「マッサージで肩こりはよくなるのかな」
「マッサージで肩こりを解消したいな」
こんな風に思っていませんか?
厚生労働省の「平成28年 国民生活基本調査の概要」によると、男性は約27%、女性は約34%の人が肩こりの症状を感じています。この肩こりのパーセンテージは、さまざまな自覚症状の中で女性は1位、男性は2位の数値です。まさに肩こりは”国民的な悩み”といえそうですね。
肩こりが解消すると、
・朝スッキリ目覚めることができる
・仕事に集中できるようになる
・ 疲れにくくなる
・ ぐっすり眠れるようになる
など、日常生活がだいぶ快適に過ごせるようになるかと思います。
そんな肩こりには、一般的にマッサージ(もみほぐし)が有効とされています。マッサージを受けると、肩周りの筋肉の緊張がゆるみ、血液循環がよくなるためです。
今回は、肩こりの症状を知り、マッサージがどれだけ効果的なのか、予防法や対策はあるのかをみていきましょう。
肩こりへの理解をより深めて、この記事が症状緩和に役立てば幸いです。
※文中にある「マッサージ」は全て、「リラクゼーション目的のマッサージ」を意味します。
1. 肩こりの症状
肩こりは、首すじや首のつけ根から、肩または背中にかけて「張っている」「こっている」「痛い」などの症状があり、頭痛や吐き気を伴うこともあります。
もし、以下のような症状がある場合は、マッサージや運動療法などがかえってよくないケースもありますので、まず病院(整形外科など)へ行くことをおすすめします。
・運動したときに肩が痛む
・ 首や肩を動かしていないのに肩が痛む
・ 手のしびれや麻痺(まひ)を伴う肩こり
・ 徐々に肩こりの症状がひどくなっている
次に、肩がこる原因をみていきましょう。
1-1.首や肩の骨・筋肉に原因があるケース
椎骨の間にある椎間板(ついかんばん)という軟骨の中身が、ずれて飛び出した状態が「椎間板ヘルニア」です。
それにより頸椎(けいつい=首の骨)の中の神経が圧迫されて、痛みやこり、しびれなどが現れます。比較的若い人に多い症状です。
また、加齢などにより、肩関節の骨や軟骨・筋肉などのわずかな変化が重なり、慢性的に軽い炎症が起きてしまい、肩が痛くて動かしにくい状態は「肩関節周囲炎」であり、いわゆる「四十肩・五十肩」は、これに相当する場合が多いようです。
そのほか、以下のような症状も、肩こりの原因となります。
・頸椎症(けいついしょう)
・ 後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)
・ 胸郭出口(きょうかくでぐち)症候群
・ 首肩のがん・感染症
・ そのほか、首肩の筋肉を傷めたとき
1-2.首や肩とは別の所に原因があるケース
更年期障害の症状として肩こりが起こることもよくあり、心理的なストレスが肩こりとなって現れることもありえます。そのほか、以下も原因となりえます。
・ 内臓の病気や高血圧
・ 眼精疲労(物を見るために不自然な姿勢をとりがちなため)
・ 顎の関節の不調
・ 耳鼻科関連の病気
1-3.原因がわからないケース
残念ながら、病院などで検査を受けても肩こりの原因が見つからない場合が大半で、医学的に「本態性肩こり」と呼ばれます。
2.マッサージ(もみほぐし)は肩こりに効果的
肩こりに関係する筋肉はいろいろありますが、首の後ろから肩・背中にかけて張っている「僧帽筋(そうぼうきん)」という背中の一番表面にある筋肉が中心となっています。
肩こりが起こるメカニズムは、以下の要素がループ状になって起こっているためです。
筋緊張(姿勢などを保つために筋が張っている状態)
↓
筋疎血(筋に流入する動脈性の血液が減少した状態)
↓
痛み物質の蓄積
↓
筋肉痛
肩周りをもみほぐしたり、温めたりすると、肩周りの筋肉の緊張がゆるみ、血液循環がよくなるので、マッサージ(もみほぐし)は肩こり緩和に有効とされています。
3.肩こりに効くツボ
肩こりの大きな要因は
・姿勢の悪さ(それによる体のゆがみ)
・ 運動不足(肩周り筋肉の柔軟性の低下)
・ 冷え性(肩周りの血行不良)
・ ストレス
・ 老化
などが挙げられます。姿勢の悪さ・運動不足・冷え性は意識して対策がとれそうですが、ストレス・老化については避けようのないものですね。
肩こりを緩和させるためにセルフマッサージができればよいのですが、足などと違って、自分でもみにくい部位です。肩をもみほぐすことでリラックスしたいのであれば、やはりプロの施術がおすすめです。
ここでは、自分でも押せる、肩こりを緩和させるためのツボを紹介します。
肩こりに効果的な「肩井(けんせい)」というツボ
全てのツボに共通していますが、軽く押したときに“痛気持ちいい感覚”があるところが自分の正しいツボの位置です。押しすぎないことが大切で、1日数回、1回に3~5回程度刺激するとよいそうです。 |
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関連記事4.肩こりの予防と対処法
この章では、肩こりを予防するのに具体的に何をすればよいのか、探ってみましょう。
4-1.連続作業が続くときの肩こり予防法
最近、多くの人がVDT作業(ディスプレイを持つ画面表示装置、つまりパソコンなどを使用して行う作業)や、前傾姿勢になりがちなデスクワークによる肩こりを訴えていることから、厚生労働省は「連続作業が1時間を超えないようにして、途中で1~2回程度の小休止を入れること」を推奨しています。
小休止するときは、肩を回したり、上下させたり、ストレッチを行い、肩周りの筋肉をリラックスさせましょう。
なかでも、両手をそれぞれ肩にあて、肩から手がはずれないようにして肘を中心に後ろに回す「肩回しストレッチ」がおすすめです。
また、“正しい姿勢”を保つことも大切です。座るときは深く椅子に腰掛け、背骨の上に頭をバランスよく載せる気持ちで顎を引き、背中を丸めないよう意識するといいいですね。
4-2.肩周りを温めるという対処法
肩周りの血液循環をよくするには、温めるのがおすすめです。筋肉は寒いと収縮し、暖かいとゆるむという性質を持っています。こわばった肩を温めれば、血行がよくなり、肩こりが緩和されます。
急に肩こりを感じたときなどは、応急処置として「使い捨てカイロ」や「蒸しタオル」を使用するのがいいでしょう。
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関連記事5.まとめ
今回は、肩こりにマッサージ(もみほぐし)が有効であるものの、その予防法や対処法も大切であることを確認しました。
まず、肩こりの症状には
・首や肩の骨・筋肉に原因があるケース
・ 首や肩とは別の所に原因があるケース
・ 原因がわからないケース
があります。しびれなどを伴う肩こりは、マッサージの前に整形外科などの病院へ行きましょう。
そして、肩周りの筋肉を緩め、血液循環を促すという点で、マッサージ(もみほぐし)は肩こりに効果があります。
ただし、位置的に肩のセルフマッサージは難しいので、もみほぐしでリラックスしたいのであれば、プロの施術を受けるのがおすすめです。
また、自分で押せる、肩こりに効くツボ「肩井(けんせい)」についてみてきました。
そして、長時間姿勢が変わらない作業は、肩こりの原因になりやすいので、1時間に1度は「肩回しストレッチ」などして予防しましょう。肩周りを温めるのも、肩こりの対処法になります。
ちなみに、「肩こり」という診断名は西洋医学には存在しません。日本をはじめ、東洋に特有の症状なので、西洋医学的な特効薬はありません。
しかし、肩こりに苛まれると、間違いなく人生のクオリティは下がります。
自分に合った対処法を見つけることによって、快適な生活を取り戻して下さい。
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関連記事◆監修◆
医師・医学博士
原田文植(はらだ ふみうえ)先生
1971年、大阪生まれ。医師、医学博士、内科認定医、認定産業医、スポーツ健康医、在宅医療認定医。大阪医科大学卒業後、大阪府済生会中津病院血液リウマチ内科、国立感染症研究所を経て2008年より蔵前協立診療所所長として、地域医療に従事。年間のべ約2万人を診療している。2018年、医療と教育に特化したONE LOVEビルを建設。医療従事者向けに「日本メディカルコーチング研究所」、一般の患者向けに「よろず相談所 One Love」を開設。武道家・格闘家との交流、映画出演、音楽ライブ活動など幅広く活躍。著書に『病は口ぐせで治る!』(フォレスト出版)がある。