デスクワーク中の猫背、介護施設や工場内で働いているときの中腰など、姿勢の歪みは無意識のうちに腰に大きな負担をかけています。長時間労働によって腰に疲れが溜まっていくと、痛みが出たりすることも。
実はこのような腰の痛みは、筋肉の緊張による血行不良が原因。セルフマッサージでしっかり筋肉を弛緩すれば痛みは改善できます。
本記事では、我慢できないほどじゃないけど気になる腰の痛みを緩和するマッサージ方法のほか、マッサージをする際の注意点を紹介します。さらには腰痛を予防する方法もお伝えしますので、ぜひ今日からセルフケアに取り組んでみてください!
※重大な内臓疾患が原因で腰痛が起こる可能性もあります。マッサージをおこなう前に病院での受診を推奨します。
※マッサージについて
本稿で言うマッサージは、資格などを持っていない施術者の行っているリラクゼーション行為も含んでおり、広義のマッサージとして表現しています。
1.自分でできる!腰痛を和らげるためのマッサージ
腰を自分でマッサージするのはとても難しいと思います。腰には筋肉がたくさんあってどこをマッサージすればいいのか分からないし、背中側の筋肉なんてうまく手が届きませんよね。
そこで今回は「自分で簡単にマッサージできる」をポイントに腰痛改善に効果的なマッサージを、2種類ご紹介します。
どちらも短時間で簡単にできる内容ですので、ぜひ両方試してみてください。
1-1.太ももと腰のマッサージ
最初に紹介するのは、太ももの筋肉を利用して大腰筋(だいようきん)をほぐすマッサージです。
なぜ大腰筋を緩ませる必要があるかというと、大腰筋が緊張して凝り固まってしまうと、筋肉が縮んで背骨が下に引っ張られ、腰に大きな圧力が掛かってしまうからです。
ただ、大腰筋はお腹の奥にあり、なかなかほぐしにくい筋肉です。
そこでこのマッサージでは、全身に張り巡らされた筋膜(筋肉を包む膜)のうち、太ももと腰の間の筋膜のつながりを利用して大腰筋をほぐします。太ももと腰は筋膜でつながっており、太ももの筋肉をほぐすことで腰の筋肉も緩ませやすくなります。
3ステップで簡単にできるため、ぜひ実践してみてください。
【手順】 ≪右側≫ ①大腰筋を探す。 ベッドや椅子などに座った状態で、右手を使い、腹筋のすぐ右側にある窪み(大腰筋)を探します。 右手の親指以外の4本指を窪みに当てたまま、体の外側から内側に向かってグッと力を入れ、大腰筋に指を押し込みましょう。 ②大腰筋と連動している太ももの筋肉を探す。 ①の状態のまま、今度は左手で右足の太ももを掴んで、少しずつ位置をずらしながら、押すと少し痛みを感じる、筋肉が硬くなっている部分を探してください。
③太ももの筋肉と大腰筋を連動させながら、大腰筋を緩ませる。 左手で太ももの硬い筋肉を掴んで左右にゆらゆらと揺らしながら、右手の4本指で大腰筋をやさしくほぐしましょう。
≪左側≫ ①~③を左に変えておこないます。
【ポイント】 ・大腰筋が緩みやすくなりため、ベッドや椅子に座った状態でマッサージをおこなう ・腹筋の外側にある窪み(大腰筋)がわからない場合は、骨盤から少し内側の窪みを探してそこをやさしく揉みほぐす |
1-2. お尻の筋肉と腰の硬い筋肉をほぐすマッサージ
続いては、お尻の筋肉と腰の硬い筋肉をほぐすマッサージです。
腰と一緒に、ヒップアップにも効果的なお尻の筋肉、大臀筋(だいでんきん)も緩めることが腰痛の緩和につながります。腰の筋肉は他の筋肉の影響を大きく受けており、腰の筋肉だけ緩めてもすぐに緊張状態に戻ってしまうため、腰の筋肉に繋がっている筋肉も一緒に緩めることが重要なのです。
大臀筋を緩めることで、腰や背中の筋肉がほぐしやすくなります。
こちらも3ステップで簡単にできるので、ぜひ1-1.と併せて実践してみてください。
【手順】 ≪右側≫ ①腰の凝り固まっている筋肉を探す。 左手を背中側に回して右側の腰を触り、痛みや張りを感じる場所を探してください。左手はその位置に置いておきましょう。
②お尻の凝り固まっている筋肉を探す。 右手で握りこぶしを作って右のお尻の筋肉を触り、ゴリッとした硬くなっている筋肉を探してください。
③腰とお尻の筋肉を連動させながら、両方の筋肉を緩ませる。 硬くなっているお尻の筋肉を、右手の握りこぶしで上下左右に揺らしたりグリグリとほぐしたりしながら、左手(親指以外の4本)で腰の筋肉をやさしく揺らして緩ませます。
≪左側≫ ①~③を左に変えておこなう
【ポイント】 ・握りこぶしを作ったら、あまり強く圧迫せずにやさしく押すようにする |
2.自分じゃ触りにくい…家族や恋人にしてもらう腰のマッサージ
続いては、自分では上手に揉みほぐせない方に向けた、家族や恋人にしてもらう腰のマッサージ方法です。
背中から腰、お尻の筋肉までほぐすことで、腰周辺の筋肉や関節の柔軟性を高めて、腰に掛かる負担を減らすことができます。
動画を参考にしながら、背中、腰、お尻の順番にマッサージをしてもらいましょう。
【手順】※マッサージする側の目線で記載しています ≪背中のマッサージ≫ ①多裂筋(たれつきん)を探す。 うつ伏せの状態になってもらい、背骨のすぐ両脇にある多裂筋を探してください。 ②多裂筋をもみほぐす。 多裂筋は上図のように、骨盤の上から肩まで縦に伸びています。下から上に向かって少しずつ位置をずらしながら、親指の腹でグッグッと圧をかけてほぐしていきましょう。(1~2分間)
≪腰のマッサージ≫ ③まずは脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)を探す。 うつ伏せのまま頭だけを上に上げたときに、グッと盛り上がって硬くなる背中の筋肉・脊柱起立筋(背筋と呼ばれる部分)を探します。 ④脊柱起立筋を頼りに、腰方形筋(ようほうけいきん)を探す。 脊柱起立筋の少し外側、肋骨と脊柱起立筋がぶつかった窪みの部分にある、腰方形筋を探します。 ※腰方系筋がわかりにくいときは、マッサージされる方に痛みがなければ、ゴルフスイングの動きをしてもらいましょう。ゴルフのスイングで腰をひねるときなど、骨盤と肋骨が近づく動きで使われる筋肉が、腰方形筋です。脊柱起立筋よりも、体のやや奥にあります。 ⑤腰方形筋をほぐす。 腰方形筋を、外側から内側に向かって親指をグッと押し込むようにして、少しずつ位置をずらしながら、腰から骨盤のキワまでほぐしましょう。(1~2分間)
≪お尻のマッサージ≫ ⑥横向きになってもらい、マッサージの準備を整える。 まずは準備から。横向きで両足を「く」の字に曲げてもらい、足と足の間に枕を入れて、お尻の筋肉が張らないようにしましょう。
⑦中臀筋と小臀筋を探す。 お尻の大部分を占めている大臀筋よりもやや斜め上にある、中臀筋と小臀筋を探してください。 ※股関節の外側にある、ボコッとして一番出っ張っている骨から、少し上にある筋肉が中臀筋と小臀筋です。 ⑧中臀筋と小臀筋をほぐす。 中臀筋と小臀筋を、両手の親指の腹を使って縦にグッグッとほぐしていく。(1~2分間)
【ポイント】 ・声を掛け合いながら、力加減を調節して痛すぎないよう注意する ・背中や腰のマッサージでうつ伏せがツライときは胸の下に枕を入れる ・筋肉の中心ではなく、筋肉が骨に付着する、骨のキワの部分をほぐす ・親指が疲れたときは肘でマッサージをするのもOK ・お尻のマッサージで筋肉をさらにほぐしたいときは、「く」の字の上になっているほうの足を持ち上げながらマッサージをする |
3.腰のマッサージをする際の2つのポイント
腰をマッサージするときのポイントを2点お伝えします。
3-1.お風呂上がりにおこなう
もちろん腰に痛みやだるさを感じるときでもいいのですが、湯船に浸かって体を温めたあと、お風呂から出たタイミングでマッサージをおこなうと、より効果が高まります。
理由は、湯船に浸かると全身の筋肉の緊張が和らぎ、指が筋肉に入りやすくなって、いつもより簡単にコリをほぐせるからです。出浴後徐々に体温が低下し、緩まった筋肉もほぐしにくくなるため、お風呂から出てできるだけ早くマッサージをするといいでしょう。
なお、マッサージ前の入浴温度の目安は5-4.を参考にしてください。
ただし、動くと腰に痛みが走るときやあまりにも痛くて動けないとき、痛みが出始めた直後は、激しい炎症を起こしている可能性があります。体を温めると症状が悪化する恐れがあるため、湯船に浸かるのは控えてください。
3-2.肌の乾燥が気になるときはクリームやオイルを使う
素手でも構いませんが、特に肌が荒れてカサカサしている場合は、マッサージをする際にボディ用の保湿クリームやオイルを使うのがオススメです。
腰のマッサージは筋肉の弛緩を目的としているため、基本的に「皮膚をさする」より「皮膚の下にある筋肉を揉む」ことが多くなります。そのため指と肌の間で摩擦は起こりにくいのですが、元々肌が乾燥している方は、刺激によってより肌が乾燥する恐れがあります。
ボディ用のクリームやオイルを塗って肌を保護すると、マッサージをしながら保湿もできるというわけです。
4.気をつけないと逆効果!腰のマッサージの2つの注意点
理由は後で述べますが、痛みを感じている状態で無理にマッサージをすると、逆効果になってしまうことも。ここでは腰のマッサージをする際の注意点をお伝えします。
4-1.激しい痛みやしびれがあるときはマッサージを避ける
鋭く激しい痛みがあって動けない、腰が熱を持ったようにズキズキする、腰だけでなく背中にまで強い痛みを感じる、腰・お尻・足にしびれを感じる場合は、自己判断でのマッサージを避けましょう。
上記の症状は「急性腰痛症」「腰椎椎間板ヘルニア」「腰部脊椎管狭窄症」「腰椎すべり症」「腰部変形性脊椎症」などの疑いがあり、自宅でセルフマッサージをするより先に、病院(主に整形外科)を受診し適切な処置を受ける必要があります。
炎症を起こして激しい痛みが出ていたり、しびれが出ていたりするときに無理にマッサージをおこなうと、逆に筋肉や神経を痛めてしまい症状が悪化する恐れがあります。
セルフマッサージはあくまで腰の軽い鈍痛をケアする目的ですので、強い痛みやしびれがある場合はマッサージを避け、まずは病院へ行き医者に相談するようにしてください。
4-2.マッサージ直後や翌日に痛みが残るほど強く押すのはNG!
マッサージをした直後、もしくは翌日に痛みが残るほど、強い力で局部を押すのはやめましょう。痛みが出ている箇所を強く押しすぎると余計に痛みが増したり、いわゆる「揉み返し」がきたりするリスクがあります。
筋肉はとても細い線維が何本も集まって構成されています。強い刺激を与えてしまうと、その筋線維が損傷して炎症を起こしてしまうのです。
マッサージ後に激痛を感じたり、翌日以降に2日以上痛みが残ったりする場合は筋肉が炎症している可能性があり、アイシングで炎症を鎮める処置が必要になります。
我慢できないほどの強い力で押すのは避け、あくまで自分が心地良いと感じる程度の力加減でマッサージをするようにしてください。
5.腰痛を予防する方法
今は痛くなくても、腰を曲げたりするとまた痛みが襲ってくることもありますよね。本章では日常生活の中で実践可能な、腰痛を起こさないための予防法を4つ紹介します。
5-1.腰周辺をストレッチする
背中、お尻を含めた腰周辺のストレッチは、腰痛予防に効果的です。
そもそも腰の痛みは筋肉や関節の動き、血液循環が悪くなることで起こります。ストレッチで筋肉を緩めて血流量を増やし、関節の動きをスムーズにすれば、腰痛の根本的な原因から改善でき、痛みの予防につながります。
下記動画を参考に、背中から腰、お尻までの筋肉のストレッチを実践してみましょう。
【手順】 ①左の梨状筋(りじょうきん)のストレッチ 体育座りになって後ろに両手をつき、左足を右足の上に乗せる。胸を張った姿勢で30秒キープ。
②骨盤矯正+左の大臀筋(だいでんきん)のストレッチ ①の姿勢からそのまま右に腰をひねり、左足の裏を床につける。両手はそのままで30秒キープ。
③右の梨状筋のストレッチ 体育座りになって後ろに両手をつき、右足を左足の上に乗せる。胸を張った姿勢で30秒キープ。
④骨盤矯正+右の大臀筋のストレッチ ③の姿勢からそのまま腰を左にひねり、右足の裏を床につける。両手はそのままで30秒キープ。
⑤右の広背筋(こうはいきん)のストレッチ 両手をついて四つんばいになる。左ひじを床につけ、右手を伸ばして左手の延長線上に置く。お尻の位置は動かさず、腰を反らさないようにして、右脇だけを伸ばすイメージで30秒キープ。
⑥左の広背筋のストレッチ 四つんばいに戻る。次は右ひじを床につけ、左手を伸ばして右手の延長線上に置く。お尻の位置は動かさず、腰を反らさないようにして、左脇だけを伸ばすイメージで30秒キープ。 ⑦骨盤矯正+広背筋のストレッチ 四つんばいに戻る。右手を左手と左ひざの間に入れながら、左のひじを曲げつつ、左腕をグッと伸ばして床につける。このとき左手は手のひらが上になるようにする。
⑧骨盤矯正+広背筋のストレッチ 四つんばいに戻る。左手を右手と右ひざの間に入れながら、左のひじを曲げつつ、右腕をグッと伸ばして床につける。このとき右手は手のひらが上になるようにする。
【ポイント】 ・梨状筋をもっと伸ばしたいときは、①③の工程で足をさらに胸に近づける ・広背筋をもっと伸ばしたいときは、⑤⑥の工程で両手をクロスするように手を伸ばす。もしくは⑦⑧の工程で頭を腕の下に入れる。 |
5-2.運動で筋肉を鍛える
ウォーキングやジョギング、水泳、水中ウォーキングなどの有酸素運動で腰周りの筋肉を鍛えましょう。
老化や運動不足によって骨や関節が弱くなり、筋力が低下すると、腰部の筋肉の負担が増えて腰痛が起こりやすくなります。また運動不足による肥満で体重が増えると、さらに腰が圧迫されて大きな負荷が掛かってしまいます。
特にデスクワークや車の運転で座りっぱなしの作業時間が多い方は、年齢を重ねていなくても筋力が低下しやすいので要注意です。日頃から運動をして筋力をつけましょう。
5-3.姿勢を正して無理な体勢を取らない
猫背や反り腰、足組み、肘を付くなどの歪んだ姿勢を直し、中腰や前かがみの無理な体勢での作業はできるだけ避けるようにしてください。姿勢の歪みや無理な体勢が原因で腰に負担が掛かり、痛みを引き起こすからです。
例えば猫背でデスクワークを続けていると、背骨が歪んだり骨盤がズレたりして、上半身の体重で腰が圧迫され、筋肉が収縮して強張ってしまいます。
また介護・看護職や工場勤務の方は中腰になったり前かがみになったりすることが多く、何度も腰の筋肉に負担を掛けることでコリが蓄積し、筋肉疲労が起きてしまいます。
座るときは両足を床に付けて背筋を伸ばし、中腰や前かがみにならなければいけないときは膝を折るなどの工夫をして、腰に負担を掛けないようにしましょう。
5-4.ぬるめのお湯で入浴する習慣をつける
基礎体温(平熱)から2~3℃高い、ぬるめのお湯で入浴する習慣をつけることも、腰痛の予防につながります。
ぬるめのお湯に浸かって体を温めると、腰痛の原因となる血行不良の緩和はもちろん、筋肉の緊張が緩んで体全体がリラックス状態になります。
ただ基礎体温から5~6℃以上高い熱めのお湯に長時間浸かると、逆に筋肉が緊張して体が興奮状態になってしまうので、注意してください。平熱が36℃の方は38~39℃を目安にして、腰を含め全身の疲労を癒しましょう。
6.まとめ
腰の鈍い痛みや張り、コリにお悩みの方は、ぜひ1章で紹介したセルフマッサージを実践してみてください。「自分じゃ上手くマッサージできない!」という方は、2章の方法で家族や恋人にマッサージをお願いするのもいいでしょう。
また、お風呂上がりにクリームやオイルを使用してマッサージをすると、腰痛の緩和のほか肌の保湿効果も期待できるのでオススメです。ただ激しい痛みやしびれを感じるときはマッサージを避け、まずは病院で診察を受けましょう。
マッサージ以外に、ストレッチや有酸素運動、姿勢の改善や入浴習慣でツライ腰痛は緩和できます。
「仕事で腰を曲げる度に痛い」そんなストレスから解放され、明日から心穏やかな生活を送ってください。
コメント