柔軟性を高め、血流を高める作用があります。今まで凝り固まっていた筋肉部分にも血が巡りやすくなるので、疲労物質や老廃物、水分がうまく流れて、ストレッチをした後には疲労やコリ、むくみが楽になります。
まとめると、寝る前のストレッチで睡眠の質が上がり、さらに筋肉のコリが取れて血流が良くなることで、脳と体の疲れが夜のうちにリセットされ、「まだ寝足りない」「日中に眠くなる」「朝起きたときに体が重くてだるい」といった悩みが解消されます。
5.まとめ
寝る前に最適な、5ステップのストレッチを紹介しました。
就寝前のストレッチには、寝付きが良くなる、朝まで熟睡できる、翌朝の目覚めがスッキリするなど、睡眠の質を高める効果が期待できます。
就寝前のストレッチをより効果的にするには、
- 就寝時刻の90分前に入浴する
- ストレッチは就寝時刻の15分前には終わらせる
- 照明や音楽、アロマで五感をリラックス
- ストレッチ中は徐々に呼吸を深めていく
- ストレッチの手順を覚えてスマホは見ないように
以上5つがポイントになります。
息が上がるような激しい動きや、痛くなるまで無理に筋肉を伸ばすのは避けましょう。
心も体も脱力しリラックスした状態でストレッチするのが、何よりも睡眠の質を高めるコツです。
睡眠の質は、日々の生活の満足度に影響します。
これからの生活を豊かにするためにも、時間に余裕のあるときは寝る前にストレッチをしましょう。
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